参考症例 3 (下顎前突) 初診時年齢9才7ヶ月の男子。バイトが浅くoverjetも約-2mmと反対咬合がやや強い。更に上顎左右 犬歯がスペース不足となっており、上顎のスペース不足量は-5.4㎜とやや大きい。セファロから骨格を診 ると、下顎骨が大きくかつ前方位で、上顎の大きさは正常だが歯列の前後径は小さかった(上顎前歯の 舌側転位のおそれ)。上下顎骨の前後的問題を示す∠ANBは+2.5°とあまり小さくないが、顔面を見ると 上唇がめくれ上がる様な形で口唇不閉鎖不全を生じており、骨格的問題が決して小さくない事を暗示して いる。またbiteが浅く、一層この症例を難しい物にしている。この様な症例に対し、chin capによる下顎骨 の成長抑制とSLAによる上顎骨の成長促進を行うこととした。 9yrs 7mnths まずchincap を350g程度の牽引力で使用させたところ、協力性は良好 で、毎就寝時使用してくれた。次に上顎第1大臼歯を固定源とする前方拡 大型のActive SLAを装着し、約1ヶ月に1度の活性化を開始した。間もな くSLAのアーチ部にopen coilを挿入し、coilをわずかに圧縮しながら切歯 と結紮する事により、近心移動し左右犬歯にスペースを集めた。10才5ヶ 月時に下顎第1大臼歯を固定源とするPassive SLAを装着し、Leewayス ペースを維持した。12才2ヶ月頃前歯部反対被蓋の改善が近づくもなかな か改善しないため、下顎前歯とアーチ部にスペースをあけた下顎Passive SLAを装着し、下顎切歯部とアーチを結紮する事により下顎前歯を舌側 移動し、これにより前歯反対被蓋を改善した。これらの治療の結果、開咬 を増悪することもなく前歯部反対咬合は改善され、また上顎左右犬歯部 のスペースも獲得され、13才8ヶ月には写真の示すような良好な咬合が獲 得された。骨格も∠ANBが+2.5°から+3.5°へ改善し口唇閉鎖機能も改 善された。勿論歯や歯周組織を害することもなく、健康な歯列が得られた。 、 13yrs 8mnths 参考症例 4(Ⅰ級叢生) 右上犬歯の叢生を主訴に来院した10y3mの男子。上顎正中が大きく右へ偏位し、そのため右上犬歯がス ペース不足となっており、低位唇側転位となっている。また他の歯にも上顎左右側切歯の舌側転位などの叢 生が見られる。ANBは+4.1°と大きな骨格的問題はなく、スペース的にも上下ともLeeway spaceを利用す れば、ほとんど不足はないという予測であった。そこで... ①上下第一大臼歯の近心移動防止と及びLeeway spaceの維持 ②上顎小臼歯の遠心移動及びLeeway spaceの前方移動 ③切歯の左右的移動及び叢生の改善など をSLAで行う事とした。 10yrs 3mnths まず上顎にはActive SLAを装着し、左右側切歯の唇側拡大を行い、また下顎にはPassive SLAを装着し て、Leeway spaceを維持した。上顎では第2乳歯脱落後犬歯から第2小臼歯にかけ遠心に萌出し、また 側切歯拡大の影響もあり、左上側切歯の遠心にスペースが生じたため、SLAの主線にopen coilを挿入し 結紮線を用いてそのopen coilをわずかに圧縮しながら、左上側切歯と結紮し左方向への移動を行った。 下顎では同様な方法で右側切歯の遠心移動を行っている。上顎では前歯を順に同様な方法で左へ移動 し、右上犬歯にスペースが出来たら、elastic threadによる回転力を加え捻出を改善した。尚下顎にchin capを装着している。これらの治療の結果、3年4ヶ月で下図に示すような治療結果を得た。すなわち、上 下正中線の偏位はほとんど改善し、顔面正中と上顎歯列正中線はほとんど一致させることができた。叢 生もほとんど改善され、良好な咬合が得られ、歯や歯周組織の健康も維持された。 13yrs 7mnths coil spring
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