ヴェオリア・ウォーター・ジャパン株式会社 マルティン・ヴェレン氏講演

ヴェオリア・ウォーター・ジャパン株式会社
マルティン・ヴェレン氏講演
みなさま、こんにちは。ヴェオリアのマルティン・ヴェレンです。よろしくお
願いします。
本日はお招きいただき、ありがとうございます。非常に光栄です。今日はヴェ
オリアで、どのように持続可能な CSR に取り組んでいるかをお話しします。ま
ず最初にヴェオリアという会社についてご紹介したいと思います。
ヴェオリアは、環境サービスのグローバル・リーダーでございまして、地方自
治体、公共団体、民間企業にサービスを提供しています。
フランスの会社ではありますが、国際的に展開をしています。また、160 年以上
の歴史を有している会社でもあります。1853 年に設立されました。
現在、環境関連の3つの分野でサービスを提供しています。水、エネルギー、
廃棄物です。
現在、世界中で約 20 万人の従業員が働いています。
上下水道事業では、9,400 万人に対して飲用水を提供し、6,200 万人に下水処理
サービスを提供しています。
エネルギー事業に関しては、私たちは原子力発電や火力発電所などの発電所を
運営しているわけではありません。私たちの事業では、ビル内の冷暖房を提供
するもので、オフィスビルや居住用のビルの冷暖房、そしてその冷暖房に使う
エネルギーを供給するための小規模の発電所を運用しています。
廃棄物処理事業の分野ですが、廃棄物の収集を地方自治体や事業者向けに行っ
ています。また。事業系廃棄物にも関わっています。
ヴェオリアは世界中で活動しています。このように、大きなプレゼンスを持っ
ているということが CSR に対する方針にも大きな影響を与えています。
もちろん、日本や EU のような先進国における社会的な活動とインドのような国
における問題は全くの別物です。その国の実情に合わせて、適応させていく必
要があります。
日本法人であるヴェオリア・ウォーター・ジャパンは、2002 年に設立されまし
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∼COP21 パリに向けたフランスの動向とフランス企業の CSR
た。現在、本社や子会社含めグループ従業員はおよそ 3500 人が勤務しています。
ヨーロッパとフランスの規定については手短かにすませようと思います。すで
に、ヨーロッパ指令、フランス指令についてはお話があったからです。具体的
な私たちの CSR 活動について、時間を割けるようにしたいと思います。
若干、歴史を振り返ってみます。ヴェオリアが持続可能な開発や CSR のポリシ
ーに関わり始めたのは、2000 年代のことでした。まず、2001 年に、フランス
では新経済規制法というものが導入されました。その後、複数の規制が始まっ
ています。フランスでは、グルネル 2 法というものがあるのですが、これはグ
ルネル 1 法とは異なるもので、両方とも環境に関する法規制になります。そし
て、これはフランスで非常に大きな円卓会議が行われたことに端を発している
ものです。この円卓会議では、多くの社会的パートナーが顔を合わせて議論し
ました。
フランスでは企業に対して非財務的な項目についての情報の開示が義務づけら
れています。これには、いくつか項目があるのですが、3つのカテゴリーに分
けられています。まず、1つめは環境に関する情報で、これはさらに5つの分
野に細分化されています。そして、2つめが社会的な情報・対外的な情報とい
うことで会社と外部関係者との情報がこれにあたります。3つ目が、社内的な
情報ということで、会社の内部での事柄に関するものです。例えば、組合との
話し合いを進めていく、あるいは雇用機会の均等を進めていく、あるいは差別
への対策を取っていくというものです。これらのトピックのリストがフランス
の企業が CSR や持続可能な開発のベースとなります。
フランスの企業が CSR に関与する理由としては、こういった情報を受け取りた
いと思っている外部の人がいるからです。非財務的な情報を得て、会社として
持続可能なのかどうか、また投資すべき対象なのかどうかを判断していくとい
うニーズがあります。なので、格付け会社によって評価されたり、あるいは社
会的責任投資をする運用会社もこのような情報を必要としております。これに
基づいて、格付けをしたりスコアを書いたりするからです。
また、私たちのお客様もこのような情報を求めていますし、こういったアクシ
ョンやコミットメントを求めています。民間企業であれ、公的機関であれ、入
札に応じる場合にはこういった情報が求められます。ということで、これが好
循環に繋がっていきます。お客様からも、会社として環境に対して何をしてい
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るのか、スタッフのマネジメントをどのようにしているのかということをよく
聞かれますし、また、実際に持続可能な形できちんと契約を管理することを証
明できるか、ということが問われます。
ヴェオリアでは 2006 年に持続可能な発展憲章を定めました。これは 12 の章か
ら構成されています。これをまず初めに発行いたしました。最初の3つには環
境に関する項目があり、その後は人事・人材に関する項目で、最後の方にコー
ポレートガバナンス(企業統治)、地域経済への貢献に言及しています。
2つめのツールが企業の社会的責任と企業倫理です。私たちの会社には、倫理
に関するガイドラインがあります。それから、社内的な手順があり、利益相反
をどのように回避していくのか、ということが定められています。また、不適
切な行動をした社員がそれを報告できるような手段もそろえています。国によ
っては、利益相反といいますか、贈収賄の問題が非常に大きな問題となってお
りますのでヴェオリアとしては、きちんと対処しようとしています。
CSR の別の側面としては、外部のステークホルダーとの対話があります。経済
的なパートナーだけでなく公的な機関もステークホルダーとしております。例
えば、国連やユニセフといった国際機関ですとか、それから NGO もステークホ
ルダーとして位置づけています。
一例として、外部パートナーと組んだプロジェクトであるグラミン・ヴェオリ
ア・ウォーターについてご紹介します。これは、モハメド・ユヌス教授との協
力によって立ち上がりました。
このプロジェクトの目的は、バングラデシュに住む 10 万人の人々に飲用水を提
供するというものです。これは、非常に興味深い話で、1970∼1980 年代におい
て、バングラデシュにおける表層水というのは質が悪いとされてきました。そ
こで、NGO は井戸を掘って水底から水を汲み上げることによって、より質の高
い水を提供しようとしたのです。しかしながら、数年間それを試した後に、井
戸を掘るのはよくないということが分かりました。というのは、バングラデシ
ュの地下水はヒ素によって汚染されていることが分かったからです。ヒ素とい
うのは有毒です。ということで、ヴェオリアはプロジェクトを始めました。こ
のプロジェクトにおいては、川などから得る表層水を処理し、その水を提供し
ました。公的な水道網を通じて水道水として提供する方法と、瓶詰めにして提
供するという2つの提供方法をとりました。
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このプロジェクトのビジネスモデルはソーシャルビジネスです。つまり、収益
は均衡しているべきだという考えに基づいています。損失も出さないけれども、
配当も出さないというものです。そして、このプロジェクトの目的は、支払え
る程度のお金で飲用水を提供するというものです。もっとこのプロジェクトに
ついて知りたい方はウェブサイトにアクセスしてください。日本語でお読みい
ただけます。
先進国では蛇口を捻れば水が出てくるというのは当たり前です。しかし、地球
上の多くの人にとって、それは当たり前でなく、水道水を得られない人もたく
さんいますし、衛生的なシステムがないという人たちもたくさんいます。また、
先進国にとって問題なのが、貧困者に対してです。水道料金の請求書が来ても
それを払えないことが問題になっています。
ヴェオリアでは、複数の解決策を持っているのですが、その一つとして、社会
的な利用料金の決め方というのがあります。つまり、貧困層に対してはより低
い料金で使ってもらうようにするということです。あるいは、水へのアクセス
に対しては補助金を出すと言うこと、あるいは補助金を得ると言うことも考え
ています。これは水道水のネットワークにつなげる部分に関してです。
次にご紹介したいのがヴェオリア財団です。この財団には、2つの目的があり
ます。1つは、緊急事態に対応すること、例えば、自然災害や地震、シリアで
起こっているような戦争、戦争による難民が出てくる場面です。2つめが補助
金を出すことで、持続可能なテーマに関連したプロジェクトが対象です。
ソーシャルイニシアチブレポートから2つの事例を紹介します。ヴェオリア財
団の最初の事例は日本におけるものです。東日本大震災後、ヴェオリア・ウォ
ーター・ジャパンの従業員が東北に行き、緊急事態において水の処理をし、生
活用水等として提供しました。それから、もう一つはフランス特有のものです。
フランスでは失業率が高く、2 年、もしくは、5 年くらい働けない人がたくさん
います。そうすると雇用市場にもどるということが難しくなります。私たちは
雇用に関する補助金をだすというプロジェクトをサポートしました。数年間、
失業していた人たちが雇用市場に戻るのをサポートするプロジェクトです。
社内においての社会性に関する指標に関しては、従来からよく使われている指
標を使用しています。例えば、従業員をどのように管理しているのかというこ
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とだとか、安全・衛生、教育の成長度合い、雇用機会の均等ということに取り
組んでいます。
ここでの具体的なアクションの例としては、多様性の促進と女性の活用・登用
を促進すると言うことです。これは、ヴェオリアが世界中で進めているプロジ
ェクトです。特に、日本でのマネジメントレベルで女性を登用していくことが
課題になっていますが、世界に共通する課題でもあります。
これは、ドイツでの話になりますが、日本にとっても興味深い話になると思い
ます。日本でもドイツでも少子化が進んでいます。これは、女性が子どもを持
ちながら働くためのサポートがなかなかないということが原因だと思われます。
ドイツでは職場に幼稚園を設置しました。女性が、または男性が、子どもを迎
え入れるのに適切かつ安全な場所に、子どもを預けることができます。
環境に関する指標についてです。ヴェオリアは事業そのものが環境に関わって
いますので、環境に関する指標というのは非常に重要ですし、技術的なもので
もあります。社内的に使う環境マネジメントシステムとして、ISO14000 に基づ
いたマネジメントシステムを構築しました。このマネジメントシステムの目的
は気候変動に対応するというためのものでありますし、循環型経済を保全する
ためのものでもありますし、生物多様性を保全するためでもあります。たとえ
ば、温室効果ガスの排出量を計測します。エネルギーをどの程度消費・算出し
ているのかも計算します。それから、全エネルギー消費量に占める再生可能エ
ネルギーをモニタリングするということもしています。
私からの発表は以上です。ご清聴ありがとうございました。
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