新入生説明会講話「心の桶」 八女市立福島中学校 校長 松野昭人(平成27年10月20日) 中学生になるということを「心の桶」に喩えて話をします。皆さんがこれから過ごす3年間の中学時代とい うのは、心も身体も最も大きく成長する時期です。実際に1年間で身長が10㌢以上伸びる人もいます。 身長がのびるのと同じように、皆さんは、心という大きな桶の中に一日にスプーン一杯ずつの水をためるよ うに毎日少しずつ少しずつ成長しています。桶にたまった昨日の水の量と今日の水の量、どれだけ増えたか、 見ただけではわからないように、昨日の自分と今日の自分、どれだけ成長したかを調べるのは難しいものです。 しかし、毎日の体験や学習の中で、桶の中に入れたスプーン一杯の水の分だけは確実に成長しています。 (こ れは、牛乳パックの中に水をいっぱいいれたものですが、)いま、皆さんの心の中には、この牛乳パックに入 れた水のように、それぞれ十二年分のスプーン一杯の大切な水がなみなみとたまっています。 しかし、この心の桶に穴が開いてしまうことがあります。 心の桶に穴が開いてしまうのは、心が不健康になったときです。思い出してください。はじめて宿題を忘れ たとき、あるいは、持ってこなければならないものを忘れてしまったとき、どうしようもなく不安な気持ちに なったことと思います。そして、 『もう、忘れないぞ、今度はちゃんとするぞ』という気持ちになったと思い ます。そう感じることのできる心は健康だと思います。しかし、忘れ物などを繰り返しているうちに、 『まあ、 また、とりかえればいいや』といったような気持ちになり、平気でいられるようになったとします。心が不健 康になった証拠です。心の桶に穴が開くのはこういったときです。 (牛乳パックに穴をあけると、水が穴から 流れ出る。 )穴が開いてしまった桶からは、せっかく長い年月をかけてためた心の水がどんどん流れ出てしま います。 そして、穴が開いてしまったところまで必ず水位が下がります。そして、穴の開いてしまった桶には、水を 入れても、もう水がそれ以上増えることはありません。(何とかしなければなりません、どうしたらいいです か?) そうです、まずその穴をふさいでしまわなければなりません。どのようにふさぐかが大事な点です。穴のふ さぎ方は、二通りあると思います。 一つは、穴の開いているところに外側からセロテープを貼るように、桶の外から穴をふさぐ方法です。しか し、外から穴をふさいでいたのでは、穴から出ようとする水の力でセロテープがはがれ、いずれはまたそこか ら水が漏れ出します。注意されたから仕方なしにちゃんとする。という発想がこれに近い考え方だと思います。 もう一つは、桶の中から穴をふさぐ方法です。栓が内側についているいまどきの風呂を思い出してください。 (水がたっぷりたまっている風呂の栓を抜いて)風呂桶にたまった水が流れ出ているときは、栓を穴の近くそっ と持っていくだけで、ひとりでにスポッと栓がはいり、穴がふさがってしまいます。そして、内側からした栓 はなかなか抜けません。 このふさぎ方が大事だと思いますこの風呂の栓のように、もし心の中に穴が開いたことに気付いたときは、 『まわりの声に耳を傾け、自分でよく考え、心の中に風呂の栓をするように、自らの意志で、内側から穴をふ さいでいく』自分で決めたことは強い。これが、成長していくということだと思います。それが中学生になる ということの一つです。これからの中学校での3年間がで、心の内側から栓を創りだしていく、そんな有意義 な3年間になることを期待したいと思います。
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