應日四乙12/09

應日四乙 12/09
六角に言いふくめられた我々は、苦虫を噛みつぶしたような表情をして、ふた
たび煉瓦の前に坐りこんだ。校舎から出ていく学生たちは立ちどまり、当惑し
たように我々を眺め、中には義俠心にかられてか、その三、四人が私たちの前
に行列をつくった。
被六角這麼說的我們,露出苦澀的表情,再次坐回磚頭前。從學校出來的學生們
站住,疑惑的看著我們,之中也有俠義心驅使下,三、四個在我們面前排隊。
「諸君、我々は同じ大学に学ぶ友人たちを助けよう」だれかがそう叫ぶと、五、
六人の学生が列にたちどころに加わった。私と江口とはやりきれぬ気持ちで、
自分たちに同情をよせてくれるこの連中の表情をみつめていた。
「各位,我們來幫忙同大學的朋友。」有人這麼一喊,五、六個學生加入行列。
我和江口抱著擔當不了的心情,注視著同情我們這些人的表情。
そういう思い出を一人、一人が語りあった後、「しかし、奴のことだから、俺
たちよりうまく世渡りをして、今頃は自動車でも乗りまわして金を儲けている
だろうな」
每個人說出回憶之後,
「不過,那傢伙長袖善舞,說不定現在開著車到處賺錢。」
だれかが言うと、一同は少し口惜しそうにうなずいた。大学を出て十年、お互
いが安サラリーマンで、部長や重役の顔色を窺いながら仕事をしている身だか
ら、クラスの中で一人でも抜きんでて出世している者がいれば、どうしたって
面白くはない。コンプレックスを刺激される。
不知道誰這麼一說,大家有些不甘心的點著頭。大學畢業十年,彼此都是低薪上
班族,都是看著部長或高級幹部的臉色工作,班上如果有人出人頭地,就覺得無
趣。感到自卑。
我々の中でまず世渡り上手に出世しているとすれば、あの六角ぐらいしか、い
なかった。
「まあ、六角のように図々しくなれば、誰だって出世できるからなあ」
「そう。俺たちには、あのまねはとても出来んよ。こっちの教養と知性が許さ
んさ」
我們之中,長袖善舞,出人頭地的只有六角了。
「哎呀!如果像六角那樣不要臉的話,誰都能出人頭地。」
「對呀!我們做不出那種事啦,我們的教養和知性不允許。」
思い出話の懐しさは消えて、一同が残った麦酒をのみながら、六角批判に話題
を転じたのも昔うけた恨みだけではなく、今の自分たちの腑甲斐なさをたがい
に誤魔化すためでもあった。
回憶的話題結束,大家喝著剩下的啤酒,開始批評起六角。這不止是以前的怨恨,
更是彼此掩飾自己的不如意。
その時、階段を上る跫音がして女中が顔をだしたので、
「なんだい。もう酒の追加はいらんよ」
「ちがうんです。あの、今電話でね、六角さまと言う方が、すぐ来られるとい
うお言伝てですけど……」
那時,傳來上樓的腳步聲,女服務生出現了。
「什麼事?我們不追加酒。」
「不是的。剛剛有一位六角先生打來說馬上到。」
我々は顔を見あわせ、一瞬、だまりこんだ。噂をすれば影とやら言うが、今の
悪口を何処かで聞いて、六角が駆けつけてきたような気さえした。
大家面面相覷,一瞬間沈默了。說曹操,曹操就到。感覺六角像從哪裡聽說,而
趕來。
「会議が忙しくて遅れたなんて言うぜ」
「自家用車ででも乗りつけてくるんじゃないか」
女中が去ってあと、我々はやがて表われるであろう彼の姿を想像した。
「他說會議忙,遲到了。」
「是搭自己的車來吧!」
女服務生離去後,我們想像六角的樣子。
あいつのことだから胸の所に金時計でもぶら下げて来るだろうと言う者もい
た。みなに見せびらかすかもしれない。
有人說六角一定是在胸前戴著金手錶,或許是來跟大家炫耀。
なんとなく一同不機嫌な表情をしていると、階段のきしむ、襖があいた。古ぼ
けた灰色洋服にネクタイもしめぬ男がたっていた。学生時代の若さは失ってい
たが、たしかに六角だった。
「遅れて……すんまへん」
大家不由得心情不愉。這時傳來樓梯伊呀地的響聲,拉門打開了。穿著舊灰色西
裝沒繫領帶的男子出現了,沒有學生時代的模樣,但那人確實是六角。
「遲到了,抱歉!」