第4学年 国語科の実践

第4学年
国語科の実践
授業者
1
単元名
2
単元の目標
教諭 髙橋 健一
物語をしょうかいしよう 「一つの花」
◎場面の移り変わりに注意しながら、登場人物の気持ちの変化、情景などについて、
叙述をもとに想像して読む。【読む】
◎物語を読んで感じたことや考えたことを発表し合い、友達との感じ方・考え方の違
いに気付く。【読む】
【話す・聞く】
○紹介したい本を選んで読み、それについて書いたものを発表し合って、書き手の考
えの明確さなどについて意見を伝え合う。【書く】
【話す・聞く】
3
単元と児童
(1) 単元について
本単元の教材「一つの花」は、戦争の理不尽さやどんな時代でも変わらない親の子ど
もへの愛情が表れている物語である。過去の戦争や命の尊さ、平和などに目を向けて、
読みを広げることができる教材でもある。
繰り返し出てくるキーワードとして「一つだけ」がある。それに注目することにより、
登場人物の気持ちや情景などを読み取ることができる。児童には、特別な言葉や叙述を
もとに自分なりの理由をもち、登場人物の気持ちや情景を想像させたい。それらを発表
し、お互いの意見を交流することで、感じ方や考え方の違いに気付かせたい。
また、この物語は、戦争や平和に関する本を並行して読み進め、紹介し合って、感想
や意見を交流し合う言語活動に生かすかことができる。
「一つの花」を読み進める際にも、
登場人物の置かれた時代背景を考えることの一助となるだろうし、自分の考えを深める
上でも大切な学習になると考える。
(2) 児童について
男子11名、女子14名、計25名の学級である。
読書や音読に意欲的に取り組む児童が多い。授業の始めに行う漢字音読では、大きく
しっかりとした声で読むことができている。4月に行った「白いぼうし」の学習では、
叙述から登場人物や場面の様子について読み取り、表現豊かに音読発表会に取り組んだ。
しかし、片仮名がすらすらと読めない児童が数名いた。また、初見の文章を正しく読め
ない児童や書くことに抵抗を感じている児童がやや多い。これらの児童が、物語を意欲
的に読んだり、考えや意見を書いたりしたくなるように、ワークシートの工夫や支援を
考える必要がある。
交流活動には積極的な児童が多い。相手の意見を聞いてから、
「同じで」や「似ていて」
という発表をすることはできる。ただ、
「少し違っていて」など、友達の意見と異なる意
見を発表することがなかなかできない。自分の意見が明確にもてずに、友達の意見に流
されてしまうからである。児童が自分なりの意見を明確にもてるようにしたい。
4
授業の視点について
(1) 対象に積極的にかかわり、自分の思いや考えをもつ段階の工夫
<「ひまわりは今
ひまわりは今も」の読み聞かせ>
かせ>
戦争中の家族の実情や生活の様子を児童が想像するのは難しい。“語りつぎお話絵本”を
読み聞かせることにより、戦争中のことを想像するための材料とする。戦争中の家族につ
いての様々なことを理解する機会とし、言葉や時間の隔たりを少しでも解消できるように
したい。
<ワークシート
ワークシートの
クシートの工夫>
工夫>
登場人物の気持ちを想像する活動では、挿絵に吹き出しを付けたワークシートを準備す
る。吹き出しがあることにより、登場人物の心情を想像しやすくなるので、児童の意欲が
高まり、その活動に集中していくと考える。
(2) 進んで友達とかかわり合い、伝え合う段階の工夫
<読みを深
みを深める交流活動
める交流活動の
交流活動の設定>
設定>
「話者の外の目で語る」という特徴のある「一つの花」は、登場人物の気持ちを明確に
語っていない。そこで今回の授業では、登場人物の気持ちを叙述に即して想像し、理由を
明確にもたせたい。それを交流する過程では、自分の意見も友達の意見も大切にして、伝
え合うことができるように、指導計画に交流活動を意図的に組んでいく。交流の形態も、
ペア、グループ、全体など工夫する。
(3) 高め合い、学びを実感する段階の工夫
<筆者の
筆者の思いや願
いや願いを考えて交流する
交流する活動
する活動>
活動>
この物語の題名である「一つの花」について、今まで学んだことを生かし、作者のどの
ような思いや願いが込められているのかを考える。その際、自分がなぜそう考えたか理由
を明確にする。それらを交流する活動を通して、いろいろな友達の考え方や感じ方を知り、
自分の考えを深めることができると考える。
<再考して
再考して書
設定>
して書く場の設定>
交流活動のあと、自分の考えをもう一度、再考して書く場を設定する。
「一つの花」の内
容を読み取ったあと、10年後のゆみ子から天国のお父さんへの手紙を書く。その中に、
交流活動を通して、深まった自分の考えが表れるようにしたい。
5
次
第
指導計画(全10時間) 本時8/10時間目
時
1
1
次
学
習
活
動
○戦争の話を聞き、体験者の思いや当時の
生活の様子を知る。
2
○教師の範読を聞き、初発の感想をもつ。
評
価
規
準
・平和について書かれた本に興味をもち、学習に意欲を
もつ。
【関心・意欲・態度】
・物語に興味をもって範読を聞き、自分なりの感想をも
つ。
【関心・意欲・態度】
3
○「一つだけよ。
」と言って、ゆみ子に食べ
物を与える母親の気持ちを考える。
4
5
2
6
・幼いゆみ子のことを考えながら、戦争に行かなければ
たりしたお父さんの気持ちを考える。
ならないお父さんの切ない気持ちに気付く。
【読む】
○ゆみ子に一輪のコスモスの花を渡した父
・コスモスに託された父親のゆみ子に対する思いを、平
○10年後の場面を読み、戦争中の場面と
比較する。
次
7
○「一つの花」という題名にこめられた作
者の思いや願いを考える。
8
て、お母さんの切ない気持ちに気付く。
【読む】
○小さく万歳をしていたり、歌を歌ってい
親の気持ちを考える。
第
・戦争中の生活を表す叙述や家族の会話を手がかりにし
○小グループや全体の交流の場で、自分の
考えを発表したり、友達の考えを聞いた
和への願いと合わせて考える。
【読む】
・食べ物の違い、ゆみ子の成長、コスモスの花に着目し
て、場面の違いを読み取る。
【読む】
・今まで学習をもとにして、作者が題名にこめた思いや
願いを想像して、自分なりの理由をまとめる。
【読む】
・友達の意見を聞き、新しい見方や異なる考え方に気付
く。
【読む】
りする。
(本時)
本時)
第
9
○「平和」をテーマにした本を紹介し合う。 ・紹介を聞き合い、一人一人の感じ方の違いに気付く。
3
次
【読む】
10
○「一つの花」の学習や、物語を紹介する
という活動を通して、自分の考えを書き、
・学習に対する考えをまとめたものを、友達と読み合い、
感想を交流する。
【書く】
友達と交流する。
6
本時の学習
(1) ねらい
自分なりに考えた“題名に込められた作者の思いや願い”を友達と交流して、新しい
見方や異なる考え方に気付く。
(2) 展開の構想
○進んで友達とかかわり合い、伝え合う段階の工夫
<読みを深
みを深める交流活動
める交流活動の
交流活動の設定>
設定>
本時は、前時に今までの学習したことをもとにして考えた、作者が題名「一つの花」
にこめた思いや願いを、グループで話し合い、キーワードとして表す。それを全体に理
由を付けて発表する。題名にこめられた思いや願いは、筆者しか知りえないが、想像を
膨らませることはできる。多様な考えを期待する。そして、キーワードを話し合う活動
を行うことで、思いや願い、その理由をさらに明確にする。自信をもって、全体に向け
て発表できるようにしたい。
○高め合い、学びを実感する段階の工夫
<再考して
再考して書
して書く場の設定>
設定>
最後に、ゆみ子から天国のお父さんに手紙を書く活動を設定する。グループでの話し
合いや、全体での交流を通して、自分の考えが深まり、内容に表れるようにしたい。
(3) 本時の展開
時間
○学習活動・予想される子どもの反応
◎支援 ・留意点
◇評価
3
○漢字音読をする
・テンポよく行う。
◇元気よくスラス
7
○今日のめあてを確認する。
◎似ている意見ごと
作者が題名「一つの花」に込めた思いや
願いについて考えよう。
25
にグループを作っ
ておく。
む。
【読む】【言語】
○グループごとに自分の考えを発表して、 ・グループで話し合う
キーワードを話し合う。
ことを明確に示す。
・私は、キーワードは愛だと思います。理
◎キーワードと理由
由は、最後にきれいなコスモスの花をゆ
が明確に分かるよ
み子にあげたからです。
うなカードを用意
・愛 ・平和 ・喜び ・命 など
○グループごとに決めたキーワードを全体
に発表する。
・ぼくたちのグループのキーワードは、命
する。
◎異なる考え方が分
かるように板書を
工夫する。
◇友達の発表を聞
です。理由は、一つだけの命を大切にし ・児童の考えを予め把
き、新しい見方
て欲しいからです。
握しておき、意図的
や異なる考え方
に指名する。
に気付く。
・私たちのグループは、少し違っていて、
平和への願いを込めたと思います。
10
ラと漢字を読
【読む】
○友達の発表を聞いてみて、感じたこと、 ・ゆみ子がお父さんの
思ったことをもとにして、ゆみ子になっ
存在を知り、手紙を
たつもりで、
「一つの花」をくれたお父さ
書くこととする。
んへの手紙を書く。
◎学習の跡を壁面に
・お父さん、たくさんの愛をありがとう。
掲示し、振り返りに
お父さんの分まで、お母さんといっしょ
使ったり、書くとき
にがんばるよ。
の参考にしたりで
・お父さんがくれたコスモスの花には、平
きるようにする。
◇交流を通して考
えたことを加え
和への願いが込められていたんだね。今
て、手紙を書く
は、家の周りはコスモスでいっぱいです。
ことができる。
いつまでも見守ってね。
【読む】
7
研修の振り返り
(1) 対象に積極的にかかわり、自分の思いや考えをもつ段階の工夫
<「ひまわりは
<「ひまわりは今
ひまわりは今も」の読み聞かせ>
かせ>
「一つの花」は、戦争中の家族の背景や生活の様子が直接に語られることが少ない。
子どもたちには、叙述をもとに想像して感じ取ることが求められる。
「ひまわりは今も」
を読み聞かせたことにより、戦争の貧しさや悲惨さ、直接に語られていない父親の死を
文脈から想像して正確に読み取ることができた。また、朝読書で戦争や平和に関する本
を並行読書したことが、物語の理解を深め、スムーズに自分の思いや考えをもつことに
つながった。
<ワークシートの
ワークシートの工夫>
工夫>
挿絵に吹き出しを付けたワークシートを使う
ことで書くことへの抵抗が軽減され、書くこと
に苦手意識がある子どもたちも意欲的に取り組
んでいた。
ほんの少しの手間ではあるが、高学年の指導
ばかりが多い私には、とても新鮮な工夫であり、
効果を実感する機会になったことは大きい。
(2) 進んで友達とかかわり合い、伝え合う段階の工夫
<読みを深
みを深める交流活動
める交流活動の
交流活動の設定>
設定>
場面ごとに、叙述から登場人物の気持ちを想像して、理由を明確にもつ活動を行い、
それを交流する機会を設定したいと考えた。特に交流の形態を、ペア、グループ、全体
など工夫しようと考えていた。しかし、実際の授業では、自分の考えをもつことが主に
なり、それを交流するときは、全体への発表という形をとることが多かった。
意欲的に挙手をして発表する子どもの考えを聞き、読みを深める機会になったと思う
が、自分の意見や友達の意見を大切にして伝え合うというには弱かったと考える。結果、
本時の交流場面が一方通行になってしまった。ペア、グループ、全体という形態の工夫
を、どのような場面で活用するのがいいのかを検討したいと思う。
(3) 高め合い、学びを実感する段階の工夫
<筆者の
筆者の思いや願
いや願いを考
いを考えて交流
えて交流する
交流する活動
する活動>
活動>
第2場面の後半に、父親がゆみ子に一輪のコスモスを渡すシーンがある。そこでは、
父親が一輪のコスモスに込めた思いや願いを想像した。
「元気」
「明るい」
「すくすく」
「美
しく」「長生き」「大きく」「笑顔」「健康」「じょうぶ」「やさしい」「楽しく」「きれい」
などの考えが出され、ゆみ子にこんな風に育ってほしいという思いや願いを想像して書
くことができた。父親からゆみ子へのメッセージとしてである。
前時では、今まで学習してきたことをもとに、作者が題名「一つの花」にこめた思い
や願いを想像した。
「幸せ」「楽しみ」
「戦争の怖さや厳しさ」
「やさしさ」「命の大切さ」
「すてき」「ありがたさ」「家族の関係」「きずな」「平和」「戦争のない国」「やさしい気
持ち」など、人間的に大きなテーマへと考えが広がっていった。この国や世界に対して
のメッセージとしてである。
本時では、それをもとに同質グループ、異質
グループで話し合って、キーワードを導き出す
活動を行った。
「やさしい気持ち」「やさしさ」
「平和」「未来」
「命」「きずな」
「愛情」のキー
ワードにまとまった。同質グループよりも異質
グループの方が、交流が活発になり、考えが深
まったと感じた。キーワードにする必要がある
かどうかは考える余地があるが、交流を活発に
する方法として異質グループでの話合いが効果的であることが示唆された。
発表場面では、子どもたちの理由を丁寧に扱い、他のグループの子どもたちから意見
をもらう必要があったのではないかと感じた。その交流があると、自分の考えと友達の
考えを大切にした交流になったと思う。今後の課題である。
<再考して
再考して書
して書く場の設定>
設定>
本時の最後に行ったゆみ子から天国の父親に手紙を書く活動
は、有効に生かせずに終わったように感じる。この手紙を書く
前に、今までの学習を振り返る機会を設定する必要があったの
かもしれない。
子どもたちは、それぞれにゆみ子の気持ちを想像して、意欲
的に代弁者となっていた。しかし、内容的には深まりがあと一
つといったところだった。また、教師側がどのような手紙を書
かせたいのかを明確にもっていなかったことも大きい。
(4)まとめ
今回の授業は、6月の計画支援訪問の公開授業として行わせてもらった。研推の先生
方からたくさんのアドバイスや協力をいただき、何とかやり遂げることができた。感謝
の気持ちでいっぱいである。
この授業準備を通して、何気ない部分に多くのコツが見え隠れしていることに気付く
ことができた。子どもたちの意欲を引き出すためのコツは、意外にもほんの少しの手間
だった。学ぶ機会を求めてこなかった自分を反省するばかりである。