第5回 - 名古屋大学

4S 数理物理学 (概論)I
標準 H005-1
担当教員 : 浜中 真志 研究室 : A327
E-mail:[email protected]
レポート問題
作成日 : May 25, 2015
実施日 : May 29, 2015
Updated : June 23, 2015 Version : 1.0
問題 1. (レポート問題 6:ケプラー問題:20 点)
惑星の運動に関するケプラー (Kepler) の法則を力学の法則から導け.
[ケプラーの法則]
• 第 1 法則:惑星は太陽を 1 つの焦点とする楕円軌道を運動する.
• 第 2 法則:惑星と太陽を結ぶ線が一定時間に描く面積は一定である.
• 第 3 法則:惑星の公転周期の 2 乗は軌道長半径の 3 乗に比例する. その比例定
数は惑星によらない.
以下ラグランジアンを用いたアプローチで誘導するが,別の方法で独自に解いてもかま
わない. (ただし記号などはなるべく合わせていただけると助かります.)
3 次元空間 R3 において,中心力により相互作用する 2 質点の運動 (2 体問題) を考える.
質点 1, 質点 2 の質量をそれぞれ m1 , m2 , 位置をそれぞれ ⃗r1 , ⃗r2 とおくと, このシステムの
ラグランジアン L は, 以下のように与えられる.
L=
m1 ˙ 2 m2 ˙ 2
⃗r +
⃗r − U (|⃗r1 − ⃗r2 |)
2 1
2 2
質点 1 を太陽, 質点 2 を惑星と同一視し, m1 ≫ m2 の極限でケプラー問題に帰着する.
⃗ と相対座標 ⃗r および換算質量 m を以下で定義する:
(1) 重心座標 R
⃗ := m1⃗r1 + m2⃗r2 ,
R
m1 + m2
⃗r := ⃗r2 − ⃗r1 ,
m :=
m1 m2
.
m1 + m2
⃗ が循環座標であることを示せ. (この結果
L をこれらを用いて書き換え, 重心座標 R
⃗ は保存する.)
より, 重心座標に共役な運動量 P
⃗˙ = 0 となる座標系 (重
(2) 座標並進に関する対称性を用いて,一般性を失うことなく, R
心系) に移ることができる. このとき, L = (m/2)⃗r˙ 2 − U (|⃗r|) となる. この L は座標
⃗ = m⃗r × ⃗r˙
回転に関する対称性を持つ. したがってネーターの定理より, 角運動量 M
は保存する. 角運動量の第 3 成分 M3 を極座標を用いて表せ. 極座標表示は以下を取
る:⃗r = (x1 , x2 , x3 ) = (r sin θ cos φ, r sin θ sin φ, r cos θ).
⃗ (一定) と平行
(3) 座標回転に関する対称性を用いて,一般性を失うことなく, x3 軸を M
1 2
⃗|
にとることができる. このとき ⃗r はつねに x -x 平面上を動くことに注意. M := |M
とおく. (M = M3 である. ) 面積速度 h := (1/2)r2 φ̇2 を m, M を用いて表し, これ
が時間によらず一定であることを示せ. (ケプラーの第 2 法則=面積速度一定則)
(4) 前問の結果を用いると, 極座標表示での L は以下のように書ける:
L=
標準 H0-4S15-05 難易度 : C
m 2
ṙ − U ∗ (r),
2
U ∗ (r) := U (r) +
M2
.
2mr2
名古屋大学・理学部・数理学科
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標準 H005-2
担当教員 : 浜中 真志 研究室 : A327
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(U ∗ を実効ポテンシャルという. ) この L は t を陽に含まないので, エネルギー E が
保存する. E を r, ṙ の関数として求めると, 以下の関係式が得られることを示せ.
√ (
)
dr
2
M2
=±
E − U (r) −
· · · (∗)
dt
m
2mr2
(5) (3) の結果より, 前問の関係式は,
√ (
√ (
)
( )
)
M2
d 1
m 2
M2
dr
mr2 2
E − U (r) −
⇔
=∓
E − U (r) −
=±
dφ
M
m
2mr2
dφ r
M m
2mr2
と書ける. ここでニュートン・ポテンシャルの具体形 U = −κ/r を代入し,上記平
方根の中身を変形すると
{ (
)} (
(
) (
)2
κ
m2 2
M2
mκ )2
2M 2 E
1 mκ
E+ −
=
1+
−
−
M2 m
r 2mr2
M2
mκ2
r M2
となる. ここで
1 mκ
mκ
− 2 = 2
r M
M
√
1+
2M 2 E
cos η
mκ2
のように r を η に変数変換することで微分方程式を解き,軌道形が以下のように求
まることを示せ (ω は積分定数. 以後 φ の定義をシフトして ω = 0 としてもよい.).
√
1
mκ mκ
2M 2 E
= 2 + 2 1+
cos(φ − ω)
r
M
M
mκ2
(6) E < 0 では軌道形は楕円になることを示し,楕円の離心率 e を E, κ, m, M で表せ. ま
た楕円の長半径 a := (1/2)(rmin + rmax ) を e, κ, m, M で表せ. (ケプラーの第 1 法則)
(7) 式 (∗) を積分することで, 公転周期 T の 2 乗が a の 3 乗に比例することを示せ. (こ
れと κ = Gm1 m2 , m1 ≫ m2 より, 比例定数が惑星 (m2 の値) によらず一定であるこ
とが導かれる.)
問題 2. (レポート問題 7:N 次元等方調和振動子:5 点)
ラグランジアンが以下で与えられる N 次元等方調和振動子を考える.
L=
N
∑
m(
k=1
2
)
(q̇ k )2 − ω 2 (q k )2 ,
(ω > 0).
(1) 一般化座標 q i に対するオイラー・ラグランジュ方程式を求めよ.
(2) 任意の i, j の組について,(q i , q j ) 平面での無限小回転に対して L は不変である. こ
の対称性に関するネーターチャージ M ij を求めよ.
(3) L は以下の変換に関して準不変である.
)
ϵij ( i kj
qk → qk +
q̇ δ + q̇ j δ ki , (k = 1, 2, · · · , N ).
2
この対称性に関するネーターチャージ T ij を求めよ.
標準 H0-4S15-05 難易度 : C
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