ものづくりと設計工学 ー半導体と集積回路ー 小林和淑 電子システム工学部門 スライドのPDF版は http://www-vlsi.es.kit.ac.jp より「授業→ものづくりと設計工学」 1 話の内容 半導体、トランジスタ、集積回路とは どこでもネットワーク 省エネルギー スマホの中身 ナノスケールの巨大さ レポート 2 身近な半導体 半導体技術の進歩のおかげで世の中は飛躍的に便利になっ た。 – 組み込み機器(Embedded Systems): 日本の強い分野 3 集積回路の用途 デジカメ タブレット・スマホ・ 携帯電話 デジタルテレビ 白物家電 自動車 電気で動くもののほとんどに集積回路が搭載 ロボット 半導体とは? 導体 絶縁体 半導体 5 トランジスタ(transistor) トランジスタは新しく作られた造語 – trans + resistor トランジスタを使う回路は,Solid-State Circuit:(固 体回路)と呼ばれる – それまでは? 半導体(主にシリコン,Si)の上に作られる – 半導体:導電率(抵抗率)を変化させることができる。 – Siは資源が豊富 – SiO2が安定な絶縁体だから 6 集積回路: Integrated Circuit 半導体(主にシリコン)の上に 作られた微細な回路のこと トランジスタ,抵抗(R),容量 (コンデンサ,キャパシタ,C), インダクタ(コイル, L)からなる LSI(PS3用 Cell Broadband Engine)の チップ写真 PS3のマザーボード 7 トランジスタとは トランジスタの役割 – 増幅: アナログ回路 – スイッチ: ディジタル回路 トランジスタの前は,真空管 – でかくて,電気食い,壊れやす い マイクは可変電圧源 スピーカーは 真空管アンプ トランジスタ 8 トランジスタ C バイポーラトランジスタ – 動作時にベース電流が流れる – アナログ回路に適する B MOSトランジスタ E – 動作時にゲート電流が流れない » 省電力 » 最近の電子機器はほとんどすべてM OS – スイッチとしての特性がよい! – デジタル回路に適する D G S 9 トランジスタの実物 (ワシントンのアメリカ歴史博物館展示物より抜粋) Vacuum Tubeから,Solid State Circuitへ メサトランジスタ@1957 トランジスタの発明は、1948年 10 集積回路(Integrated Circuit)とは 集積回路:Integrated Circuit 個別部品回路: Discrete Circuit 個別部品をひとつのチップの中にまとめて,配線で 接続したもの 11 最初の集積回路 1958年: トランジスタ、抵抗、配線を集積化 個別部品から,部品の集積化へ 2000年にキルビー氏はノーベル賞受賞 キルビー特許 特許料 2兆円 12 LSIとは? ICをさらに,高集積にしたもの – LSI: Large Scale Integration or Large Scale Integrated Circuit 多数のトランジスタが集積され ている 13 シリコンから作られるLSI シリコン単結晶棒 ウエハー SiO2 水晶 (単結晶の板) ダイシング (1チップごとに切る) ボンディング LSIチップ プロセス工程 14 集積回路の表面と断面 もっとも細い配線は22nm 15 LSI製造用のマスクとウェハー n 1 LSI製造の原版(マスク) LSI 1 LSI ウェハー 16 集積回路:発展の歴史 最初の集積回路 (1958) Jack Kilby, Texas Instrumentsによる 最初のプロセッサ (1971) Intel 4004 2,200 トランジスタ 10mmプロセス 300mW 108kHzクロック 2005年のSystem on Chip Cell B.E. 2億3千万トランジスタ 90nm/45nm(13x9mm2) 50 W at 1.1V 3.2GHz クロック Moore’s Law(ムーアの法則) 1965年に,INTEL社のGordon Mooreが提案した予言 1.5年あるいは2年ごとに,ひとつのチップに載るトラ ンジスタ数は倍増する 現在もムーアの法則は生きている。 – 普通のアメリカ人ならみな知っている法則 – 「コロンブスの卵」は誰も知らない 18 ムーアの法則 右と左は同じグラフ.何が異なる? 19 20 ウイスキーの価格も指数的 前頁とともに富士通研究所 井上さん講演資料より 21 ムーアの法則の実例 メモリの集積度:3年で4倍,10年100倍,15年1000倍, 30年100万倍 プロセッサの動作速度2年で2倍 同一倍率で比較 Ge合金接合トランジスタ@1950 年 トランジスタ1個 64MbDRAM@1995年,7000万Tr 22 微細化すると小型かつ高性能に! 5年ほど前のblu-rayレコーダ 9.5mm 5.9mm Panasonic SONY 1個の 45nm SoC 0.8W 待機電力 Full HD (1920x1080) MPEG4 AVC Encoder いくつかの90(or 65?)nm SoCs 3.0W Full HD (1440x1080) MPEG4 AVC Encoder 23 同じ性能のゲーム機なら? SCE 久多良木社長(発売当時) 24 微細化による効果 マイクロ SDカード 34W 8.5W 25 最新のトランジスタ(FINFET) 米半導体最大手インテル は4日、立体構造をもっ た半導体チップを開発し 、年内に生産を開始する と発表した。立体構造に することで、従来の平面 構造では実現が困難だ った高速で消費電力の 少ないチップが実現する という。(朝日新聞2011年 5月5日の記事より) 26 FINFETによるCPU(22nm,2012年) トランジスタ数は14億個 27 最新のプロセッサ Intel社最新プロセッサ(2014) パソコン用プロセッサ 13億Tr(Coreが2個のため22nmよりTr数が少ない) 14nmプロセス,83mm2 28 集積回路を設計するとは? 回路図 回路図(Schematic) – トランジスタ同士の論理的 な接続図 レイアウト レイアウト図(Layout) – 半導体の上に作成されるパ タンそのもの 29 ムーアの法則への挑戦 logスケール Trレベル 設計 ゲートレベル 設計 トランジスタ RTレベル設計 数は指数関 数的に増えて いくが、人が 設計できるト ランジスタ数 はそうはなら ない 30 どこでもネットワーク インターネットの進歩も半導体のおかげ。 もはや半導体がなければ、世界は動かない 31 どこでもネットワーク(Ubiquitous Network) 家庭(有線)、屋外(無線)でのネット接続環境の変化 1990年前半: – モデムを使って電話回線 速度: 9600bps~38400bps bpsって何 1990年後半: – 有線:ISDNを使ってディジタル通信 64k-128k – 無線: PHSを使ってディジタル通信 32k-128k 2000年前半: – 有線: ADSLを使って、非対称ディジタル高速通信 8M-50M – 無線: 携帯電話網によるディジタル通信(i-mode, FOMA) 9600-384kbps 32 では現在は? 家庭: 屋外: 33 省エネルギーへの貢献 ブラウン管→ HDD→ 蛍光灯→ ガソリン自動車→ エアコン、冷蔵庫、洗濯 機、照明 – インバータ制御による省 エネ化 34 微細化による効果 トランジス タ1個あた りの電力 が大幅に 減っている 35 LED照明の効果 信号のLED 化は、省電 力だけでなく ___の手 間が省ける という効果も ある 36 半導体産業の広がり 半導体その ものはGDP の1%。しか し、半導体 を利用する 全産業の GDPは40%! 37 半導体の働き 何でもできるスマホ – – – – – – – 電話 カメラ 音楽プレーヤ 辞書 財布 ゲーム など 38 iPhone(3GS)の中身 39 iPhoneの主要部品 アプリケーションプロセッサ フラッシュメモリ SIMカード 無線チップ SDRAM(メインメモリ) 3軸加速度センサ 電池 液晶 Iphone5のメイン基板 40 ナノスケールの巨大さ LSI上には,トランジスタと配線がnmス ケールで描かれている 10mm角に最小22nmのパタンを書くの は,アジア大陸に15mの道路を15m間 隔で書くのとほぼ同じ さらにLSIは多層配線(立体交差道路) mm um nm 250nm LSIの配線 2 (10,000,000) 22 km m 2 (6,600,000) 15 41 東京ディズニー リゾート ウェハレベルでは? 30cmウェハに45nm の加工=30kmの円 内に4.5mmの加工 1cm角のチップは ほぼディズニーラ ンドに等しい 30kmの円は東京23 区をほぼ覆う。京 都市内はすっぽり 覆われる。 42 見方を変えると 野球のグラ ウンドに0.2ミ リのペンでパ タンを書く LSI内の配線構造 43 レポート課題 1. スマホ,携帯電話以外の家電機器でネットワー クに接続する機能を持つものとその用途をいくつか あげよ. 2. スマートフォンの機能で将来実現しそうなもの、し てほしいものを挙げよ。 3. 集積回路のない世界に住むとしたら何が一番不 便かを考えてみよ。 44 参考資料 半導体産業研究所 半導体ミニ辞典 – http://www.sirij.jp/mini.html JEITA 半導体部会 よくわかる半導体 – http://semicon.jeita.or.jp/book/green_clean_semicon_1.html 45
© Copyright 2024 ExpyDoc