乳幼児期は人間の基礎をつくる大事な時期 (佐々木正美 『子どもへのまなざし』 福音館書店) 初瀬基樹 ご入園、進級おめでとうございます。 2015年度は、3名の新入園児を迎え、42名でスタートしました。また、3月の保護者会でお話ししまし たように「子ども・子育て支援新制度」も、いよいよこの4月からスタートです。制度が変わっても、「子 どもの育ち」を第一に考え、保護者の方々とは「子育てのパートナー」として、私たち保育者も、ともに 成長し合っていきたいという思いは、今後も引き続き大事にしていきたいと強く思っています。 さて、あらためて、「乳幼児期の保育がいかに大切か」ということを少しご紹介したいと思います。 佐々木正美さんという児童精神科医の方が書かれた『子どもへのまなざし』(福音館書店)という本 のなかには次のように書かれています。 子どもを育てるには、何よりも基礎が大事。 建物に例えるなら、乳幼児期は基礎工事のとき。その後の時期は、外装や内装工事、あるいはカー ペットや家具のようなもの。 後からやるものほど、やり直しがきく。『A大学を出ました』『B大学に留学しました』などというのは、 ペルシャのじゅうたんや、スウェーデンの家具みたいなものなのであり、そんなものはいつだって取 り換えが可能。基礎工事に関心をもって床をめくってみようなんて人はいませんが、何かあったとき、 基礎工事がどれくらい建物の命運を決するかということはよくおわかりでしょう。 建物であれば、いったん壊して、もう一回基礎から立て直すことも可能ですが、人間はそうはいき ません。30歳になっても80歳になっても高校や大学の学生になることはできます。実際にそうやっ て勉強している人も世の中にはいますが、10歳とか、30歳になってから保育園や幼稚園に入ること は絶対にできません。保育園や幼稚園に勤めることはできても、園児になることは二度とできないの です。 この時期は人格の基礎をつくるときです。子どもたちがどんな人格の人間になるのかということ をほぼ決定するのが、この乳幼児期なのです。基礎工事は残念ながら、建物が建った時には何も見 えなくなってしまいます。しかし、しっかりした建物かどうかは、基礎工事なしには考えられません。 乳幼児期の育児にあたる意義がどれほど大きいことか、一人の人間の人格の基礎を決定するのだ から、どれほど価値が大きく、どれほど責任の重いことか。 この乳幼児期の育児は、ひとことでいえば、子どもの要求や期待に、できるだけ十分にこたえてあ げることです。せんじつめればそれだけのことです。子どもの要求にこたえてあげて、こちらから伝 えたいことは、「こうするんでしょ、そうしちゃいけないんでしょ」と、おだやかに何回も繰り返し伝え ればいいのです。いらだったり、叱ったりする必要はないのです。「いつできるかな、いつからできる かな」と、それだけのことで、だいたい良いのです。 反対に、親や保育者の希望ばかりを子どもに強く伝えすぎてしまう、早く結果を出そうとする、大 人のほうが楽をしようとする。このような育児はよくありません。 次の時代を生きる子どもたちに、十分に愛されることの喜びを与えること、育児はそれで十分。人 間は愛されることから、生きる喜びを感じはじめるのですから。 要約ですので、興味をお持ちの方は、ぜひこの本を読んでみてください。私たち大人はつい、子ど もたちに何でも出来るようにと早くから教え込もうとしてしまいがちですが、まずは土台となる基礎 部分をしっかり育てておかなくてはなりません。そのためにはやはり愛情をたっぷり注いであげるこ とだと思います。そして、特に今のような時代にあっては、人を思いやる心、話し合いながら人と折り 合いをつけていく力などをしっかり育てていく必要があるように思います。
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