16. マウスモデル肝での検討で予測された非アルコール 性脂肪肝炎発症

16 . マウスモデル肝での検討で予測された非アルコール
性脂肪肝炎発症、進展に関連するmiRNA 群のヒト
血清内発現
鳥取大学医学部機能病態内科学
岡本 欣也、孝田 雅彦、岡本 敏明、
斧山 巧、木科 学、加藤 順、
徳永 志保、杉原 誉明、村脇 義和
【目的】非アルコール性脂肪肝炎( NASH)は、肝線維化進展を伴う慢性
肝疾患であり、その病態解明が急務である。miRNA は内在性の短2 重鎖
RNAで、生体内の蛋白発現に干渉する。今回我々はマウスモデルを用い
て、NASH発症に関連する候補miRNA 群を同定し、次いでこれら候補
miRNA のヒト血清での発現と、NASH 発症、進展との関連について検討
した。
【方 法】単 純 性 脂 肪 肝( SS)、NASH、お よ び 正 常 対 照 モ デ ル と し て
FLS、FLS-ob/ob および DSマウスを対象とした。それぞれのマウス肝
に お け る miRNA を マ イ ク ロ ア レ イ で 解 析 し、FLS、FLS-ob/ob で ±
4log 2以上の強い発現変動の見られる候補miRNA 群を同定した。次に
SS、NASH患者、および健常対象者それぞれ 10 例の血清よりmiRNA を
抽出し、マウスモデルで同定した候補miRNA 発現をRT-PCR法で解析
した。
【成績】マウスモデルでの検討で、miR- 34 a、- 146 b、- 200 a、- 200 b、
- 218 、- 342 、- 127 、- 136 、- 376 c 、- 379 、- 409 - 3 p 、- 411 、- 429 、
-495の14 個 が 候 補 miRNAと し て 挙 げ ら れ た。ヒ ト SS と NASH 間 で、
候補miRNAの血清発現プロファイルを階層クラスタリング解析したとこ
ろ、2群間に明瞭な発現パターンの差異が認められた。これらのうち6種
の miRNA( miR- 136 、- 146 b、- 218 、- 379 、- 409 - 3 p、- 495 )は、血清
内発現においても、SSと NASH群間で±2log2倍以上の発現差がみられ
た。これらの miRNA発現レベルと、NASH患者の臨床所見との関連を線
形解析したところ、miR- 146 b と HDL-Cho.、miR-218 と AST、miR- 379
とTotal Cho.、miR- 495と血小板数において有意な関連が認められた。
各miRNA について、ソフトウェアによる標的遺伝子予測を行うと、miR218は炎症性サイトカインIL-1 a、miR- 379 は脂肪酸合成系の SREBP 1、
miR- 495は炎症性、線維化サイトカインIL-1b やTGF-b1などをそれぞ
れ抑制することが示唆され、これらmiRNAのNASH 病態干渉メカニズム
の一端を担うものと考えられた。
【結論】マウス NASHモデル肝の検討で予測された候補 miRNA は、ヒ
トNASH患者血清内発現においても特異な発現パターンを呈し、これら
の一部はSSとの発現差が比較的大きく、NASH 臨床所見との有意な関
連も認められ、標的遺伝子への干渉によって NASH 進展に影響している
ことが示唆された。