生命科学 第7回

生命科学
第10回
担当教員:三笠俊哉
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世界観の変遷と「進化」
静的世界観
• 前成説
• 固定不変なものとして
の種
動的世界観
• 再生現象,後成説
• 自然発生説
• 無神論,唯物論
• キリスト教的世界観
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ジャン=バティスト・ラマルク
(1744~1829)
『フランス植物誌』,1778年
1779年,フランスアカデミー,会員
『無脊椎動物の体系』,1801年
『動物哲学』,1809年
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ラマルクの進化論
ー 前進的進化 ー
無機物
(化学進化)
単純な生命
(自然に内在する秩序形成力)
高次の形態の生命
4
存在の連鎖の時間化
• 生物の序列
原始的で複雑なもの→・・・→高等なもの(人間)
– 秩序は枝分かれする。
• 存在の連鎖の一番下が最初に誕生し,時間
の経過のなかで高次のものが出現する。
– 生物は別々の時期に自然発生によって誕生し,
独立に進化していく
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ヒト
複雑さ
現在
時間
6
用不用説
動物は自らの必要によってある部分を使い,あ
る部分を使用しない,その結果,使用する部分
は発達し,使用しない部分は衰える。
(図:www.kumagai-satoshi.comより)
7
獲得形質の遺伝
用不用説が正しいならば,生物がある世代で獲
得した形質が,遺伝によって子孫に伝わらなけ
ればならない。
「獲得形質の遺伝」
(後にネオ・ラマルキズムによって強調される)
8
ラマルクの不遇
なぜラマルクの進化論は
受け入れられなかったのか?
• 反進化論者キュヴィエ(1768-1832)との確執
ラマルク
キュヴィエ
啓蒙思想支持
宗教的には保守
フランス革命支持
フランス革命後の王政支持
気象学・地質学・化学といった 比較解剖学分野の実証的研
多分野への旺盛な関心
究を志向する
生物学から人間論へという哲
学的な興味
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ダーウィンの進化論
• Charles Darwin, 1809-1882
– イングランド生まれ
– 大学卒業後,海軍の測量船
ビーグル号にのって南アメリカ,
南半球の島々を航海し,動植
物や鉱物の観察を行った。
– 1859年に『種の起源』を出版
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人為選択から自然選択へ
進化の実験としての人為選択
ペットや家畜の品種改良技術を
進化の実験として捉える
• ハトの品種改良の研究
– 家畜や栽培品種は,極少数
の原種から分岐しているの
ではないか?
①
②
③
④
⑤
多種類のハトがいるが,それら
は人間が昔の飼育下で自由に
繁殖させたわけではない。
原種と仮定されるハトが,現在
野生では見られないし,またイ
エバトが野生化することはない。
ハトの品種はカワラバトに似て
いるが,ハト科の他の品種と比
べると異なる形質を持っている。
青い体色とさまざま模様がすべ
ての種で純粋を保った個体にも
交雑した個体にも出現する。
品種間の雑種は生殖可能だろ
う。
11
カワラバト
http://www.daishouji.jp/photo/yachou_gazou/
kawara-bato.jpg
イエバト
http://xenopuszoo.web.fc2.
com/bird/iebato.htm
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自然選択説
前もって進化の方向が決まっておらず,ランダ
ムな偶然の変異のなかから,環境に適応したも
のが結果として残る。
• 選択をする主体を認めない。
• 目的論的ではない.
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生存をめぐる戦い
(Struggle for Existence)
「生存をめぐる戦い」≠「弱肉強食」
• 砂漠の植物は互いに干渉しあってはいない
が,乾燥にどれだけ耐えて生存できるか,と
いう意味で競い合っている。
• ヤドリギは,同じ木についた他のヤドリギと資
源を奪い合うことで争う。
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共通起源と分岐の原理
生物種をさかのぼってゆくと,次第に共通のひ
とつのものに終息する。
15
漸進主義・連続主義
• 変化は少しずつ起こり,その変化の過程は長
期にわたって蓄積される。
– 部分的に獲得形質の遺伝を認める。
• 漸進主義・連続主義は天変地異による劇的
な変化や,突然変異を認めない。
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ダーウィン説の受容
~なぜすぐに受け入れられたのか~
– 先行するラマルクの理論は容易に受け入れられ
なかった。
– 発表当時から,理論の不備が指摘されていた。
(ウォルバーフォース主教)
しかし
• 学会における多数派に支持された。
– 学術雑誌Nature,X クラブが大きな役割を果たし
た。
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ダーウィン以後の進化論
• トーマス・ハクスリー(Thomas H. Haxley,1825-1895)
– Xクラブ創始者
– ダーウィン説を支持し,さらにヒト進化の論陣をはる。
『自然界における人間の位置』
• ユーゴー・ド・フリース(Hugo de Vries,1848-1935)
– 突然変異説(1901):進化のもととなる変異は,突然変異
で生じ,自然選択が働く
• 生物地理学(ウォーレス,フッカー,ワーグナー,ダー
ウィン)
– 地理的に隔離されると,同じ種でも異なった方向へ進化
する。
– ガラパゴス諸島におけるフィンチの嘴
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ダーウィンフィンチ
http://www.kahaku.go.jp/event/2014/02finch/
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ネオ・ダーウィニズムと
ネオ・ラマルキズム
• ネオ・ラマルキズム
– 獲得形質の遺伝の重視
• 遺伝情報の流れ
DNA→RNA→タンパク質
• 生後に獲得した特徴は
DNAに影響を与えない。
• ネオ・ダーウィニズム
– 自然選択の重視
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現代のダーウィニズム
~進化総合説~
• 自然選択,突然変異を遺伝子レベルで説明する。(集団遺
伝学)
① ある個体の遺伝子Xに突然変異(DNA配列のランダムな変
化)が起きる。
② 遺伝子型の変化が,その個体内の表現型の変化を引き起こ
す。
③ 集団の中でXを持つ個体が生き残っていくと,Xを持つ個体が
広がっていく。


Xが形質を変化させなかったり,生き残りやすさに影響しなければ,
Xが広まるか否かは偶然による。
Xが形質を変化させ,それが生き残りに有利ならXは広がりやすい,
生き残りに不利なら消えやすい。
④ 種の分岐は,集団が分かれ,変異した遺伝子のバリエーショ
ンや割合が変化し,集団間で生殖ができなくなるくらい変化
することで起こる。
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