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「生物リサイクル工学特論」について
2015年4月9日
大学院生命体工学研究科
生体機能専攻
白井義人
講義の目的
廃棄物のリサイクルと資源化について生物機能を模倣、利用して合理的な
方法論を知らしめること。
講義の方法
毎回、廃棄物のリサイクルと資源化に関するトピックス的話題を提供し、生
物機能(代謝、競争、共生、寄生、進化等)と比較しつつ、合理的なリサイク
ル・資源化法について学生諸君と共に考察する。
講義予定
4月9日 講義方法の説明。リサイクルに関する基本的な考え方
「生ゴミからプラスチックの生産」
‐都市の肝臓‐
4月9日 ケミカルリサイクルについて
「グリーンプラスチックのケミカルリサイクル」
‐都市の食物連鎖‐
4月10日 地球温暖化とヒートアイランド
「生ゴミ肥料とビル緑化」
‐都市の共生‐
4月10日 都市ゴミ発電(バイオ発電)
「RDF発電の問題点とその解決」
‐都市のエネルギー代謝‐
5月14日 都市における廃棄物の輸送
「メタン発酵と下水官」
‐都市の循環系‐
5月14日 リサイクルにおける経済性とは?
「空き缶デポジットくじ」
‐都市の競争‐
5月14日 温暖化ガス削減と国際的取り組み
「パームオイル産業におけるメタンの削減」
‐地球規模の共生‐
5月15日 沙漠緑化と新エネルギー
「沙漠における太陽電池発電と水素エネルギー」
‐地球規模の競争と進化‐
5月15日 ゼロエミッション社会について
「廃棄物の資源化とゼロエミッション」
‐都市における競争、寄生と共生のための共進化‐
5月21日 公益社団法人日本工学アカデミー 九州支部講演会
「資源開発に関する国際活動と工学の役割」
13時30分~17時
北九州学術研究都市 遠隔講義室1(学術情報センター 1階)
「南米におけるリチウム資源開発プロジェクト」
北九州市立大学国際環境工学部 教授 吉塚和治
「九州工大マレーシア拠点(MSSC)におけるバイオマス再資源化プロジェクト」
九州工業大学大学院生命体工学研究科 教授 白井義人
「チリ共和国シエラゴルダ鉱山を例にした最近の銅鉱山開発について」
住友金属鉱山株式会社シエラゴルダ推進本部 技術部長 佐藤涼一
5月22日 ゼロエミッション社会実現シナリオ
「都市のゼロエミッションと環境産業」
‐都市の進化‐
5月22日 リサイクル社会批判
「これまでのリサイクル議論について」
‐進化した生態系としての都市‐
5月22日 目指すべき21世紀型環境都市
「生物リサイクル工学とは何か」
‐さらなる都市進化の方向性‐
6月11日 生物リサイクル工学討論会
6月11日 生物リサイクル工学討論会2
6月11日 生物リサイクル工学討論会3
成績と評価
出席と提出レポート及び生物リサイクル工学討論会における発言内容に
より評価する。特に、生物リサイクル工学の確立に貢献した意見や提案の
あったレポートには高い評価をつける。
進化について
「進化」の歴史と「進化」という概念の進化
18世紀以前
「創造説」
すべての生物をつくったのは神で、それがその後
何の変化もなく現在に生き続けている。
「すべての生物は紀元前4004年に創造された」
アイルランドの大司教 J.アッシャーが17世紀に聖書の記述
に基づき計算
19世紀
ラマルクがはじめて種の変化主張
・「用不用説」と「獲得形質の遺伝」
ダーウィンの「種の起源」(1859年)
・「個体の変異」、「自然淘汰」、「適者生存」
ダーウィンの進化論の問題点
個体の変異が如何に種全体に波及するのか?
ダーウィンの「進化論」→「進化はゆっくり」
20世紀
ド・フリースによる突然変異の発見
W.ベイトソンによる「進化論の修正」
個体の変異は突然起こる
しかし、種に有利になる変異はほんの少しである
ことがT.H.モーガンによって証明された。
集団遺伝学の誕生
ハーディ・ワインベルクの法則
生物集団内でランダムな交配があると特定の
遺伝子型が世代を超えてほぼ一定に現れる。
生物集団の変異を数学的に処理できる
小さな集団で突然変異が起きれば、
急速に種全体に波及する。
総合進化説
ここまでの「進化」という概念の問題点
1.突然変異では有利な変化は非常に少ない
→ 偶然に頼れるのか?
2.適者のみが本当に生き残れるか?
→ 運次第では?
3.小さな変異がどうして大きな進化につながる
のか?
→ 進化の方向性は?
4.生物はそれほど大きな変化がない
→ シーラカンス、カブトガニやゴキブリは?
論点の整理
1.遺伝子の安定性
2.目的論と機械論
3.偶然と必然
4.獲得形質は遺伝するのでは?
5.連続か不連続か?
新しい進化の考え方
連続共生説
好気性菌
原始細胞
ミトコン
ドリアを
含む細胞
細菌(鞭毛をもつ)
動物細胞
原始鞭毛
細胞
植物細胞
リン・マーグリスの説(真核細胞進化説)
進化の要因が細胞に取り込まれるという概念
ワトソン、クリック(1953年)
DNAが発見され、遺伝子であることがわかる
突然変異が有利に作用しないのは当然
木村資生の中立進化説につながる
動物行動学 (C.ローレンツ)
ハチやアリの社会性 ← DNAが規定している
利己的遺伝子仮説(ドーキンス)
遺伝子のどの構造が生物の利己性
を規定しているのか?
それがどのように動植物の行動に
作用するのか?
等々 仮説というより思想のレベルか?
ウイルス進化説
遺伝子組み換え技術でスーパーマウスや
ヌードマウスがつくられる。
レトロウイルス(RNAウイルス)により
外来遺伝子が細胞内に取り込まれる
遺伝子の種間水平移動が可能
生物の進化と環境産業の進化
進化の特徴(まとめ)
環境産業への模倣
1.「自然淘汰」
→ 「市場占有」
2.「適者生存」
→ 「ニーズとの適合」
3.「獲得形質の遺伝」
→ 「新製品の普及」
4.「突然変異」
→ 「革新的技術の開発」
5.「集団遺伝学」
→ 「小さな集団が有利」
6.「細胞内共生」
→ 「産業間連携」
7.「利己的遺伝子」
→ 「営利追求」
8.「DNAと動植物の行動」
→ 「環境産業戦略の決定」
9.「ウイルス進化説」
→ 「新技術の業種間共有」