医博甲380松尾 英明

学 位 論 文 の 要 旨
ふ氏
※
整 理番 号
学位 論 文題 目
り
が
な
名
まつ お
ひ で あき
松尾
英明
Early transcutaneous electrical nerve stil■ ulation reduces hyperalgesia
and decreases activation of spinal glial cells in lnice with neuropathic pain
(早 期 か らの経 皮 的末梢神 経 電気刺激 は マ ウス神 経 障 害性 疼痛 モ デ ル の痛覚過敏
お よび 脊髄 グ リア細胞 の活性 を抑制す る)
研究 目的】
【
神経 障害性疼痛 は、神 経系 の機 能障害や損傷 によ り引 き起 こされ、臨床症状 として、ア ロデ
ィニ ア 、痛覚過敏 、持続痛や 自発痛 を引き起 こ し、 日常生活活動 の低 下 を招 く。 このよ うな
神 経 障 害 性 疼 痛 に 対 して 経 皮 的 末 梢 神 経 電 気 刺 激 i transcutaneous electrical nerve
stimulation(TENS)が 行 われ て い る。TENSは 、神経 障害性疼痛忠者 あるい は動物 モ デル を
姑象 に有効性 が報告 され てい るが、組織学的・免疫組織化学的な検証 を行 った報告 は少 な く、
そ の鎮痛 メカ ニ ズム は未 解 明な点 が多 い。近年 、神経 障害性疼痛 の発症や持続 には、脊髄後
角 内の グ リア細胞 の活性化 、グ リア細胞 内で の細胞 内情報伝達因子 であ る ム江▲P kinaseの 活
性化 、 グ リア細胞 か らの炎症性サイ トカイ ンαL‐ 18、 TNFα 、IL‐ 6)の 放 出、二 次 ニ ュー ロン
の感受性 の克進 が 関与す る事 が解 明 され てはい るが、TENSが 脊髄後角 内 のグ リア細胞 、炎
症性 サイ トカイ ンや 二次 ニ ュー ロンに作用 してい るか ど うかは不明である。 さらに、TENS
の鎮痛 メカ ニ ズム は、内因性 オ ピオイ ドが 関与す る事 が考 え られて い るが 、神経障害性疼痛
モ デル では内因性 オ ピオイ ドも機能不 全 を引き起 こす事 が報告 され てお り、TENSに よ り内
因性 オ ピオイ ドが機 能す るか明 らかに されて い ない。
本研 究 ではマ ウス神経 障害性疼痛 モ デル を作成 し、TENS治 療 の効果 を行動学的評価 、脊
髄後角 内の グ リア細胞、M▲ P kinase、 炎症性 サイ トカイ ンや 二次 ニ ュー ロン、オ ピオイ ド
レセ プ ター に与 える影響 に注 目して、免疫組織化学的な検証 を行 つた。
方法 】
【
ICRマ ウノ、(9週 齢 、n=124)を 用 い 、神経 障害性疼痛 モ デル として左 総月
l信 骨神経、左 腫骨神
経 を 6‐ 0絹 糸で結紫お よび切 断 し、左 朋,腹 神経 を温存す る spared nerve ittury(SNI)モ デル
を作成 した。 マ ウス を SNI群 、TENS群 、Sham群 に群分 け した。 TENSは 電気刺激装置
(Pulsecure‐ Pro KR‐ 7;OG技 研社製)を 使用 し、刺激部位 は左側 の傍脊柱筋 の直 上の皮膚 とし、
周波数 は 100Hz、 刺激強度 は筋収 縮 が生 じない最大強度 、刺激 時間は 30分 間 とし、 1日 1
回実施 した。TENSに よる治療 の 開始時期 として 、SNI後 1日 日か ら開始す る TENS‐ ld、
1週 後 か ら開始す る TENS‐ lw、 2週 後 か ら開始す る TENS‐ 2wの 3条 件 を設定 した。7日 間
の TENSの 後、L4‐ 5脊 髄 を採 取 し脊髄後角表層 を解析対象 とした。結果 の解析項 目は、①
機械 的、熱 的刺激 に対す る逃避行動 の評価 、② microglia(Ibal陽 性細胞)の 細胞数 、形態評
価 、microgliaの 増殖(Ibalと Brduの 二重 陽性細胞)の 評価 、astrocytes(GFAP陽 性細胞)の
細胞数 と形態評価 、③蛍光免疫染色 と nOw cytometryに よる ム江AP kinase ttmilyの p‐ p38
陽性 micrOgliaの 細胞数 の評価 、④免疫組織化学的評価 に よる PKC‐ Yと p‐ CREB陽 性 ニ ュ
ー ロンの変イ
監、⑤Western blottingに よる MAP kinase(p‐ p38、 p‐ ERK1/2、 p‐ 」NK)、 炎症
性 サイ トカイ ン(IL‐ 18、 TNFα 、IL‐ 6)、 オ ピオイ ドレセ プ ター (μ OR、 δOR)の 発現変化 、
⑥ TENS治 療前 のオ ピオイ ドレセ プター拮抗薬(na10xone,2mg/kg、 腹腔 内)投 与による影響
(行 動学的評価お よび micrOglia、 astrocytesの 評価)と した。
結果 】
【
行動学的評価 では、TENS‐ ld群 は SNI群 と比 較 し、有意 に痛覚過敏 の改善 を認 めた一方で、
TENS‐ lw群 お よび TENS‐ 2w群 では SNI群 と比較 し、痛覚過敏 の改善 を認 めなかつた。
TENS… ld群 は SNI群 と比較 し、microgliaの 細胞数 の減少、肥大化 の抑制 お よび BrdU陽
性 micrOglia細 胞数 の減少 、astrocytesの 細胞数 の減少お よび肥大化 の打口
制 を認 めた。そ の
一方 で 、TENS‐ lw群 お よび TENS‐ 2w群 では SNI群 と比較 し、microgliaお よび astrocytes
の細胞数 に変化 を認 めなかった。 TENS‐ ld群 では、SNI群 と比較 し、脊髄後角表層 におけ
ユow cytometryに よ り確認 できた。
る p‐ p38陽 性 micrOglia数 の減少 を免 疫組織化学的評価 、
ニ
脊髄後角表層 にお ける PKCい Yと p‐ CREB陽 性 ュー ロンでは、TENS‐ ld群 は SNI群 と比
較 し、有意 な陽性細胞数 の減少 を認 めた。 Western blottingで は、TENS‐ ld群 では ヽLP
kinase(pい p38、 p‐ ERK1/2、 p‐ 」NK)と 炎症性 サイ トカイ ン(IL‐ 18、 TNFα 、IL‐ 6)の 発現量 の
減少 と、 オ ピオイ ドレセ プ ター (μ OR、 δOR)の 発 現量 の増加 がみ られ た。 TENS治 療前 の
オ ピオイ ドレセ プター拮抗薬投与 に よ り TENSに よる痛覚過敏 の改善効果 、microgliaお よ
び astrocytesの 細胞数 の減少 がそれぞれ 抑制 され た。
考禁 】
【
神 経 障 害性 疼 痛 で は、脊 髄 後 角 内 で の グ リア細 胞 の 活 性 化 が 炎 症性 サ イ トカイ ン(IL‐ 18、
TNFα 、IL‐ 6)の 発 現 を増 強 し、 二 次 ニ ュー ロ ンの感 受性 を克進 す る。 さ らに、脊髄後角 内で
オ ピオイ ドレセ プ ター の減 少 な ど疼 痛抑 制 系 が機 能 不全 に陥 る。 そ のた め 、難 治性 の疼痛 が
発 症 、持続 す る と考 え られ る。 本研 究 で 行 な っ た TENS治 療 で は、神 経損 傷 後 早期 か ら治
療 を行 うこ とに よ り 1)痛 覚過敏 の抑 制 、 2)脊 髄 後 角 内 にお け るグ リア細胞 の活性化 の抑制 、
3)二 次 ニ ュー ロ ンの感 受性 の 抑制 、 4)炎 症性 サイ トカイ ンの減 少 とオ ピオイ ドレセ プ ター の
増 加 とい っ た 効果 を もた ら した。そ の一 方 で 、5)神 経損傷 か ら 1週 あ るい は 2週 後 の TENS
治療 で は、行 動 学 的、免 疫組織 化 学 的 に効果 を認 めず 、TENS治 療 の 開始 時期 がそ の効果 に
関与 してい る こ とが考 え られ た 。 さ らに、6)TENS治 療 前 のオ ピオイ ドレセ プ ター 措 抗薬投
与 は 、早期 TENSの 痛 覚過敏 の 改善効果 をす]制 した 事 か ら、早期 TENS治 療 は、 内因性 オ
ピオイ ドを介 して上述 の効果 を もた ら した 可能性 を笑験 的 に証 明 で きた。
)‐
結論 】
【
マ ウス神経 障害性疼痛 モ デ ル に封す る神経損 傷後早期 か らの TENS治 療 は、痛覚過敏 を改
善 した。 そ の メカ ニ ズム として 、早期 TENS治 療 は、脊髄後角 内のオ ピオイ ド受容体 を介
して 、グ リア細胞 を抑制 し、炎症性 サイ トカイ ンの減少お よび 二次 ニ ュー ロンの感受性克進
を抑制す る可能性 を実験的 に証 明 した。
備考
1
2
※印 の欄 は、記入 しない こと。
学位論文 の要 旨は、和文 に よ り研 究 の 目的、方法、結果 、考察、結論等 の順 に記 載 し、
2,000字 程度 で タイ プ等 で印字す る こ と。
3
図表 は、挿入 しない こ と。