第4回講義

「地理学概論II」
第四回:ダーウィンの進化論と
環境論への批判
2015年5月18日
担当: 二村 太郎
[email protected]
前時の授業にあった質問&コメントから:
 キリスト教のしばりがもっと早くに解けていれば、地理学の




発展ももっと早かったのだろうか。
フィールドワーク重視の地理学へとなっていったとありまし
たが、世界を開拓していくたびはフィールドワークに入らな
いのかが気になりました。
世界史をやっていない自分からすれば、フンボルトといえば
フンボルトペンギンを思い出してしまった。しかし、それもフ
ンボルトがつけたと知り、なぜか感動してしまった。
あらゆるものを分類・体系化していなかった時代はどのよう
に物事を認識していたのか想像もつきません。人と猿は全
く別の生物だと思っていたのでしょうか?
ブラスバンドの曲にジョン・ハリソンの時計開発をモチーフに
した『ハリソンの夢』があります。ぜひ聴いてみて下さい!
前回の内容
ヨーロッパにおける啓蒙思想のおこり

啓蒙思想とは
啓蒙思想と地理学


地理学的知のゆくえ

教授される学問としての地理学





地理学の誕生(啓蒙思想以前)
カントによる地理学の講義
リッターによる地理学の講義
アレクサンダー・フォン・フンボルトによる諸地域の探査旅行
地理学的知の普及
第四回
ダーウィンの進化論と環境論への批判
探検の知から学問として確立した地理学
大学における地理学の講義(ドイツ)


リッターによる門下生の育成
探検から調査・研究へ(イギリス)



リビングストンらによる大陸内部の解明
王立地理学協会による学術雑誌の発行
第四回
ダーウィンの進化論と環境論への批判
チャールズ・ダーウィンによる『種の起源』刊行
南太平洋の探検・標本収集を通じて生物と地理の関係
を検討

「なぜ○×の△□はこのようにあるのか?」ガラパゴスカメ
や化石の分布に関心


自然(環境)と人間の関係について考察
生物学と地理学の視点から検討した種の進化過程

フンボルトとリッターの没年に『種の起源』を刊行
進化論と自然選択説の提唱



国内外に大きな反響を生む→人間社会の解釈にも応用
第四回
ダーウィンの進化論と環境論への批判
自然(環境)と人間の関係をとらえる研究の多様化①
リヒトホーフェン(ドイツ)による地形学の確立

自然の「形態」とその「比較」に着目


ペンクやデービス(アメリカ)に引き継がれる

(1911年に東京大学理学部地質学科で地理学の講義が始まる)
ラッツェルによる人文地理学の確立




空間と歴史との関係を生物学的視点から検討
人間の移動や民族について着目
アメリカのセンプル女史ほかへ継承
第四回
ダーウィンの進化論と環境論への批判
自然(環境)と人間の関係をとらえる研究の多様化②
ラッツェルがとらえた人間と環境の関係

人類・歴史に対する理解として地理学的アプローチを試み、
中でも地球・自然・空間・土地等の自然環境面から考察した。
ラッツェルは、自然・土地の影響は大きく強く、永続的に作用
する条件であると考えた。
植物地理学や動物地理学と同様の発想に基づいて、人間
の地理学を構想しようとする観点 環境決定論として議論
を呼ぶ



ディスカッション:彼の議論にはどのような問題があるだろうか?
『銃・病原菌・鉄』から考える
第四回
ダーウィンの進化論と環境論への批判
環境決定論への批判と新たな展開
ブラーシュ(フランス)による環境可能論の提唱

環境を人間の活動に対して可能性をそなえたものとみなす
様々な地域における人間の生活様式に着目
地理的パターンの成立と、それに関与する諸要素との関連
性への解明を目指す(比較地理学と地誌の樹立)




(1907年に京都大学文学部史学科に地理学講座が置かれる)
本日のまとめ
諸学問の発展により、様々な地理学的研究がなされる



人文地理学と自然地理学の分化
国により異なる地理学の発展が展開