関西体育心理例会会員報第 9 号 2009.2 発刊 関西体育心理例会通信 <会 員 誌第 9 号 目 次> 巻頭 言 『は じめ に 』 平成 20 年度 第 二回 例 会発 表 要旨 世話 人 直 井愛 里 (近 畿大 学 ) 『テ ニ ス選 手の 社 会不 安傾 向 と競 技不 安 の関 係: 認知 モ デル の観 点 から の考 察』 ・・中 村晶 子( 甲南 女 子大 学大 学 院) 『随 伴 する 筋緊 張 が反 応動 作 の情 報処 理 過程 に及 ぼ す影 響』・・ 荒 木 雅信 ( 大阪 体育 大 学) 『ア ス リー トの 競 技経 験と こ ころ の成 熟 過程 の検 討』・・ 石 原端 子 ( 大阪 体 育大 学大 学 院) 『自 己 紹介』・ ・荒 木 香 織( 兵 庫県 立大 学 ) 事務 局 より はじ め に 世話 人 :直 井愛 里 (近 畿大 学 ) 平成 20年度 第二 回 関西 体育 心 理例 会が 、12月6日(13:30~16:30)に 常翔 学 園大 阪セ ン ター で開 催 され 、 総勢25名 の 研究 者の 方 々に 参加 し てい ただ き まし た。 今 回は 、中 村 晶子 先生 ( 甲南 女子 大 学 大学 院 )に 「テ ニ ス選 手の 社 会不 安傾 向 と競 技不 安 の関 係: 認 知モ デル の 観点 から の 考察 」、 荒 木 雅信 先 生( 大阪 体 育大 学) に 「随 伴す る 筋緊 張が 反 応動 作の 情 報処 理過 程 に及 ぼす 影 響」 、石 原 端 子先 生 (大 阪体 育 大学 大学 院)に「 ア スリ ー ト の競 技 経験 とこ こ ろの 成熟 過 程の 検討 」の研 究発 表 を して い ただ きま し た。 そし て 、本 年度 よ り関 西に 来 られ た荒 木 香織 先生 ( 兵庫 県立 大 学) には 、 今 まで の コン サル テ ィン グや 研 究活 動を 含 めた 自己 紹 介を して い ただ きま し た。 荒木 雅 信 先生 の 学 位論 文の 発 表 では 、 現 場で も利 用 で きる 貴 重 な報 告を し て いた だ き まし た。 荒 木雅 信 先生 の「 あ きら めな い こと 」と い う言 葉に は 、多 くの 参 加者 が励 ま され たと 思 いま す。 中 村 晶子 先 生と 石原 端 子先 生の 発 表で は、 参 加者 から 多 くの コメ ン トが あり 、 活発 な意 見 交換 が行 わ れ まし た 。各 研究 の 中に 、発 表 者自 身の ご 経験 など も 表れ てい た こと が興 味 深か った で す。 最後 に 、 米国 と シン ガポ ー ルを 経て 日 本へ 戻ら れ た荒 木香 織 先生 から 、 シン ガポ ー ルの 文化 の 話も 交え た 自 己紹 介 をし てい た だき まし た 。新 たに 若 手研 究者 が メン バー に 加わ り、 関 西の 体育 心 理学 、ス ポ ー ツ心 理 学も パワ ー アッ プし た かと 思い ま す。 例会 後 に開 催さ れ た懇 親会 で は、 ちゃ ん こ鍋 を囲 み な がら 、 参加 者同 士 の現 状報 告 など も行 わ れ、 楽し い 時間 を過 ご すこ とが で きま した 。 -1- 関西体育心理例会会員報第 9 号 『 テニ ス選 手 の社 会 不 安傾 向 と競 技不 安 の関 係: 認 知モ デル の 観点 から の 考察 』 甲南 女 子大 学院 中村 晶子 例会 で は、 私が 現 在取 り組 ん でい る修 士 論文 『テ ニ ス選 手の 社 会不 安傾 向 と競 技不 安 の関 係: 認 知モ デ ルの 観点 か らの 考察 』 につ いて 発 表さ せて い ただ きま し た。 本研 究 では 、Wells が 提唱 し て いる 社 会不 安の 認 知モ デル を 背景 に、 社 会不 安の 高 いテ ニス 選 手の 方が 、 社会 不安 の 低い テニ ス 選 手よ り も、 負け て 嫌な 思い を した 試合 後 に反 すう を 行っ てい る かど うか 検 討し まし た 。さ らに 、 社 会不 安 と競 技不 安 の関 係に つ いて 明確 に し、 社会 不 安が 引き 起 こす 競技 パ フォ ーマ ン スへ の影 響 に つい て 分析 を行 い まし た。 例 会で は結 果 まで の発 表 とな りま し たが 、例 会 で様 々な ご 意見 (分 析 方 法や 方 法論 、今 後 の課 題な ど につ いて の ご意 見) を いた だい た こと で、 そ の後 の考 察 を書 くヒ ン ト とな り まし た。 『思 考 の 反す う』は 私が 特 に関 心を 持 って いる テ ーマ です 。今 後 も、臨 床心 理学 で 研 究さ れ てい るテ ー マを 用い て 、ス ポー ツ 選手 のパ フ ォー マン ス 向上 に貢 献 でき るよ う な研 究を し て いき た いと 考え て おり ます 。 中村晶子(なかむらしょうこ) 米 国 Washington College に て 心 理 学 ( 臨 床 心 理 学 / カ ウ ン セ リ ン グ コ ー ス )を 学 び 、2006 年 に は 、米 国 Argosy University Phoenix に て M.A. Sport & Exercise Psychology を取得。現在は、甲南女子大学院人文科学総合研究科博士前期課程にて臨床心理学を学んでいる。 『 随伴 する 筋 緊張 が 反 応動 作 の情 報処 理 過程 に及 ぼ す影 響 』 大阪 体 育大 学 荒 木雅 信 合目 的 的な 主運 動 を行 なう た めに は、 種 々の 要因 が 考え られ る 。本 研究 で は、 主運 動 を、 情報 処 理過 程 と運 動実 行 過程 に分 け て考 えた 。 そし て、 こ れら の過 程 に影 響す る 要因 とし て 、随 伴す る 筋 緊張 に よる 中枢 の 覚醒 を取 り 上げ た。 ヒト を ひと つの 情 報処 理系 と 考え た場 合、 「 心 理状 態 の変 化に よ る覚 醒水 準 の変 化と 、それ によ る 身体 的 変化 」- 「 身体 的変 化 によ る覚 醒 水準 の変 化 と、 それ に よる 心理 状 態の 変化 」 とい った 相 互 循環 因 果関 係は 興 味深 い。 結論 を 先に いえ ば、 「 随 伴す る 筋緊 張は 、主運 動の 情 報処 理過 程 に作 用し 、運 動 実行 過 程に は作 用 しな い 。そ して 、 その 最適 水 準は 10%~20%MVC の 間で あ る」 と いう 結果 を 得た 。そ し て、 主動 筋 で ない 筋 から の筋 感 覚情 報が 、 主運 動を 開 始す る前 か らフ ィー ド バッ ク情 報 とし て、 主 運動 の情 報 処 理過 程 を覚 醒さ せ 、情 報処 理 時間 を短 縮 させ たも の と推 察す る 。 この こ とは 、運 動 を行 なう た めに 必要 な 意識 にの ぼ りに くい 「 準備 」と い える 。抽 象 的だ が、 熟 練し た スポ ーツ 選 手が 体得 し た運 動の 「 コツ 」に 当 たる と思 わ れる 。 荒木雅信(あらきまさのぶ) 大阪体育大学大学院博士課程スポーツ科学研究科 石川生まれ。大阪体育大学体育学部体育学科卒業 修了 筑波大学大学院博士課程・課程修了退学 ( Ph.D) 趣味 バスケットボール部所属 教授 筑波大学大学院修士課程 スポーツ心理学専攻大阪体育大学大学院博士後期課程 キ ャ バ リ ア 犬 ( 雌 ・ 1.5 歳 ) な っ ち ゃ ん と の 散 歩 -2- 関西体育心理例会会員報第 9 号 「ア ス リー トの 競 技経 験と こ ころ の成 熟 過程 の検 討 」 大 阪体 育 大学 大学 院 博 士後 期 課程 例会 では 、 「ア ス リ ート の 競技 経験 と ここ ろの 成 熟過 程の 検 討」 のタ イ トル で、 石 原 端子 博士 論文 研 究 計画 を 発表 させ て 頂き まし た 。当 日は 主 に、 研究 の 背景 と枠 組 みに つい て お話 をし ま した 。研 究 の 背景 で は、 「競 技 経験 を通 し てア スリ ー トが 成長 ・ 成熟 して い くと はど の よう なこ と なの か? 」 と いう 問 いに 至っ た 背景 を、 私 の陸 上競 技 とゴ ルフ 競 技者 とし て の体 験か ら 紹介 しま し た。 そし て 、 研究 の 枠組 みで は 、作 成し た 「競 技経 験 とこ ころ の 成熟 過程 の 概念 モデ ル 」を 示し な がら 、独 立 変 数と 従 属変 数と な る尺 度を ど のよ うに 測 定し てい く のか につ い て紹 介し ま した 。 発表 後、 丹 羽先 生 か らは 言 葉の 定義 、 菅生 先生 か らは モデ ル につ いて 、 杉浦 先生 か らは 従属 変 数 の考 え 方に つい て など 、ま た その 他に も 多く の先 生 から いろ い ろな 視点 で のア ドバ イ スを 頂き ま し た。 個 人的 には 、 少し 低下 ぎ みに なっ て いた 研究 に 対す るモ チ ベー ショ ン が高 まり 、 かつ 頭の 中 を 整理 す るこ とが で きた 大変 あ りが たい 機 会と なり ま した 。発 表 を勧 めて 頂 きま した 世 話人 の直 井 先 生、 大 場先 生に あ らた めて 感 謝申 し上 げ ます 。 石原 端子(いしはらまさこ) 鳥 取 県 生 ま れ 。鹿 屋 体 育 大 学 卒 業 。大 学 時 代 ま で は 陸 上 競 技 、 大 学 卒 業 後 に ゴ ル フ を 始 め プ ロ ゴ ル フ ァ ー と な る 。現 在 大 阪 体 育 大 学 大 学 院 博 士 後 期 課 程 在 学 中 。ス ポ ー ツ 心 理 学 専 攻 。2008 年 ス ポ ー ツ メ ン タ ルトレーニング指導士補資格取 「自 己 紹介 」 荒木 香 織 (兵 庫 県立 大学 ) ニー ト から の復 活 。2008 年 10 月よ り 兵庫 県 立大 学 で教 鞭を 取 る機 会に 恵 まれ た 。ア メ リ カや シ ンガ ポ ール での 活 動を 経て 日 本に 、そ し て関 西に 帰 って こら れ たこ とは 言 い表 しよ う のな い喜 び で ある 。 せっ かく 頂 いた チャ ン スを 生か し 、今 後思 う 存分 活動 し てい きた い 。 まず は 研究 活動 。 学位 論文 で はス ポー ツ にお ける 完 全主 義傾 向 につ いて 追 究し た。 今 後も 日本 人 のス ポ ーツ の場 面 にお ける 完 全主 義傾 向 につ いて 、 尺度 作成 を 含め 取り 組 んで いき た い。 また 、 中 高生 や 高齢 者を 含 むす べて の 女性 の運 動 参加 への 意 欲や 機会 に つい ての 研 究も 続け て いき たい と 考 えて い る。 前者 は 量的 研究 、 そし て後 者 は質 的研 究 を中 心と し て進 めて い くこ とに よ り、 バラ ン ス のと れ た研 究者 と なる こと を 目標 とし て いる 。ま た 、こ れま で の経 験や ネ ット ワー ク を生 かし 、 国 内外 の 研究 者と の 共同 研究 に も取 り組 ん でい けた ら と考 えて い る。 次に コ ンサ ルタ ン ト活 動。 中 学校 での ワ ーク ショ ッ プか ら、 北 京オ リン ピ ック にお け るシ ンガ ポ ール ナ ショ ナル セ ーリ ング チ ーム への サ ポー トま で 、幅 広く 活 動し てき た 。こ れか ら もコ ンサ ル タ ント ス キル を磨 く こと を怠 ら ず、 より 多 くの アス リ ート やコ ー チの 支え に なる こと が でき るよ う 活 -3- 関西体育心理例会会員報第 9 号 動し て いき たい 。 また 、ス ポ ーツ や運 動 の枠 組み を 超え 、す べ ての ひと が 楽し く元 気 に暮 らす た め のサ ポ ート にも ど んど ん取 り 組ん でい く こと を忘 れ ずに いた い 。 大好 き なス ポー ツ 心理 学を 通 して 、ア ス リー トは も ちろ ん、 毎 日頑 張っ て いる ひと た ち、 そし て 小学 生 から 高齢 者 まで 、な る べく たく さ んの 人の こ ころ に届 く よう な研 究 やコ ンサ ル タン ト活 動 を して い くこ とを 目 標と して い る。 こう 見 えて も、 人 見知 り。 な るべ くた く さん の先 生 方と お話 を し、 交流 を 深め るこ と によ り日 本 での ス ポー ツ心 理 学に つい て も、も っ とも っ と学 び たい と考 え る日 々で あ る。現 職 につ き まだ 3 ヶ 月足 ら ず。 にも か かわ らず 、 関西 体育 心 理例 会は も ちろ んの こ と、 数々 の 研究 会や 学 会に 参加 さ せ て頂 く 機会 に恵 ま れた 。多 く の先 生方 の ご尽 力に よ り、 日本 で 活動 がで き るこ とを 心 の底 から 感 謝 して い る。 荒木香織 (あらきかおり)兵庫県立大学環境人間学部 准教授 京都生まれ京都育ち。日本大学文理学部体育学科卒業 保健体育審議会陸上競技部所属 員免許取得 米国ノースカロライナ大学グリーンズボロ校 米国北アイオワ大学大学院修士課程修了 大 学 院 博 士 課 程 修 了 ( Ph.D.) ス ポ ー ツ 健 康 心 理 学 専 攻 女 性 ジ ェ ン ダ ー 学 専 攻 ( Graduate Certificate) 2006 年 か ら 2008 年 ま で シ ン ガ ポ ー ル 南 洋 工 科 大 学 国 立 教 育 学 院 に 専 任 講 師 と し て 勤 務 ィン 保健体育科教 趣味 サーフ 骨董品収集 < 事務 局 より > 今回 は 、大 阪工 業 大学 の木 内 敦詞 先生 に 「常 翔学 園 大阪 セン タ ー」 を紹 介 いた だき 、 例会 を開 催 する こ とが でき ま した 。木 内 敦詞 先生 に 改め てお 礼 を申 し上 げ たい と思 い ます 。ま た 、多 くの 先 生 方、 大 学院 生が 参 加し てく だ さり 、関 西 メン バー の 研究 に対 す る意 欲を 感 じる こと が でき まし た 。 研究 も スポ ーツ と 同様 に、 周 りか らの 指 導や 心理 サ ポー トが 大 切に なっ て きま す。 お 互い に協 力 し なが ら 、一 人一 人 の研 究を 進 展さ せ、 ス ポー ツ心 理 学の 発展 に 貢献 でき る よう 、例 会 を継 続し て い きた い と思 いま す 。次 回は 5月 頃を 予 定し て お りま す ので 、よ ろ しく お願 い いた しま す 。 また 、 例会 に関 す るご 希望 、 ご意 見、 あ るい は体 育 心理 学、 ス ポー ツ心 理 学に 関す る 情報 提供 な どが あ りま した ら 、< [email protected]>ま で お願 い 申 し上 げ ます 。 -4-
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