首都圏北部4大学研究室紹介 今後の展開 宇都宮大学雑草科学研究センター 新規ホルモンに制御される枝分れのしくみ を解明 植物生理化学研究室 「ストリゴラクトン」 は、 植物体内では枝分か ■研究テーマ れを制御する 「植物ホルモン」 であり、根圏に ●植物ホルモンに制御される植物生長のしくみを解明 放出されるとアーバスキュラー菌根菌 (リン酸 ■キーワード 情報通信 ◆◆◆ URL:http://wsc.mine.utsunomiya-u.ac.jp/~nomura/ 図2 植物ホルモンの同定に用いているGC-MS ■産業界の相談に対応できる技術分野 を誘導するという、極めてユニークな植物生 理活性物質です。 そのような多岐にわたる生 植物ホルモンの生理学的研究 (投与実験) 、 有機化学的研究 (同定および定量)、 分子生物学的研究(遺伝子解析) 特徴と強み ■主な設備 微量生理活性天然物の同定と定量 野村崇人 准教授 連 絡 先 宇都宮大学雑草科学研究センター 野村崇人 TEL:028-649-5149 FAX:028-649-5155 e-mail: tnomura@cc.utsunomiya-u.ac.jp います。 また、 「ブラシノステロイド」 は花粉や種 子などの生殖器官に多く含まれることも知ら れています。 このように、 「ブラシノステロイド」 根を張って動かないという進化を選んだ植 が生殖器官の発達に重要な役割を果たして 物は、 芽を出したらどんな環境にも適応しなけ いることは明らかですが、 その分子メカニズム は解明されていません。本研究室では、世界 に先駆けて明らかにした 「ブラシノステロイド」 ルモン」 と呼ばれる内生生理活性物質により の活性化酵素の解析を進め、植物の種実生 産におけるその役割の解明を試みています。 また、研究材料としてモデル植物であるシロ 植物の生長生理現象の多くを分子レベルで イヌナズナ (アブラナ科の雑草) 、 イネ、 トマトな 理解することができます。 さらに、その働きを どをもちいて、植物の進化や多様性(野生植 利用すれば、 植物の生長制御、 延いては農業 物と作物の違いなど) などについても追求して 生産の向上に結びつけることができます。 「植 います。 活性天然物の化学的取扱い法、精製分離 米山研究室をはじめ国内外の研究機関と共 技術、定性定量技術などです。世界的に見 同で研究を行っています。 「ストリゴラクトン」 ても 「植物ホルモン」 などのナノモルレベルの の生合成の解明が進むと、 その調節による地 生理活性天然物の化学分析に関して習熟し 上部の形態制御、 アーバスキュラー菌根菌共 ている研究者は少なく、 その分析を行えるの 生の促進による生産性の増大、 さらには発展 は日本国内でも限られた研究室だけです。 途上国の農業生産に壊滅的な被害を与えて 本研究室の生理活性天然物の分析能力は いる根寄生植物の画期的な防除法の開発が 国内外の研究者により高い信頼を得ており、 可能になるものと期待されています。 多くの共同研究に参画してきています。 その 成果は一流学術雑誌に掲載され高い評価を 受けています。 フロンティア 絶妙にコントロールされています。 したがって、 その生合成調節や作用機構を解明すれば、 は不明のままです。 現在、 その解明に向けて、 茨城大学 図5 ストリゴラクトン欠損により葉が生い茂るシロイヌナズナ (左) と正常株 (右) 物ホルモン」 は、植物自身がつくり出し、微量 で作用し、植物界に普遍的に存在する低分 社会基盤 ればならない過酷な宿命を負っています。 そ のような植物の生活環や環境応答は 「植物ホ 植物における 「ストリゴラクトン」 の生合成経路 本研究室が得意としているところは、生理 製造 ︵ものづくり︶ 技術 顕著な増収効果があることが明らかにされて ステロイドホルモンに制御される生殖生長 のしくみを解明 室などの研究で明らかにされてきましたが、 ◆◆ エネルギー 研究概要 理作用は、 近年、 同研究センターの米山研究 ナノテクノロジー・ 材料 人工気象器、 ガスクロマトグラフィー質量分析計 (GC-MS) 、 液体クロマトグラフィー質量分析計 (LC-MS/MS) 、 遺伝子増幅装置 (PCR) 環 境 供給菌) の共生と根寄生植物(雑草) の寄生 植物ホルモン、生長制御、 ブラシノステロイド、 ストリゴラクトン ◆ ライフ サイエンス ●ライフサイエンス 図3 遺伝子解析に用いているPCR 宇都宮大学 子化合物であり、 現在、 9種類の 「植物ホルモ ン」 が単離・構造決定されています。本研究 室では、 とくに植物のステロイドホルモンであ 群馬大学 る 「ブラシノステロイド」 についての研究を行っ ています。 「ブラシノステロイド」 は植物の伸長生長に 埼玉大学 必須のステロイドホルモンです。 「ブラシノステ ロイド」 の農業への応用は1980年代に盛んに 研究され、 コムギやイネなどの穀物に対する 33 4u Vol.4 図1 LC-MS/MSによる植物ホルモン分析 図4 植物材料を培養している人工気象器 図6 トマトの根に寄生して栄養を奪う雑草オロバンキ 4u Vol.4 34
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