卵巣腫瘍

卵巣腫瘍
卵巣腫瘍とは
卵巣は子宮の左右に一つずつあり、通常では 2~3cm ぐらいの大きさです。ここに発生し
た腫瘍が卵巣腫瘍であり、大きいものでは 30cm を超えることもあります。卵巣腫瘍には
様々な種類がありますが、その発生起源から表層上皮性・間質性腫瘍、性索間質性腫瘍、
胚細胞腫瘍などに大別され、それぞれに、良性腫瘍、境界悪性腫瘍、悪性腫瘍があります。
どのような症状がありますか?
卵巣腫瘍の症状には腹部膨満感(お腹が張って苦しい)、下腹部痛、頻尿などがありますが、
小さいうちは無症状で経過することが多く、大きくなったり腹水がたまったりしてから症状が出
現することが多いのです。時に腫瘍が破裂したり、茎捻転といって腫瘍がお腹の中でねじれ
てしまうと突然の強い下腹部痛が出現することもあります。
診断方法は?
診断の手順としては問診に続き、まず触診・内診と超音波検査が行われ、卵巣腫瘍の有無
を診断します。また、これにより良・悪性の診断もある程度可能です。超音波検査により腫瘍
が嚢胞性(ふくろ状)の場合の多くは良性腫瘍ですが、充実性部分(かたまりの部分)と嚢胞
性部分が混在する場合や全体が充実性の場合などでは悪性腫瘍や境界悪性腫瘍を疑いま
す。さらに、詳しく調べる必要があると判断された場合、MRI 検査や腫瘍マーカーの測定が
行われます。担当医はこれらの結果から総合的に良性腫瘍なのか悪性腫瘍や境界悪性腫
瘍なのかを判断します。しかしながら、その精度には限界があり、最終的には手術で摘出し
た腫瘍の病理組織検査によって診断が確定します。
治療法は?
治療は手術療法が原則であり、悪性腫瘍の場合、その多くは術後に抗がん剤による化学
療法が必要となります。手術療法は術前の諸検査により良性腫瘍と診断された場合、腫瘍だ
けを摘出し、卵巣実質を温存する術式が選択される場合が多いです。また、最近では多くの
施設で体への負担が軽い腹腔鏡下手術が行われていますが、腫瘍の大きさや性状、腹部手
術の既往などによりその適応は制限されていますので、担当医とよくご相談下さい。境界悪
性腫瘍の場合、子宮、両側の卵巣・卵管、大網(胃と大腸の間の膜)を切除することが基本と
なります。さらに悪性腫瘍の場合、それに加えてリンパ節の摘出や腫瘍の拡がりによっては
腸管や腹膜などの合併切除が必要となることがあります。ただし、境界悪性腫瘍や悪性腫瘍
であっても、その種類や拡がり(進行期)によっては健常側の卵巣・卵管や子宮を温存するこ
とが可能な場合がありますので、以後の妊娠・出産を希望している方は、担当医とよくご相談
下さい。
卵巣悪性腫瘍はその種類と拡がり(進行期)により術後化学療法の必要性や抗がん剤の種
類などが決まってきます。卵巣悪性腫瘍の 90%以上は上皮性・間質性腫瘍(上皮性卵巣が
ん)に分類され、若年者を中心に発症する胚細胞腫瘍は数%程度、その他には胃がんや大
腸がんなどからの転移性腫瘍も見られます。上皮性卵巣がんの場合の術後化学療法はタキ
サン製剤(パクリタキセルなど)とプラチナ製剤(カルボプラチンなど)を用いることが一般的で、
ごく初期を除き、病気の進み具合(進行期)や顔つき(組織型)によって、3~4 週間隔で、3-8
コースの治療を行います。手術に引き続きこの化学療法を受けた場合の 5 年生存率は I 期
(卵巣に限局)で約 90%、II 期(骨盤内臓器に限局)で約 70%、それ以上に進行している
III・IV 期では約 30%です。最近はベバシズマブという新しい種類の薬剤(分子標的治療薬)
が、これまでの化学療法に併用できるようになり、生存率の向上が期待されています。悪性
胚細胞腫瘍の場合、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシンという 3 種の抗がん剤が用いら
れることが一般的です。この治療を行うことで悪性胚細胞腫瘍の予後は以前より飛躍的に改
善されましたが、腫瘍の進展が早いため、できるだけ早期に治療を開始する必要がありま
す。