静電容量センサーを用いた自動近接機能の 有用性に関する検討

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静電容量センサーを用いた自動近接機能の
有用性に関する検討
大阪大学医学部附属病院
○北本正和 藤埜浩一 神谷貴史
笹垣三千宏 中村幸夫 小水満
【目的】
静電容量センサーを用いて自動近接中のガントリ動作は複雑なシステムにより管理されている
ため,動きの予想は困難である.実際の臨床においても,患者ディテクタ間距離が接近しすぎる,
またSPECT収集中に患者と接触するということを経験する.このガントリ制御の特性を把握する
ことは医療安全上大変重要であると考える.よって,静電容量センサーを搭載したシンチレーショ
ンカメラにおいて,SPECT収集時の近接精度を検証することを目的とし,以下に示す検討を行っ
たので報告する. 【方法】
SPECT装置はPHILIPS社製Bright Viewを用いた.対象は近接精度測定用と体幹部静電ファン
トムの2種類を自作し,静電容量を与えるためファントムの周囲を静電体で覆い,微弱な電流を
流しながら測定を行った.まず,近接精度測定用ファントムを用い,ディテクタとファントム間
の実測距離とあらかじめ装置に入力した設定距離とを比較した.設定距離は50mmと10mmの2
種類で行い,実測距離はファントムに装備したシリンジを用いて測定し,同様の測定を5回行っ
た.次に,体幹部静電ファントムを用い,ガントリの回転方向が時計周り(CW)の場合と反時
計周り(CCW)の場合において回転軌道と,収集位置から次の収集位置までのガントリの移動
の軌跡を比較した.SPECT収集はCWで225°
,CCWで45°
から開始し,180°
収集を行なった.
【結果・考察】
設定距離50mmにおける実測距離は52±0.08mm,10mmでは12±0.04mmと,高い精度と再
現性が得られた.また,設定距離による依存性は確認されなかった.図1.に示すように,CW方
向ではファントム中心部において設定距離30mmより約30mm大きく離れて止まるという結果に
なった.その他の部分,そしてCCW方向に関しては設定距離とほぼ等しい近接距離を示した.
次に収集位置間での移動軌跡の比較を図2.に示す.CW方向では一度遠ざかってから回転と同時
に近接するという動きを示したのに対し,CCW方向では遠ざからずに回転運動を行った.
CWとCCWで近接距離や軌跡が変化したのは,収集開始位置がベッドより下の場合(225°
)
では,ベッドに対する安全回避を優先するような特別な衝突回避プログラムが働いたことが原因
では無いかと考えられる.
【結論】
静電容量センサーを用いた自動近接の精度は高く,設定距離やディテクタのフォーメーション,
回転方向を選択することで,患者毎,検査毎に最適な条件で収集を行えることが示唆された.
また,臨床において静電容量センサーを使用する場合,CWでは体幹部中心付近で設定距離より
離れて停止すると予想される.体幹部中心には鼻や顎などの突起物が存在するため,それらの突
起物が静電体と認識されなかった場合に,ディテクタと接触する危険性がある.以上のことから,
患者との接触事故を避けるためにはCWで検査を行う方が適切であることが示唆された.
図1. ガントリの回転方向による収集位置
図2. 収集位置間におけるガントリの移動軌跡
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