レジュメを開く(別ウィンドウで開きます)

民法予習編
第 13 回目
レジュメ
担保物権
① 留置権
② 先取特権
③ 質権
典型担保
④ 抵当権
⑤ 非典型担保
担保・・・お金を返してもらうための特別な手段、全般
① 留置権
Ex.時計の修理業には、修理代金を支払ってもらうまで、その時計を返さなくていい
権利、すなわち、留置権がある
・民法 295 条 1 項「他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、そ
の債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。
ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りではない。」
時計の修理業 = 「他人の物の占有者」
修理代を請求できる = 「その物に関して生じた債権を有する」
修理代を払っていない = 「その債権の弁済を受け」ていない
その時計を留置できる = 「その物を留置することができる」
←公平のため認められる
・民法 295 条 2 項「前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しな
い。
」
・民法 296 条「留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてそ
の権利を行使することができる。」
⇒留置権の不可分性
車のミラーの修理(1 万円)で、車全体(200 万円)が留置されるのは、
価値のついあいがとれないのでは?
↓
・民法 301 条「債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。」
⇒代担保の供与による消滅請求
(留置権を消滅させるためには、債権者の承諾が必要とされる)
・留置権者の義務
民法 298 条 1 項「留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなけれ
ばならない。
」
2 項「留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、
又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な
使用をすることは、この限りでない。」
3 項「留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消
滅を請求することができる。」
留置権が消滅する場合
① 代担保の供与
② 注意義務違反、無断使用等の場合
③ 占有の喪失
③ 占有の喪失について
民法 302 条「留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。
ただし、第 298 条第 2 項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目
的としたときは、この限りでない。」
、
⇒留置権は占有を失うことで消滅する
←留置することによって間接的に債務の弁済を促すための制度だから
・留置権を行使している場合でも、債権の消滅時効は進行する
民法 300 条「留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。
」
② 先取特権
債権者平等の原則
債務者A(財産 30 万円)
債権者X(債権 100 万円)
回収額 10 万円
債権者Y(債権 200 万円)
回収額 20 万円
債権者平等の原則
回収額 1 万円 くらい
債務者A(財産 30 万円)
債権者X(債権 100 万円)
回収額 10 万円 くらい
債権者Z(債権 10 万円)
債権者Y(債権 200 万円)
回収額 20 万円 くらい
ZがAに雇われていた場合
民法 306 条「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について
先取特権を有する。
二
雇用関係
」
⇒Zは先取特権をもつ
民法 303 条「先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産につ
いて、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」
⇒Zは、Aの財産 30 万円から、自分の債権 10 万円を優先的に回収できる
先取特権
① 一般先取特権(債務者の総財産に対して)
② 動産先取特権(債務者の特定の動産に対して)
③ 不動産先取特権(債務者の特定の不動産に対して)
① 一般先取特権(306 条)
一 共益の費用(1 号)
二 雇用関係(2 号)
三 葬式の費用(3 号)
四 日用品の供給(4 号)
⇒「今日こそ、日曜」
② 動産先取特権
Ex.民法 317 条「旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料及び
飲食料に関し、その旅館に在るその宿泊客の手荷物について
存在する。
」
③ 不動産先取特権(325 条)
不動産の保存(1 号)
不動産の工事(2 号)
不動産の売買(3 号)
・不動産先取特権が競合した場合
民法 331 条 1 項
「その優先権の順位は、第 325 条各号に掲げる順序に従う。
」
⇒ 保存→工事→売買
・先取特権は特別な効力が認められるため、他の人に対して公示が必要
⇒保存、工事、売買のすべての場合に登記が必要
・登記をした保存と工事
民法 339 条「前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立
って行使することができる。」
⇒登記した保存と工事についての不動産先取特権は、抵当権
よりも優先して債権回収することができる
・先取特権の効力
民法 304 条「先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が
受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。
」
⇒不動産そのものではなくて、その不動産が姿を変えた売却代金もしくは
火災保険金に対して先取特権を行使することができる
=先取特権の物上代位性
民法 304 条「~。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしな
ければならない。
」
⇒代金債権、保険金支払請求権などが払い渡される前に、これらの債権を
差し押さえなければならない
・動産先取特権について
民法 333 条「先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡し
た後は、その動産について行使することができない。」
⇒先取特権の追及力が引き渡された動産に対して及ばない
動産が債務者から第三者に売却された場合は?
⇒売却代金に対して物上代位することで先取特権者は優先的に債権を回
収できる
③ 質権
・民法 342 条「質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占
有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受
ける権利を有する。
」
・民法 344 条「質権の設定は、質権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を
生ずる。
」
⇒質権の効力発生のためには、質物を質権者に対して引き渡すことが必要
観念的な引渡しでは足りない
↓
民法 345 条「質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさ
せることができない」
・民法 347 条「質権者は、前条に規定する債権の弁済を受けるまでは、質物を留置するこ
とができる。
」
⇒質権の留置的効力
・もし預かった質物を、債務者に返却した場合は?
<不動産を質物とした場合>
不動産質権の対抗要件は登記なので、
登記のある限り、第三者に不動産質権を対抗することができる
<動産を質物とした場合>
民法 352 条「動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三
者に対抗することができない。
」
⇒質物を返却した場合、質物の占有という要件を満たさなくなるので、
第三者に対抗することができなくなる
・質権者が質物の占有を失ったが、その質物が、現在、債務者の手元にある場合は?
⇒質物の占有は対抗要件なのか、存続要件なのか
⇒対抗要件(352 条)
⇒質権自体は消滅しない
さらに、質権者は債務者に対して質物を引き渡すように請求できる
・強盗が質物を強奪した場合は?
⇒質物を占有していないので、質権を根拠として返還請求することはできない
⇒民法 353 条「動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによ
ってのみ、その質物を回復することができる。」
質物の対象
① 動産
(動産質)
② 不動産
(不動産質)
③ 財産権
(権利質)
・権利質
民法 366 条 1 項
「質権者は、
質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。
」
・不動産質についての特則
民法 356 条「不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収
益をすることができる。
」
民法 357 条「不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負う。
」
民法 358 条「不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない。」
使用収益の利益
(釣り合う)
管理費用負担の不利益
+
利息をもらわない不利益
・民法 359 条「前 3 条の規定は、設定行為に別段の定めがあるとき、~は、適用しない。」
<留置権>
使用収益し、また、
担保に供することもできない(298 条 2 項)
質権の場合
民法 348 条「質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、
転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じ
た損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。」
⇒責任転質
↕
承諾転質 =
質権者が債務者の承諾を得てから転質する
質権者にとって不可抗力で質物に損失が生じた場合、
質権者は責任を負わない
(レジュメここまで)