∼会計∼ Q&A「中小企業の役に立つキャッシュフロー計算書」(14) [質 問] キャッシュフロー計算書の表示対象を、決済手段の内の現金等に限る考え方と、全ての 決済手段とする考え方とがあるようです。全ての決済手段とする考え方によった場合、貸 借対照表、損益計算書とキャッシュフロー計算書の関係はどのようになるのでしょうか。 その関係ついて解説して下さい。 [回 答] (1) ご質問のように、キャッシュフロー計算書の表示対象を決済手段の現金等に限る考え 方と、全ての決済手段とする考え方とがあります。 現金等に限る考え方のキャッシュフロー計算書を分析型キャッシュフロー計算書とい い、全ての決済手段とする考え方のキャッシュフロー計算書を決済型キャッシュフロ ー計算書といいます。 キャッシュフロー計算書の作成基準等は現金等に限る考え方によっています。しかし、 決済手段の一部でしかない現金等に限った場合、表示不可能なこともあります。そこ で実務上は全ての決済手段による決済を表示の対象にしています。 では、決済型キャッシュフロー計算書における貸借対照表、損益計算書の関係を説明 しましょう。 (2) まず、発生額と決済額の関係を下記の図で説明しましょう。 具体的には発生額としては売上高を、その決済額としては回収額の営業収入を用います。 【図】発生と決済の関係図 ① 発生額 売上(本体)P/Lの表示範囲 仮受消費税(消費税) ③ 回収額(決済全てとするCFSの表示範囲) 現金等(現金等に限るCFSの表示範囲) 買掛金等(相殺等) 月末売 掛金 等 貸倒 損 失 月初 売 掛 金 等 ② 売掛金等・発生の修正額 (3)発生額と回収額の関係は上図のようになります。 図では会計処理をどのように表示しているかを見てみましょう。 1.① 発生額は本体部分を「売上」として損益計算書に表示します。消費税部分は「仮 受消費税」として会計処理した後、決算時に消費税の納税額を算出するため「仮受消 費税」は「仮払消費税」と相殺します。消費税部分も商取引上は発生していますが、 財務会計において表示することはありません。 「売上」や「仮受消費税」は発生時に用いる科目ですから発生科目と言えます。 2.③ 回収額は観念的には現金等とその他の決済手段とで構成されています。 決済型キャッシュフロー計算書の表示範囲は回収額のすべてです。回収額をキャッシ ュフロー計算書に表示します。回収に用いる科目には次のように様々なものがありま す。 ・現金・預金・受取手形・(相殺)買掛金・借入金・未払金・(振込費用)通信費・支 払手数料・ (準消費貸借による振替)貸付金・複合・土地・有価証券・給料手当(従業 員販売の回収)‥ 以上のように決済手段(この場合は回収手段)には多くの科目があります。 なお、分析型キャッシュフロー計算書の表示範囲は現金等の部分です。 3.② 売掛金等は月初または月末の残高です。 売掛金等には売掛金・受取手形・割引手形・前受金があります。売掛金等は貸借対照 表に表示します。しかし決済が終了すれば残高はゼロになりますから貸借対照表に表 示することはありません。 つまり、売掛金等は商取引の発生と決済の間を繋ぐ役割を持っている科目ですから、 決済過程科目と言えます。 4.なお、②の貸倒損失は発生額が毀損した場合に用いる科目です。損益計算書に表示 します。 貸倒損失は発生額が毀損した場合に用いる科目ですから、発生額修正科目と言えます。 (4)以上のように決済型のキャッシュフロー計算書を作成した場合には、発生額及びその 修正額は損益計算書に、決済額はキャッシュフロー計算書に、発生して未決済(売掛 金等)の額または決済して未発生(前受金等)の額は貸借対照表に表示されます。 (平成17年 10 月分 公認会計士・税理士 兼島政治)
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