患者の属性情報から性別、年齢別に検索・表示する小児基準範囲の設定

患者の属性情報から性別、年齢別に検索・表示する小児基準範囲の設定
○ 山内恵、又吉和哉
琉球大学医学部附属病院 検査部
【目的】
検査項目には各々に基準範囲を設定しているが、その大部分が成人を対象としたものであり、小児科領域では
それらを検査の目安として利用できないことが多い。そのため、医師は小児の臨床検査に関する文献を参照して
いるが、経験と勘により検査値を判定することも少なくない。しかし、文献等に掲載されている小児の基準範囲
は、国内標準法が十分に確立されていない時期に設定されたため検査方法が異なり、そのまま利用できない項目
もある。小児の検体を収集し、個々の施設に適した小児基準範囲を設定するのが最も理想的であるが、各年齢区
分で基準範囲の算定に必要な多くの検体を確保することは極めて困難である。
そこで、今回我々は、文献に掲載されている基準範囲を基に当院の検査方法に適した小児の基準範囲を算出・
設定し、病院医療情報システム端末へ表示する試みを行ったので報告する。
【対象および方法】
生化学・免疫血清学的検査 47 項目および血液学的検査 10 項目を設定対象とした。
生化学・免疫血清学的検査
(1)「日本人小児の臨床検査基準値」
(小児基準値研究班編)を引用し、測定方法が同じ検査項目は、掲載されて
いる基準範囲をそのまま引用した。
(2) 測定方法が異なる検査項目については、
「日本人小児の臨床検査基準値」にある成人の基準値を院内で採用し
ている成人の基準値との比で変換した。
(3) 病院情報システムの制限年齢区分である 9 区分以内に収めるために、以下のような規準を定めた。
_上限と下限の基準値が平均値の±5%以内に収まる年齢群を同一区分にまとめ、その平均値を院内で採用する基
準値とした。
_平均値が±5%以内で区分しても 9 区分を超える検査項目については、±10%以内の年齢群を同一区分としてま
とめその平均値を院内で採用する基準値とした。
血液学的検査
「そこが知りたい小児臨床検査のポイント」
(小児内科・小児外科編集委員会編)を引用し、 新生児について
は日別、週別の基準値を平均し、その基準値を院内で採用する 1 ヶ
月未満の年齢群の基準値とした。
【結果および考察】
生化学検査項目や免疫血清学的検査項目においては、病院医療情報システムのマスター上で設定できる年齢区
分の数に制限があるため、引用文献に記載されている 1 歳未満を1カ月ごとの区分、1 歳以上 18 歳未満を 1 歳
ごとの区分といった細かい区分はできなかった。そのため、我々は各階層で隣接する年齢群が一定の評価規準を
充たした場合に同一区分としてまとめ、その平均値を院内で採用する基準値とし、対象としたすべての検査項目
で 9 区分以下に収まるように設定した。血液学的検査項目については、1ヶ月未満の区分をそれらの平均値でま
とめ、その他の月別の区分、年齢区分は引用文献に掲載されている基準範囲をそのまま採用した。性差が認めら
れる検査項目については男女別での設定を行った。これらを病院医療情報システム端末の「検査結果参照画面」
に展開させ、検査項目を選択することで、該当する患者の属性情報から年齢区分および性別の条件に一致する基
準範囲を検索・表示することを可能にした。
自施設に適切な小児基準範囲を設定することで、小児科領域においても病院医療情報システムの端末から個々
の患者の性別、年齢別の基準範囲を即時に参照し、迅速かつ適正な検査値の判定を行えるものと期待できる。今
回設定した基準範囲は検査部ホームページにも掲載した。
連絡先:098-895-3331(内線 3337)