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國學院高等学校「外苑春秋」第4号 2014 年
分掌報告
修学旅行の下見を通じて
倉敷 栄治
EIJI KURASHIKI
修学旅行の下見を通じて
平成 25 年7月 21 日より7月 24 日にかけ、本校の修学旅行候補地となっている北海道での下
見を実施した。
羽田空港を8:00 に出発すると新千歳空港には約1時間 30 分ほどで到着する。3泊4日の
行程で道東から道央へ様々な見学地の下見を実施したが、この行程は少々強行であった。しか
し疲れを感じずに下見を実施できたのは、日ごろの喧騒からの解放感と、大自然の迫力に感動
したからである。この数日間、特に北海道の大自然に何度感動させられたことだろう。
今回は3泊4日の行程で訪れた見学地のうち、特に印象深かったものを取り上げ、紹介した
いと思う。
7 月 21 日
7 月 22 日
7 月 23 日
7 月 24 日
羽田空港 ⇒ 新千歳空港 ⇒ 千歳鮭のふるさと館 ⇒
白老ポロトコタン ⇒ 有珠山・昭和新山・洞爺湖 ⇒ ルスツリゾート
ルスツリゾート=自然体験(ラフティング・カヌー・乗馬・フィッシング・
オリエンテーリング) ⇒ 小樽 ⇒ 札幌 ANA ホテル
札幌 ANA ホテル ⇒ 伝統美術工芸村 ⇒ フラノーブルマツオ ⇒
美瑛観光(レンタサイクル) ⇒ 新富良野プリンスホテル
新富良野プリンスホテル ⇒ ファーム富田 ⇒ 旭山動物園 ⇒
ノーザンホースパーク ⇒ 新千歳空港 ⇒ 羽田空港
くらしきえいじ:地歴公民教諭
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◇ 千歳鮭のふるさと館 ◇
この施設は、支笏湖から湧き出る千歳川沿いに建てられたもので鮭や淡水魚の生態を学ぶこ
とができる水族館である。秋になれば屋外では千歳川にかかる橋から、鮭の遡上やインディア
ン水車による鮭の捕獲の様子を見ることができる。このインディアン水車とは、写真のように
回転した水車に鮭が入り、吸い込まれた鮭が回転で持ち上げられ、次から次へと自動的に水揚
げされる仕組みになっているものである。
北海道には、鮭の遡上が見られる川がいくつかあるので、北海道を訪れた際には鮭を市場で
買わずに川で調達できるのかと思いきや北海道では鮭を捕るために川に釣り針を垂らすと検挙
されるそうである。
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◇ 白老ポロトコタン ◇
この施設は、アイヌの文化遺産を保存・公開するため、1965 年に白老市街地にあったアイ
ヌ集落をポロト湖畔に移設・復元したものである。
「アイヌ」とはもともと「人間」を意味するアイヌ語で、独自の言語と文化をもつ先住民族
である。北海道には変わった地名が多いとは思っていたが、それはアイヌ語であることがわか
り納得した。この施設名のポロトコタンの意味は、大きな(ポロ)・湖(ト)・村(コタン)で
ある。以下のような地名はすべてアイヌ語が由来であり、それぞれ意味があるということがわ
かった。
この施設では、アイヌが生活に利用した住居が展示されている。また古式舞踊などを見学す
ることもできる。食堂ではアイヌの食生活を体験することもでき、独特の食事を味わうことが
できた。
地名
アイヌ語
意味
サッ・ポロ・ペッ
「乾く」
・
「大きな」
・
「川」
ヌプㇽ・ペッ
「濁った」
・
「川」
室蘭(ムロラン)
モ・ルラン
「小さい」
・
「坂」
留寿都(ルスツ)
ル・スッ
「道の」
・
「ふもと」
洞爺湖(トウヤコ)
トーヤ
「沼・岸」
支笏湖(シコツコ)
シ・コッ
「大きい」
「谷間」
札幌(サッポロ)
登別(ノボリベツ)
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◇ 有珠山・昭和新山 ◇
有珠山は 20 世紀中に4回も噴火を繰り返した世界でも大変珍しい活火山である。2回目の
噴火を起こした 1943 年には地盤が大きく隆起し、これが昭和新山とよばれるまで巨大なもの
となった。約2年余りの短期間で現在の大きさに成長したが、このような形で巨大化するのは
とても希である。水蒸気を噴き上げている様子から現在も活火山ということがわかる。
この有珠山には洞爺湖を一望できる展望台があり、ロープウェイに乗車すれば、6分程で展
望台に到着する。この展望台から眺める洞爺湖は絶景である。
この洞爺湖は約 11 万年前に誕生したとされており、一方で有珠山は1~2万年前あたりに
誕生したと考えられている。
こういった歴史からもわかるように有珠山や洞爺湖周辺は地球の動きを感じることができる
非常に貴重な地域である。周辺は世界的に貴重な地質的遺産を活かしたジオパークとなってい
る。
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◇ ルスツリゾート(自然体験)◇
修学旅行での宿泊候補地であるルスツリゾートには多くの施設が併設されている。ここには
遊園地のようなアトラクションやゴルフ場、スキー場などがある。今回は、夜に花火が打ち上
げられ、とても楽しく宿泊することができた。施設の周辺ではラフティングやカヌー、フィッ
シング、乗馬、オリエンテーリングなど大自然のなかで様々なアクティビティを体験できる。
この下見では様々なアクティビティメニューの視察・体験を行ったが、その中でも私は中高
生に人気のあるラフティングを 90 分程、体験させてもらった。
激流下りのようなものを想像して前日から落ち着きを失っていたが、これはスリル満載とい
うようなものではなく、小学生、それも低学年の生徒と一緒に体験できるほど安全なもので、
前日から極度に緊張していた自分がとても恥ずかしい。ただ、流れが急になる場所はいくつか
あり、またゴムボートが岩に当たるような時には結構な衝撃がある。
このラフティングは多くの生徒が修学旅行での印象で一番強く残っているそうである。下見
をした私もある程度の年齢であるが、十分にドキドキすることができ、本校の生徒も十分楽し
んでくれるのではないかと考えている。
印象に残ったものといえば、ラフティングで川を下っているときの景色である。これは東京
では絶対に味わえないものであった。空がとても広く、目の前に広がる景色の雄大さ、羊蹄山
の美しさは例えようがない。流れる川も透き通っており、すべての面において東京では味わえ
ないものである。
ラフティング中はデジタルカメラの持ち込みが禁止だったので川の風景は掲載できないが、
とても美しい光景であった。
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◇ 美瑛観光 ◇
美瑛の丘ではレンタサイクルを利用して雄大な景色を満喫することができた。周りはほぼす
べてが畑である。我々にとっては観光地であるが、農家の人たちにとっては大切な仕事場であ
るため、サイクリングではいくつかのルールが決められていた。農作業車両が最優先でトラク
ターなどを無理に追い越すことや土の部分に足を踏み入れることは禁止されている。
ルールに従って、起伏のある美しい景観を創り出している美瑛の丘を結構なスピードで風を
切れば、素晴らしく心地良い気分になれた。しかし、私の認識が甘く、北海道とはいえ、この
時期の気温は東京とあまり変わらずにとても暑かった。
自転車を漕いでも漕いでもなかなか景色が変わらない。汗が吹き出し、気分も少し悪くなっ
てきた。学生時代の走り込みを思い出してとてもつらい下見であった。修学旅行でサイクリン
グを盛り込む際は十分な水分補給を促し、生徒の体調管理には十分な配慮をしたい。
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◇ ファーム富田 ◇
戦後の北海道では、富良野一帯でラベンダー栽培が始まった。その後、香りが素晴らしいこ
ともあり、香料用のラベンダー栽培が盛んになっていく。富田忠雄氏もラベンダー栽培を始
め、経営を続けていた。しかし海外より低価格のラベンダーの輸入が増加し、国内のラベンダ
ー農家に冷たい風が吹き始める。経営をあきらめる農家が後を絶たず、家族を養うために富田
氏もラベンダー栽培を諦めた。丹精込めて栽培したラベンダーをトラクターで潰していた時、
その潰される音が泣き声に聞こえ、ラベンダーを潰すことがそれ以上できなくなったそうであ
る。家族の理解もありその後もラベンダー栽培を続けていたところ、富田氏のラベンダー畑の
写真が JR(国鉄)のカレンダーに採用された。この後、多くの人々が美しいラベンダーをひ
と目見ようと富田氏のもとを訪れるようになり、現在に至っている。
ファーム富田を訪れた7月下旬は十分にラベンダーを観察することができ、美的センスのあ
まりない私でも美しさを感じることができた。鮮やかな紫色の花畑は見事なものであった。
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◇ 旭山動物園 ◇
この施設は動物たちの特性を強く活かした動物園で、動物たちの様子がいきいきとして見え
た。普段は見られない水中を泳ぐ姿が印象的であった。動物たちの近くには、見学者が観察す
るための窓が設けられており、より間近で動物たちの表情や生態を確認することができる。
旭山動物園には様々なところに手書きの説明が掲示されており、動物園の規模からもアット
ホームで温かみを感じる施設となっている。
当日は大変暑い日で、多くの動物たちの動きが活発とはいえなかったが、非常に多くの観光
客で賑わっていた。
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