レポート

Report
はじめに
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レポート #
本稿は、平成26年度北海道開発協会助成研究として
実施した「北海道における先住民文化遺産観光の展開
(一財)北海道開発協会平成26年度研究助成サマリー
可能性に関する比較研究」の成果報告を、小論として
再構成したものである。本研究は、西洋的な文化遺産
先住民文化遺産を
活かした観光展開を
目指すには
∼北海道と沖縄の事例から考える∼
概念、あるいは一般に想起される日本文化とも異なる
アイヌ文化遺産を文化交流の手段として適切に観光に
組み込み、生業に結びつく先住民文化遺産観光のあり
方を検討することを目的とした。具体的には、アイヌ
と同様に日本の趨勢と異なる歴史と文化を持ち、かつ、
観光を主幹産業として重視する沖縄県の事例を参照事
例とし、さらに道内でアイヌ文化遺産の活用を積極的
に試みている平取・知床・旭川の各事例を検討するこ
とを通じて、文化遺産ガイドのあり方、文化遺産の資
源化、文化遺産の保護と活用の均衡のはかり方、を考
察した。
1 北海道観光とアイヌ文化振興
昨今、アイヌ語の挨拶「イランカラプテ(こんにち
はの意味)」
が、北海道の各所で散見されるようになっ
た。新千歳空港のセンタープラザでは「イランカラプ
テ」の垂れ幕が旅行者たちを出迎え、同空港発着便の
機内誌や機内放送でも「イランカラプテ」が目や耳に
髙﨑 優子 (たかさき ゆうこ)
飛び込んでくる。これは、2013年度から2015年度の 3
北海道大学大学院文学研究科博士後期課程
年間を重点期間とし、民間企業や行政機関、学術機関
専門分野は環境社会学、資源管理論。自然資源・文化資源と地域社会の関係
などの連携により、
「イランカラプ テ」を北海道のお
について各地でフィールドワークを通じた研究を行う。2010年より北海道大学ア
もてなしのキーワードとして普及させるキャンペーン
イヌ・先住民研究センターの先住民文化遺産ツーリズムワーキンググループの
研究メンバーをつとめる。
の一環として実施されている※1。
日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自
の文化を発展させてきたアイヌの人々は、近世・近代
の日本の同化政策によって、文化、生業および共同体
に深刻な打撃を受けた。長らくアイヌの人々の窮状は
改善されてこなかったが、1997年に「アイヌ文化の振
興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発
に関する法律」が成立したことで、同法に基づいたア
イヌ文化の振興が行われるようになった。さらに2008
岡田 真弓 (おかだ まゆみ)
年の衆参両院による「アイヌ民族を先住民族とするこ
北海道大学創成研究機構特任助教
研究テーマはパブリック考古学、文化遺産研究。北海道大学アイヌ・先住民研
究センター博士研究員を経て、2015年より現職。文化遺産のなかでも特に考古
学に関するモノ・コトが、現代社会でどのように活用されているのかに着目し、
フィールドワークを通じた研究を行っている。北海道大学アイヌ・先住民研究
センターの先住民文化遺産ツーリズムワーキンググループに参加。
※1 「イランカラ プテ」キャンペーンの概要(2015年 2 月25日アクセス)
:
http://www.irankarapte.com/information/index.html
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■ 先住民文化遺産を活かした観光展開を目指すには ■
とを求める決議」をもって、日本政府は総合的なアイ
る調査・研究成果の共有が行われたりするなど、文化
ヌ施策の確立に取り組む考えを示した。アイヌ文化を
財行政と登録ガイドとの間に良好な協力関係が築かれ
多角的に伝承・共有できる施設等を備えた「民族共生
ている。このような行政協力による教育を受けた専門
の象徴となる空間」の整備(2020年一般公開予定)が
ガイドの存在は、ガイドの質を担保することに繋がっ
決定し、アイヌ文化の振興と活用の試みが産学官民を
ている。
挙げて進められている。
さらに、ガイドによる継続的な自主勉強会、他市町
このような追い風を受け、これまで「大自然」や「豊
村の視察研修、文化財巡検なども活発である。構成資
かな食」をその主要コンテンツとしていた北海道の観
産の美化清掃、ブログの開設や講演などの文化財PR
光シーンで、個性豊かなアイヌ文化の積極的活用が期
活動、文化財関連の会誌の発行や周辺集落景観の整備
待されるようになっている。また、観光におけるアイ
などの活動も行われ、ガイド団体が遺産のサポーター
ヌ文化の活用は、アイヌの文化や歴史に対する広い理
的役割を果たしていることも明らかになった。単なる
解に向けた重要な手段でもある。
観光ガイドではない、このような市民による草の根的
一方で、アイヌ文化の活用を生業として確立させる
活動は、活用と保全の均衡を考える上でも示唆に富む
には課題も多く、また、行政の支援もいまだ十分とは
取り組みである。
いえない。さらには、沖縄を含む世界各地の先住民文
表 1 世界遺産における文化遺産ガイドシステム
化でみられるように、アイヌの文化遺産には独特な精
自治体
神文化によって意味が付与された景観や口承伝承・舞
踏といった無形文化遺産が多く含まれる。つまり、ア
那覇市
イヌの文化遺産を観光に活かすということは、単なる
モノやコトを知るだけでは十分ではなく、そこに込め
南城市
られた「意味」の伝達が強く求められるのである。こ
うるま市
のような「見えにくい」遺産を可視化するにはどのよ
うなしかけが必要だろうか。また、行政の施策はどの
今帰仁村
ようにあるべきだろうか。本小論では、紙幅の制約は
あるものの、以下、沖縄での取り組みや北海道での事
中城村
例を通して考えていきたい。
ガイド育成講座主催
ガイド団体
世界遺産構成資産
ガイド料金
那覇市文化財課
案内親方
首里城跡など
応相談
南城市観光協会
アマミキヨ浪漫の会
斎場御嶽
10名まで2,000円
うるま市教育委員会
うるま市史跡ガイドの会
勝連城跡
2名まで1,000円
今帰仁村教育委員会
今帰仁グスクを学ぶ会
今帰仁城跡
無料(城跡外は有料)
中城村教育委員会
グスクの会
中城城跡
無料 登録
ガイド
数
80名
54名
53名
25名
53名
⑵ ガイドの視点が掘り起こす遺産
2 沖縄における取り組み
次にツアー事例をみていきたい。ここでは都市型観
⑴ 活躍する文化遺産ガイドの背景
光である「那覇まちま∼い」の事例をあげる。
「見えにくい遺産」を可視化するためのしかけとし
「那覇まちま∼い」は、一般社団法人那覇市観光協
て、まずは沖縄における文化遺産ガイドに注目したい。
会が企画・実施する観光事業である。観光まちづくり
多様な取り組みが行われているが、ここでは世界遺産
と滞在型観光の普及に取り組む同事業は2010年から始
※2
を軸に整理する 。
ま り、 ツ ア ー 参 加 者 数 は2011年 度 の 約6,000名 か ら
表1から分かるように、ガイド養成講座の主催は、
2013年度には約9,500名(うち修学旅行 8 校900名)へ
各自治体である。また、那覇市では、文化財課が講座
と上昇している。地元客の参加やリピーターも多く、
修了後もフォローアップのために年 5 回程度の文化講
常設コースは年20本以上、その他季節ごとにさまざま
座を開催し、今帰仁村では、村歴史文化センターによ
なツアーが実施されている。
※2 2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」が世界文化遺産に登録さ
れた。なお、ここでは整理のために世界遺産を軸としたが、各ガイド団体は地
域内の他の遺産のガイドも行う。
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Report #01
従来、那覇における文化遺産ツアーは、著名スポッ
指摘する。しかし、観光従事者側が御嶽はあくまで聖
トを回りながら歴史ガイドを受けるスタイルが一般的
域であり観光施設ではないという「理屈」を持ってい
であった。しかし、ガイドの石井周氏は、歴史を全面
ることが重要であり、その理屈を確固として保持する
に押し出すとかえって避けられることもある、と指摘
ことがそれら設備不十分に対するクレームへの対抗論
する。
「まちま∼い」では遺産の新旧や正統性に拘泥
理となる、と述べている。近年は種々の努力が成果を
せず、ガイドの独創的な視点を重視したツアー開発を
結び始め、来訪客の意識が向上しつつあるが、このよ
行っている。さらに、短時間、低料金という設定が、
うな「理屈」を関係各者が共有することは、可視化を
これまでにない需要を掘り起こすことにつながった。
めぐって生じる課題の解決へ向けた重要な礎石となる
ただし低廉な価格設定が可能なのは、本事業が市の委
だろう。
託事業であることによる。
一見すると近代化のなかで個性が埋没しそうな市街
3 北海道における取り組み
地のなかに、ガイドがテーマを投じることによって沖
⑴ 多様なアイヌ文化の可視化へむけて
縄独自の風景を立ち上がらせる「まちま∼い」の手法
ここからは北海道における取り組みをみていく。現
は、都市型観光における文化遺産ツアーの新たな可能
在、行政主導による観光開発が行われているのが、沙
性を感じさせるものであるといえるだろう。
流川流域に位置する平取町である。沙流川流域には古
くからアイヌのコタンやイオル※4があり、その伝統が
表 2 「まちま∼い」コース例
時間
料金
さまざまな形で受け継がれている。2007年には道内で
探して歩こう沖縄の魔除け
90分
1,000円/1人
初めて重要文化的景観「アイヌの伝統と近代開拓によ
首里・龍潭通り路地裏ウォッチング
90分
1,000円/1人
る沙流川流域の文化的景観」に選定され、2013年には
命どぅ宝 ∼首里の戦跡をたどる∼
75分
1,000円/1人
「二風谷イタ(盆)」と「二風谷アットゥシ(織物)
」が、
民話と水とお豆腐と繁多川めぐり
120分
1,500円/1人
コース名
やはり道内で初めて伝統的工芸品※5に指定された。
町は2010年に策定した「平取町アイヌ文化振興基本
⑶ 遺産の可視化で生じる課題
計画」に基づき、アイヌ文化を活かし交流を促進する
しかし一方で、遺産を可視化することによって生じ
新たな産業として、生業に結びつく観光開発を目指し
る課題もある。いわゆる「聖域」と呼ばれる、土地の
ている。先の文化的景観事業でも、景観の活用と普及
人々の精神文化を基盤とした空間の観光地化の問題で
の一環として観光開発が試みられている。その実践と
※3
ある。顕著な例として、沖縄本島南部にある斎場御嶽
して、これまで重要文化的景観ガイド(地域ホスト)
の事例をあげよう。
の養成や、札幌駅発の無料バス運行によるモニターツ
世界遺産登録後、増加の一途をたどる来訪者数に比
アーの実施を重ねており、ツアーは高い集客率となっ
例して、御嶽内では制限区域への侵入や香炉の踏み付
ている。
けなどの禁忌行為が多発し、また植生の劣化や神聖な
2020年には、白老町に民族共生の象徴空間が完成予
雰囲気の減退なども懸念されている。これに対し、御
定である。町アイヌ施策推進課課長の貝澤一成氏およ
嶽を管理する南城市では、事前レクチャー映像の視聴
び上記ツアーを実施する株式会社ノーザンクロスの柳
義務化や休息日の設定などの対策を講じ、さらにガイ
秀雄氏は、白老を入り口としてアイヌ文化に興味を抱
ド団体による見守り制度も行われている。
いた人々に、より多様なアイヌ文化を知ってもらうた
市観光協会事務局長の宮城光也氏は、斎場御嶽は観
め、景観や工芸などに代表される平取独自のアイヌ文
光施設としてはさまざまな面で設備不十分である、と
化の奥深さを観光で表現する必要がある、と述べる。
※3 御嶽とは沖縄において祭 祀 を執り行う空間の総称であり、祭祀共同
体によって支えられている聖域のことである。
※4 コタンは集落を指し、イオルは一般的に狩り場といわれる。
※5 経済産業省が、
「 伝統的工芸品産業の振興に関する法律」により指定。
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■ 先住民文化遺産を活かした観光展開を目指すには ■
両氏の指摘にあるように、アイヌ文化は一様ではなく、
一方で氏は、チャシやチノミシリ※6など、聖域の安
土地ごとに培われた多様性が存在する。平取では熱心
易な可視化については戸惑いを述べる。氏がチャシな
な行政の取り組みによって、ある程度遺産の可視化は
どを案内するのはアイヌ文化へのより深い理解を促す
進みつつある。今後、それをどのように人々に伝える
ためであり、単に見せるためではない。知床では現在
か、地域ガイドの充実が急がれるところであろう。
聖地を含めたさまざまな遺跡の発掘が行われており、
⑵ 個人ガイドの試み
それらは今後観光資源として発展する可能性がある。
平取のように行政が積極的役割を担う場合とは異な
しかしアイヌ民族にとって、それらは時に自身の先祖
り、知床では個人ガイドによる観光展開が試みられて
の生の軌跡そのものである。戸惑いや懸念の解消のた
いる。知床といえば世界自然遺産にも登録された豊か
めには、可視化のプロセスにおいて、何らかの形で伝
な自然環境が印象的だが、半島には多くのアイヌ語地
承当事者が介在することが望まれるだろう。
名が残され、また縄文文化期からアイヌ文化期までの
深刻な問題として、ガイドの後継者問題がある。早
遺跡も確認されている。
坂氏によれば、アイヌツアーガイドはアイヌ文化の知
斜里町でエコツアーガイド兼アイヌ民族ツアーガイ
識だけでなく、アイヌ工芸を作る技術、アイヌ楽器の
ドをしている早坂雅賀氏は、「知床アイヌツアー」と
演奏技術を備えていることが望ましい。さらに通年ツ
して、アイヌ遺跡めぐり、先住民と歩く知床の自然、
アー実施のためには、知床定住の必要がある。これら
木彫り・刺繍体験などのコースを展開する。早坂氏が
高いハードルのために、現在、早坂氏の後継者は育っ
NPO法人知床ナチュラリスト協会SHINRAの専属ガ
ていない。しかし氏には、知床に芽吹いたツアーの意
イド時代に、同協会代表理事の藤崎達也氏(当時)の
義をこのまま失わせたくないという思いがある。氏は
発案で、アイヌ文化をテーマとしたツアーづくりに着
観光地知床でアイヌツアーを続ける意義について、
「ア
手した。当時、前例がなかったためにゼロからの作成
イヌがいるということが一人でも多くの人に伝わる」
であったといい、現在でも氏の展開するツアーがほぼ
ことだと述べているが、ガイドの世代間継承について
唯一の通年型アイヌ文化ツアーとなっている。
は個人の奮闘では限りもあろう。SHINRAと早坂氏が
その早坂氏は、来訪客のなかにはアイヌに対して消
先鞭をつけたこの試みは個人的意義にとどまるもので
極的なイメージを持つ人たちがいたり、アイヌに対す
はなく、継続性を支援するしくみの創出を社会の側が
る認知度が低いために、アイヌ文化ツアーのみでは十
考える段階にあるだろう。
分な収益があげられない、と指摘する。早坂氏はエコ
⑶ 文化行政と観光行政の連携へ
ツアーガイドとしても熟練しており、ニーズの多くは
北海道第二の都市旭川市は、国の政策が推進される
そちらにある。機を見てアイヌ文化の知識を織り込み、
以前より、市独自のアイヌ文化振興事業を展開してき
また客層に合わせて説明の軽重を変えるという早坂氏
た。活発なアイヌ文化普及事業を支えているのは、旭
は、エコツアーを入り口としたアイヌ文化の緩やかな
川チカップニアイヌ民族文化保存会、川村カ子トアイ
伝播を試みている。
ヌ記念館、(公社)北海道アイヌ協会旭川支部、旭川
アイヌ協議会といった市在住のアイヌの人びとであ
り、市博物館との連携も盛んである。
ただし、こうした事業活動の蓄積は観光の主要コン
テンツにはなっていない。市博物館学芸員の友田哲弘
氏は、アイヌ文化のみをコンテンツとしても十分な収
益が得られず、経済的な後ろ盾がない状況ではアイヌ
知床アイヌツアーを行う早坂氏(岡田撮影)
※6 チャシは砦のほか、談判や祭祀を行う場としても使われていたと考
えられている。チノミシ リ とは、神の声を聞いたり、神に祈りをささげる
場所のことで、その場所はコミュニティ内でのみ共有される。
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■ 先住民文化遺産を活かした観光展開を目指すには ■
文化の保全と活用に専従する人材の確保も難しい、と
態の改善が求められよう。
指摘する。また、市経済観光部振興課の富田悠介氏は、
文化遺産の資源化については、既にさまざまな取り
旭川観光では旭山動物園とガーデニング巡りが浸透
組みが行われている。しかし北海道の場合、従来の典
し、他のコンテンツへの需要が少ないこと、また、ア
型的な観光コンテンツである「自然」「食」といった
イヌ文化の認知度が低いために来訪者からの問い合わ
イメージが強い、あるいはアイヌ文化そのものへの認
せも少ない点を指摘する。現在では、教育旅行以外で
知度が低いなどの理由から、アイヌ文化をテーマとし
の活用頻度はわずかである。
た観光だけで生計を立てていくのは容易ではないこと
ほかに、文化振興事業の蓄積が観光に活かされにく
が明らかになった。また、アイヌ文化振興と観光振興
い要因のひとつとして、市のアイヌ文化振興を担って
が別個に推進されているため、遺産の掘り起こしは進
きたのが、行政として観光促進を図る経済観光部とは
んでいても資源化に結びつかない例もあった。さらに、
別組織の教育委員会社会教育部であることが挙げられ
保護と活用の均衡のはかり方については、特に聖域の
る。社会教育部の事業の対象は基本的に市民であるた
可視化について検討すべき課題は多く、ときにあえて
め、学校教育や市民向けイベントは充実している。ア
不可視化を選ぶ必要性も示唆された。また、沖縄では
イヌ文化の伝承を目的の一つとした「こたんまつり」
ガイド団体が遺産サポーター的役割を果たしていた
など、一部のイベントでは文化行政と観光行政との連
が、先住民文化遺産ガイドの数が少なく、単体の生業
携が図られているが、内部の充実さをより効果的に外
としても成立しにくいという状況下にある北海道にお
部に発信するためには、両行政のより強い連携が待た
いては、多様な人びとを取り込んだ包括的な遺産サ
れるところである。
ポート活動の中にガイド活動を位置づけることも考え
られよう。これらの課題解決は容易ではなく、持続的
4 適切な文化交流の手段の構築のために
かつ真摯な取り組みが必要となる。今後も継続的な調
さて、以上を踏まえ、適切な文化交流の手段の構築
査と考察を自身に課したい。
のために、そして生業へと結びつけるために、先住民
最後に、今後アイヌ文化を活かした観光展開に際し
文化観光はどうあるべきだろうか。
て留意すべきと思われる点について述べたい。アイヌ
まず、文化遺産ガイドについてであるが、自らの言
文化の活用は文化保全と理解促進のための重要な手段
葉で遺産の価値を語るガイドの存在は、来訪客の文化
であり、単なる産業活動にとどまらない。したがって、
遺産体験を豊かにし、より深い理解をうながす。また、
多様な行為者間の調整役は誰が担うのか、観光から得
ガイドが同伴する場合、種々の禁忌事項なども遵守さ
た収益は誰が得るのかという点は常に意識し、アイヌ
れやすい。したがって適切な文化遺産観光を推進する
の主体性や協働という姿勢を忘れてはならない。行政
ためには、文化遺産ガイドの育成は急務である。
が横断的に連携してアイヌの主体性を支えていくこ
沖縄における文化遺産ガイドの充実の背景には、行
と、市民が幅広く遺産に関わり協働できる場の創出を
政の積極的支援があり、また豊富な市民向け歴史文化
図ること、以上の役割を道に強く期待したい。
講座等が自主学習の機会を支えている。日本の趨勢と
は異なる北海道と沖縄の歴史や文化は、全国共通の学
校教育課程ではほとんど知り得ないため、これら行政
による学習機会の積極的提供は、とりわけ重要である。
北海道のガイド育成については平取の例はあるもの
の、早坂氏のように個人的努力による場合も多く、事
謝辞:調査にご協力いただきました北海道並びに沖縄の皆様方に、
心より厚く御礼申し上げます。
参考文献
・岡田・髙﨑「北海道における先住民文化遺産観光の展開可能性に
関する比較研究」
『北海道開発協会平成26年度助成研究概要・詳細』
(一財)北海道開発協会ホームページ掲載予定。
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