ノロウィルスの消毒法

最近、ノロウィルスの脅威的な感染がニュースでも取り上げられていますが、インフルエンザウィルスなどとどう
違うのでしょうか?以前にも「ノロとロタの違い」で取り上げましたが、より詳しい対策法をご紹介いたします。
♣ノロウィルスの構造の特徴♣
まずウィルスとは、自分のみで増殖できないため、生きた細胞に入り込み(寄生)増殖していく事が特徴です
(他の生物でも同様の特徴を示すものはあります)
。
また、酵母やカビは 5μm(マイクロメートル、1mm=1000μm)以上、細菌は 1~5μmの大きさに対し、
ウィルスは 0.3μm以下であり普通の顕微鏡(光学顕微鏡)では見えないほど小さく、細菌除去フィルターにも
引っかからない大きさです。そのため、細菌より空気中に舞うと浮遊し続けやすく、手などのしわに入り込み
除去しにくくなります。
そして、構造は下図のようになっていて、エンベロープ(外側の殻)が有るものと無いものがあり、
ノロウィルスはエンベロープが無い分類になります。
エンベロープ有
インフルエンザウィルス、麻疹ウィルス、日本脳炎ウィルス
エンベロープ無
ノロウィルス、ロタウィルス
など
など
♣ノロウィルスに有効な消毒♣
一般細菌やインフルエンザウィルスなどにはアルコール消毒が有効ですが、脂質で出来ているエンベロープを持たないノロ
ウィルスはアルコール抵抗性が高い、というデータが報告されています。そのため、感染者の使用した食器や嘔吐物の処理
には 85℃の熱・1000ppm*1 次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が有効とされています。
(*1 ppm:100 万分の 1。1%=100 分の 1 なので、1ppm=0.0001%、1000ppm=0.1%)
しかし、手指に対しては、高熱、次亜塩素酸ナトリウムは使用できませんし、次亜塩素酸ナトリウムは布製品・金属製品に
も使用は注意が必要です。80%エタノール含有速乾性手指消毒薬は、手指に付着しているノロウィルスを 10 分の 1 程度に
不活性化できるという報告もされているため、手指には、入念な手洗い*2 により物理的にウィルスを出来る限り落とし、
更にアルコールの速乾性手指消毒薬を用いて感染しにくくする事が大事です。
(*2 ひかりちゃん学級「その他」の『手洗いの仕方』をよく参照してください。指先・爪、しわ、指の間、親指の周り、手首までしっかり!
最後は流水でしっかり15秒以上すすいでください)
◆消毒液作成方法◆
感染者が発生したら、こまめに消毒出来るように、プラスチックスプレー容器に消毒液を予め作っておくと良いです。
(例)5%次亜塩素酸ナトリウムから 200ppm(0.02%)次亜塩素酸ナトリウム1L 作る場合
⇒5%の次亜塩素酸ナトリウムを 4ml(キャップ 1 杯)取り1L の水に入れる
拭き消毒用
汚物消毒用
✿次亜塩素酸ナトリウムの注意✿
・作業時はメガネ、ゴム手袋を着用する。
・金属は腐食されるので使用しない。
使用した場合は、10 分後には水で洗い流すか水拭きする。
・血液、体液、吐物などの汚れですぐに消毒効果が落ちてしまうため、
しっかり取り除いてから消毒する。
・酸性の洗浄・漂白剤、シアヌール酸系の製品と混合すると
塩素ガスが発生して危険なので注意する。
・換気しながら使用する。
♣対象物ごとの予防・対策♣
方法
手指
流水・せっけんによる入念な手洗い*2
→清潔なタオル、またはペーパータオルなどで拭き乾燥させる
→アルコール速乾性手指消毒を用いて
乾燥するまで擦り込む*3
*3 ひかりちゃん学級の「その他」の『消毒の仕方』参照
便や吐物のついた
便などが乾燥しないうちに
床
使い捨てのエプロン、マスク、手袋を着用し、
静かにペーパータオルなどで拭き取りビニール袋に入れる
→200ppm(0.02%)次亜塩素酸ナトリウムで拭く
→水で拭く
→ビニール袋は速やかに密閉して
1000ppm(0.1%)次亜塩素酸ナトリウムに浸して廃棄
注意:窓を開けて換気して行う
便や吐物のついた
マスク等して、静かに付着物を処理後
布類
洗剤を入れた水で静かにもみ洗い
→85℃1 分間以上の熱水洗濯
熱水洗濯が出来ない場合は、
200ppm(0.02%)次亜塩素酸ナトリウムで消毒
(次亜塩素酸ナトリウムによって色落ちしたり傷むことがあるので注意)
→充分すすぐ
高温乾燥機やスチームアイロンなど使用すると更に効果的
下洗い場所も 200ppm(0.02%)次亜塩素酸ナトリウムで消毒し洗剤で洗う
便や吐物のついた
85℃の熱水に 1 分間以上浸すか
食器類、おもちゃなど
200ppm(0.02%)次亜塩素酸ナトリウムに充分浸し消毒
ドアノブや手すり、
200ppm(0.02%)次亜塩素酸ナトリウムや
水道の蛇口、便座など
80%アルコール消毒薬に浸した布で拭く
→水で濡らした布で拭く
浴槽
こまめに!!!
感染者はなるべく入浴は避ける
入る場合は一番最後にして、シャワーのみにする
→入浴後、すぐ浴槽内・外を 200ppm(0.02%)次亜塩素酸ナトリウムで消毒
日頃からしっかり栄養を摂ってしっかり寝て、免疫力を高めておくこと、
手洗い・うがいをこまめに実施することが、
ノロウィルスに限らず、様々な感染症を防ぐポイントです。
万一感染してしまっても、上記の対象物ごとの消毒法を参考に、ただ怖がるだけでなく、
しっかり感染拡大予防、対策をしましょう!!
参考文献:厚労省HP、
感染症情報センターHP、
福山市保健所保健予防課HP
薬剤師 渡邊知里