自動聴性脳幹反応 (跚R) を用いた全出生児を対象とする新生児聴覚

厚生科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)
分担研究報告書
全出生児を対象とした新生児聴覚スクリーニングの有効な方法及びフォローアップ、家族支援に関する研究
自動聴性脳幹反応(AABR)を用いた全出生児を対象とする新生児聴覚
スクリーニングの検討
三科 潤 東京女子医科大学母子総合医療センター助教授
多田 裕 東邦大学医学部新生児学教室 教授
研究要旨:聴覚障害児に早期療育を実施することにより、聴児に等しい言語能力や知能発達
が得られることが示されている。前年度までの研究により、全国の17施設において、19,071
例に対し出生施設入院中或いはNICU退院前に自動聴性脳幹反応(AABR)を用いて聴覚検査を
実施したが、これらの児の追跡調査を行うことにより、新生児聴覚スクリーニングの有効性
を検討した。この聴覚検査により、中等度以上の両側聴覚障害28例(0.15%)および片側聴
覚障害31例(0.16%)を検出した。両側聴覚障害の発生はハイリスク児で2。2%、ローリスク
児では0.05%であった。両側聴覚障害児のうち合併症のない例は、早期より療育が開始され、
補聴器装用は生後4∼6か月頃に実施できた。1歳6か月に達した症例の追跡調査においては、
新たな感音性難聴例は検出されておらず、両側聴覚障害に対するスクリーニング検査の感度
は100%、特異度は99.8%、陽性予測度は39.7%であり、自動ABRを用いた新生児聴覚スク
リーニングは有効な方法と考えられる。
A。研究目的
1000出生中に1から2人と言われている。新生児の聴
聴覚障害の発見が遅れると、言語発達をはじめ、認知、
覚障害の約半数は、ハイリスク児であるが、残りの半数
社会性等様々な面での発遠が遅れる。本邦では3歳児健
は、出生時には何らの異常を示さない児である。これら
診での耳鼻科健診が法制化されているが、発見が遅れる
の児を発見するためには、全出生児を対象としたユニバ’
例が少なくない.言語の発達には臨界期があり、聴覚障
一サル聴覚スクリーニングを行うことが必要である。
害の発見が遅れて適切な時期に言語指導が行われなかっ
我々は、平成10年度から3年間の研究において、
た場合には、言語の発達は阻害され、年齢相応の言語力
自動聴性脳幹反応検査(Automated ABR〉を用いて
を習得できなくなる。
19,071例の新生児に聴覚スクリーニングを実施した。こ
また、米国での聴覚スクリーニングにより、生後6か
れらの児の追跡調査を行い、自動ABRを用いた新生児
月以前に診断された早期発見例は、生後6か月以降に診
聴覚スクリーニングの有効性を検討する。また、新生児
断された例に比して、3歳での言語力が有意に優れてい
期の聴覚障害の有病率を求める。
るという結果も示されている。
早期療育のために、生後早期に発見しようとするスク
B.研究方法
リーニングの試みは古くからあったが、これまでの方法
平成10年11月から平成13年3月までに、17医療機
は感度および特異度が共に低く、有効ではなかった。と
関(東京女子医科大学、東邦大学、昭和大学、日赤医療
ころが、近年、聴性脳幹反応(ABR)や、耳音響放射(OAE)
センター、愛育病院、埼玉県立小児病院、山口病院、永
を用いた新生児聴覚スクリーニング法が開発されてきた。
井クリニック、山王クリニック、名古屋市立大学、名古
新生児スクリーニングにより発見される、中等度以上
屋第二赤十字病院、城北病院、大阪府立母子保健総合医
の永続的な両側聴覚障害の発生頻度は米国の結果から
療センター、神戸大学、パルモア病院、姫路赤十字病院、
一258一
倉敷成人病センター)で出生あるいはMCUに入院した
び”refer”となった場合に、 「スクリーニング”refer”(要
児のうち本研究への協力に、保護者から文書による向意
検査)」とし、聴性脳幹反応ABRを行った。ハイリスク
が得られた症例を対象とした。
児に対しては、全例にABRも実施した。ABRは40dbHL
新生児期の聴覚検査法としては、自動聴性脳幹反応聴
においてV波分離不良の場合に異常と判定した。
力検査AABRのNatus社製ALGOHを用いた。ALGOH
ABRが異常と判定された場合は耳鼻咽喉科に紹介し、
は、新生児聴覚スクリーニング用に開発された機器であ
精密聴覚検査として誘発耳音響放射(OAE)や行動聴覚検
り、生後6か月までの乳児に用いることが出来る。コン
査(BOA)、条件詮索反射聴力検査(COR)、乳児聴覚発
ピューターに入力されている正常新生児から得られた
達テスト等を実施し、聴覚障害の診断を行った。
ABRの波形と被検児のABRの波形をパターンマッチン
「スクリーニング”refer”(要検査)」例を追跡し、聴
グすることにより、自動解析して結果を判定する。音圧
覚障害の診断、療育についての調査を実施した。
35dbnHL(ささやき声程度の音圧)、パルス幅O.1msec、
また、追跡調査のために、スクリーニング症例を、全
周波数音域700∼5000Hzのクリック音を刺激音として
例主任研究者のもとで登録し、スクリーニングを実施し
用い、イアーカプラーを両耳に装着して、外部からの音
た全症例に対し、1歳6か月に於いて、郵送法にて聴覚・
を遮断し、刺激音を聞かせる。前額部、項部、肩の3点
言語・知能発達調査を行い、新生児スクリーニング以降
の電極から0.25msec毎に25msec間、サンプリングを
の感音性難聴の発生の検討により、ALGOHによる新生
行い、500回の掃引毎にABR第5波の平均化区間の9
児期聴覚スクリーニングの感度、特異度、陽性予測度を
ポイントの二項サンプリング、加重スコア化を行った後、
もとめ、検査の有効性を判定した。
Neyman−Pearson検定により、尤度比甑elyhood
また、平成12年度に実施した、検査の時間費用の検
ratio160以上を反応あり(pa総)とし、160に達しない
討結果を基に、検査費用の算定を行った。
ものを反応無し(refer)と判定する。掃引回数は最大
15000回まで行う。周囲雑音防害、筋原性妨害機能が入
C.研究結果
れられている。検査の理論的感度は99.96%とされてい
平成10年10月から平成13年3月までに、上記の研
る。
究参加施設に於いて、全出生児およびMCU入院児のう
検査には、薬剤等は使用せず、自然睡眠下にベッドサイ
ち、文書による保護者の同意がえられた19,071例に対
ドで行った。
し、ALGOIIによる聴覚検査を実施した。前記の定義に
聴覚障害発症のハイリスク群は、極低出生体重児、重
よる聴覚障害のハイリスク児867例と、これ以外のロー
症仮死(アプガースコア1分値3点以下)、重症黄疸(交
リスク児18,204例である。
換輸血を実施した高ビリルビン血症)、新生児遷延性肺高
スクリーニングの結果、2回目も両側refer例は73例、
血圧(PPHN)、膜式体外循環(ECMO)実施、頭頚部
0.38%であった。このうち58例、0.3%にABRによる異
奇形、先天難聴の家族歴(両親、同胞、祖父母)、先天感
常所見が認められ、28例、O.15%が中等度以上の両側聴
染(サイトメガロウィルス、トキソプラズマ、風疹など)、
覚障害、1例が片側聴覚障害と診断された。また、片側
髄膜炎、聴神経毒性薬剤使用、難聴合併が知られる症候
のみ2回目もrefer例は115例、0.6%あり、このうち30
群とする。上記の因子を持たないものを、ローリスク群
例0.16%が片側聴覚障害と診断された。
とした。
ローリスク児18,204例に於いては、両側referは1回
ローリスクの正期産児は原則として1生日以降の入院
目90例(0.49%)、2回目39例(0.21%)であった。2
中(生後1週以内)に検査を実施した。MCU入院例は、
回目refer例中15例(0.08%)のABRに異常所見を認
児の状態が安定し、コットに出た後、原則として修正36
めた。ABR異常例のうち、9例(0.05%)が中等度以上
∼44週頃に検査を実施した。
の両側聴覚障害と診断された。1例は片側の聴覚障害を
初回の検査において、”refer”(要検査)となった場合
認めた。片側referは1回目332例(1.82%)、2回目76
は、入院中に再検査を実施した。再検査においても、再
例(0.42%)であった。このうち26例(0.14%)にABR
一259一
の異常所見を認め、15例、0.08%が片側聴覚障害と診断
は480万円であるので、年間500件の検査を実施すると
された。 (表1、2)
仮定して、器機の減価償却費(5年問使用で1,920円)
ハイリスク児867例に於いては、両側referは1回目
およびALGOHの消耗品費(イアーカプラーと電極:平
52例(6.0%)、2回目34例(3.92%)であった。2回
成14年3月時点で2,900円)を加えると、検査費用は
目のALGOHを実施せずにABRを行った8例中の7例
1件当たり5,492円と算定された。
を含め、41例(4.73%)にABRで異常が認められた。
19例、2.19%が中等度以上の両側聴覚障害と診断された。
D.考察
片側reおrは1回目61例(7.04%)、2回目27例(3.11%)
我々は、平成10年度から3年間の研究によって、自
であった。このうち18例(2.08%)にABRの異常所見
動ABR(ALGOH)を用いて、新生児聴覚スクリーニン
を認め、15例、1.73%が片側聴覚1轄と診断された。
グを実施した。ALGOHの操作は比較的簡単であり、脳
また、ハイリスク児において、ALGOHではpassした
波やABR検査の経験がない者が実施しても手技的には
が、同時に検査したABRで異常と判定された例が5例
問題は無かったが、自然睡眠下での検査を行うため、睡
あったが、いずれも経過中にABRは正常化した。
眠・安静の確保が最も大きな問題であった。児が眠って
中等度以上の両側聴覚障害例にたいしては、補聴器装
いれば、1人の検査に要する時間は、数分間程度である
用を含む早期療育を実施した。重度の合併症を認めない
が、覚醒している場合には1時問近くかかっても結果が
例においては、補聴器装用は生後4∼6か月(早産例は
得られないこともある。このため、哺乳後1時間以内に
修正月齢)に行われた。両親が聾である1例は、保護者
検査を実施する、哺乳前に電極をつけておくなど、各施
の希望により聴覚学習は行っていない。また、片側聴覚
設で検査を容易に実施するための工夫がされていた。検
障害例には、直ちに療育の対象とはならないが、健側耳
査はイアーカプラーおよび電極の装着により行うが、安
の聴力悪化が起こる例もあり、慎重な追跡が必要である
全性には問題がなかった。
ので、保護者への指導および定期的な診察を含む耳鼻科
17施設において、19,071例の新生児聴覚スクリーニ
的な経過観察を行っている。
ングを実施した結果、中等度以上の両側聴覚障害28例
聴覚スクリーニング実施例に対し、1歳6か月(早産
(O.15%)、片側聴覚1轄31例(0.16%)を検出した。1
例は修正月齢)時に、郵送法により追跡調査を実施した。
歳6か月までの追跡調査結果からは、このスクリーニン
平成14年1月までに1歳6か月に達した8,162例に調
グの感度は100%、特異度は99.3%であり、自動ABRに
査票を郵送し、4,203例(52.2%)から回答を得た。こ
よる新生児聴覚検査は感度、特異度共に優れた方法であ
の結果、中耳炎による伝音性難聴およびその疑い例が11
る。
例に認められたが、感音性難聴は新生児期に発見された
米国から報告されている自動AABRによるスクリーニ
例以外には認めなかった。また、ハイリスク児は聴覚ス
ングのrefer率は平均4%であるが、これに比してわれわ
クリーニング実施医療機関でフォロアップーを実施され
れの結果は、2回検査実施後の両側refer率は0.38%、
ており、1歳6か月健診を実施した結果からも新たな感
片側refer率は0.6%であり、非常に低かった。このrefer
音性難聴の発症はなかった。
率の差は検査実施時期と検査者の熟練度の差によるもの
追跡調査の回収率は52%であったが、この中で新たな
と考える。中耳の鼓室に空気が満たされるには数時間か
感音性難聴は認めていないので、ALGOHによる聴覚ス
ら数日を要するので、出生直後には未だ出生直後は羊水
クリーニングの感度は100%、特異度は99.8%、陽性予
が貯留していることが多い。また、外耳道にも出生直後
測度は39.7%であった。
は胎脂や羊水が残っている場合がある。ABRは耳音響放
また、平成12年度の本研究で15施設において検査に
射法QAEに比して、中耳腔や外耳道の液体の影響は少
要した医師、看護婦、、の351件検査実施のための医療
ないが、潜時延長は起こりうる。ALGOHは、出生直後
従事者の人件費(時間費用)の検討を行い、自動ABR
から使用可能とされているが、我々が試用した経験では、
検査1件当たりの時間費用は672円であった。ALGOIle
出生当日のrefer率は高かったために、本研究では検査
一260一
実施は1生日以降とした。また、我々は検査は医師、臨
おり、その有意差は聴覚レベル、知能、性別、家庭環境、
床検査技師または看護婦が実施し、検査者を出来るだけ
人種等の因子をコントロールしても認められたとしてい
固定したため熟練度が高かったといえる。一方、米国で
る。
は出生後の入院期間は24時間から48時間と短く、出生
米国では、1993年のNIHのConsensus Statement
当日に検査を行うことが多いこと、検査担当者はアルバ
による聴覚ユニバーサル・スクリーニングの勧告、1999
イトやボランティアなど非熟練者であることが多い。
年の米国小児科学会によるユニバーサル・スクリーニン
また、聴覚障害の発症頻度については、米国において
グの勧告の後、2000年にJoint Committee on Infant
は新生児聴覚スクリーニングにより、永続的な中等度以
HearingのPosition Statementが出され、出生病院入
上の両側聴覚障害の発症は1,000出生に1∼2人とされ
院中の初回聴覚検査の後、生後1か月までにスクリーニ
ているが、本邦における新生児聴覚障害の有病率はこれ
ングの過程を終了し、生後3か月までに精密診断を開始
まで明らかではなかった。本研究の結果では中等度以上
し、生後6か月までには早期療育を開始することが望ま
の両側聴覚障害はO.15%であり、米国の頻度と同様であ
しいとするガイドラインが示された。現在43州で出生
った。また、ハイリスク児、ローリスク児における有病
病院入院中の聴覚スクリーニングが法制化されている。
聴覚スクリーニングをマス・スクリーニングとして全
率もそれぞれ2.2%と0.05%であり、米国からの報告と
同様の頻度であった。
国実施する場合には、以下の事項をクリアする必要があ
米国では聴覚障害児の約半数は他には何等の疾病を有
る。
しないローリスク児であるとされている。一方、本研究
1.スクリーニング以外には早期発見が困難であること
の結果ではローリスク児は32%であったが、これは、本
2.スクリーニングを実施するにたる発症頻度があること
研究参加施設の多くは周産期センターであり、我々が対
3.早期発見による治療・療育の効果があること
象にした症例のうちハイリスク児の割合は4.5%であり、
4.検査の有効性および安全性が確かであること
ハイリスク児の割合が高かったためと考えられる。
5.スクリーニングの経済性
スクリーニングにより検出された両側聴覚障害例のう
聴覚障害の発見時期、検査の有効性・安全性については
ち、重度の合併症がない例は、難聴幼児通園施設、聾学
すでに述べた。発症頻度に関しては、今回の結果でロー
校幼稚部教育相談、病院などで療育を受けているが、早
リスク新生児における中等度以上の両側性難聴の有病率
期から療育が開始でき、補聴器装用は生後4∼6か月に
は0.05%、2000人に1人の率であり、これは、現在マ
は開始された。これは、スクリーニングを実施しない場
ス・スクリーニングが実施されているどの疾患よりも高
合に比して格段に早い装用である。我が国においても聴
率である。
覚障害の発見・診断時期は2∼3歳であることが多いの
早期療育の効果があることは示されているが、全国で
で、新生児聴覚スクリーニングにより、明らかに早期か
は未だ早期療育体制が十分に整っていない地域もある。
らの療育開始が可能であることが示された。しかし、今
このような地域でスクリーニングのみが実施された場合
回は早期診断および療育が可能な地域でスクリーニング
は大きな問題が起きるので、スクリーニングから早期診
を実施したので、このような結果が得られたが、本邦で
断、早期療育への連携体制を作った後に、スクリーニン
は未だ療育体制が十分ではないので、療育を受ける場合
グを実施することが必要である。また、早期療育のため
に、療育機関が遠方であるために、通所に保護者の過大
の人材育成が急務である。
な労力が必要とされたり、近隣に療育機関がないために
ALGOIIを使用しての検査費用は年間500件検査を行
転居を余儀なくされる実状がある。
う施設では、1件当たり検査に要する人件費(672円)
言語発達には臨界期があり、早期療育が望ましい。
を含め、5,492円と算定された。実施件数が少ない医療
Yoshinaga門Itanoらはスクリーニングにより早期に検出
機関では、1件あたりの減価償却費が高くなるので更に
されて療育が行われた場合の聴覚障害児の言語能力は、
高価になる。また、今回は検討できなかったが、スクリ
生後6か月以降に検出された場合に比して有意に優れて
ーニングの経費には検査費用のみではなく、集計等の事
一261一
務費、パンフレット印刷費、データ管理の費用、検査者
人の率であり、マス・スクリーニングを実施するに足る
の研修の費用等も必要である。
頻度であると考える。
自動ABRによる検査は、現時点では検査の信頼度が
新生児聴覚検査試行事業は平成13年度には4県で開
高く、’ヤefer”率が低いことから、平成13年度に開始さ
始され、平成14年度には更に数県での開始が予定され
れた新生児聴覚検査試行事業は全て自動ABRを用いて
ている。
実施されている。しかし、今後マス・スクリーニングと
本邦での新生児聴覚スクリーニング実施を拡大するた
して全国で実施する際には、検査機器および消耗品が高
めには、QAEも併用したスクリーニング方法、スクリー
価であることが最も問題になると考えられる。現在、自
ニング体制、精密診断体制、療育・教育体制、各関係機
動ABRの器機は4機種輸入されているが、価格は260
関の連携体制、フォローアップ体制、早期療育体制など、
∼480万円であり、消耗品は1件あたり650∼2,900円
家族支援も含めて更に具体的な検討が必要である。
である。耳音響放射法(QAE)を用いたスクリーニング
器機は数機種あるが、70∼160万円であり、消耗品は1
新生児聴覚スクリーニング実施機関および研究協力者(平
件あたり160∼350円である。わが国での分娩は小規模
成10年11月∼13年3月):東邦大学新生児科:大島 毅、
の施設で行われることが多いため、より安価な検査器機
荒井博子、昭和大学小児科:田中大介、日赤医療センタ
であるOAEスクリーナーも用いることを考慮する必要
ー新生児科:川上 義、中島やよひ、愛育病院:加部一
があるが、OAEはrefer率が高いので、refer例を全て
彦、東京女子医科大学:河野由美、埼玉県立小児病院新
精密検査に紹介することは問題がある。従って、QAEと
生児科:大野 勉、野澤政代、山口病院=山口 暁 、
自動ABRとを組み合わせた二段階スクリーニング法を
永井クリニック:永井 泰、山王クリニック:北川 優、
検討する必要がある。
名古屋市立大学小児科:戸苅 創、加藤稲子、名古屋第
また、スクリーニングの実施に当たっては、医療、行
二赤十字病院小児科:側島久典、城北病院小児科:渡辺 勇、
政、療育、福祉等の代表者からなる協議会を作り、地域・
大阪府立母子保健総合医療センター新生児科:藤村正哲、
の実情に即した体制づくりの検討が必要があることは言
住田 裕、神戸大学小児科:中村 肇、上谷良行、米谷
うまでもないが、スクリーニングで”refer”とされた児が
昌彦、パルモア病院:三宅 潤、姫路赤十字病院小児科:
遅滞なく精密診断を受けられ、聴覚障害が診断された場
久呉真章、倉敷成人病センター小児科:御牧信義
合には適切な療育を受けられるように、保護者のカウン
セリングも含めた、フォローアップおよび支援体制が必
文献:
要である。
1.Ybs㎞aga−Itano C,Sedney!りしet aL:Language of Eafly−and
Laler−idendfied Children With Hearing LossPedia面cs
E.結論
102:ll61−1171,1998
自動聴性脳幹反応(AABR)ALGOHを用いて、出生
2.AmericanAcademy ofPediaωcs殆skFo憩ce on Newbom and
後或いはMCU入院中に約19,071例にたいして聴覚検
Infant Hearing:Newbom and Infant Headng Loss:Det㏄don
査を行い、中等度以上の両側聴覚障害26例(0.15%)お
and LIte!vention.Pedia面cs lO3:527−530,1999
よび片側聴覚障害31例(O.16%)を検出した。2回検査
3.Johlt Committee on Infant Hear㎞g:Y血2000 Position
実施後の両側”refer”(要検査)率はO.38%、片側”refer”
S鳳emenしPrinciple and Guide㎞es fbr Eafly Hea血g Det㏄“on
(要検査)率は0.6%であった。検査の感度はIOO%、特
&ht創・vention Pro9㎜. 1㎞edcan Jouma璽of Audiology9:9−
異度は99.3%と高く、ALGOHによる新生児聴覚検査は
29,2000
優れたスクリーニング方法であると考えられた。
4,Mehl AL&Tho㎜n V:The Co亘orado newbom headng
また、今回のスクリーニングにより検出された中等度
sc隅nhg Pr伽ct,1992−1999: 0n the 廿u聡holdof ef陀ctive
以上の永続的な両側性聴覚障害は0.15%であり、ローリ
populadon−based universal newbom hearing scR3ening、
スク群においても、その有病率は0.05%、2000人に1
Pedia面cs
一262一
109(1).URLhゆノノwww。pedia面cs.org!cgycontenげ血ル109/1!e7;
2002
7)多田裕:新生児聴覚検査実施について 日母産婦人
科医報53(2):5.2001
6.Vbhr BR,(璃 LM et.a1.The Rhode Island hearing
Assessment progmm:Experien㏄ with statewide headng
2.学会発表
1)三科 潤:新生児聴覚スクリーニング.第104回
㏄reen㎎(1993−1996), JPediaα133:363−7・1998
7.Prieve BA&Stevens E The New Yかrk State Un孟versal
日本小児科学会ランチョンセミナー 仙台 2001.5.
Newbom Hearing Sc祀ening Demonsαa“on Prqject
2)三科 潤:厚生科学研究「新生児期の効果的な聴覚
htrduction and Ovenlievv.Ear$Hear血g2L5−9L2000.
スクリーニング方法と療育体制に関する研究」班報告
第31回日本聴覚医学会ERA研究会 東京 2001.7
F。研究発表
3)三科 潤:わが国における新生児聴覚スクリーニン
1.論文発表
グの今後の展望 第37回日本新生児学会 ランチョン
1)三科 潤:新生児の聴覚スクリーニング.チャイ
セミナー 横浜 2001.7
4)三科 潤:新生児期の効果的な聴覚スクリーニング
ルド ヘルス.4:57−59,2001.
2)三科 潤:新生児聴覚障害とスクリーニング方法.
助産婦55:30−32,2001.
方法:厚生科学研究報告. 第37回日本新生児学会
横浜 200L7
3)三科 潤:新生児聴覚スクリーニング. MCUマ
5)三科 潤:新生児聴覚スクリーニングー方法と成績一.
ニュアル(第3版)377−379,2001.
第48回日本小児保健学会 東京 2001.11
4)三科 潤:聴性脳幹反応(ABR).MCUマニュアル
6)多田裕、田中美郷:新生児難聴の早期発見・早期療
育の重要性.その現状と問題点 第16回高度先進医療
(第3版)373−377,2001.
5)三科 潤:新生児聴覚スクリーニング. 産婦人科
の世界 54:181−189,2002.
6)多田裕:新生児難聴の早期発見・早期療育の重要性.
その現状と問題点 高度先進医療 平成12年度号:17−
32.2001
一263一
研究会総会 東京、2001.2
表1.両側referと聴覚1轄の頻度
2回目両狽l ABR異常
1回目両側
efbr
efbr
検査実施例数
ローリスク児
90
18,204
39
0.49%
867
ハイリスク児
52
0.08%
34
4.73%
73
0.74%
9
0.05%
41
3.92%
142
19,071
側聴覚障害
15
0.21%
6.00%
計
中等度以上の
40dB不分離)
19
2.19%
59
0.38%
0.31%
28
0.15%
表2.片側referと聴覚1轄の頻度
1回目片偵l
efer
検査実施例数
ローリスク児
18,204
ABR異常
2回目片側
efer
332
1.82%
ハイリスク児
867
61
7.04%
計
19,071
中等度以上の
40dB不分離)
393
2.06%
一264一
76
0.42%
27
3.11%
115
O.60%
26
0.14%
23
2.65%
49
0.26%
側聴覚障害
16
O.09%
15
1.73%
31
O.16%
表3.中等度以上の両側聴覚障害例
診断
1100M
五胎,VLBW
892F
880F
五胎,ELBW
五胎,ELBW
2660F
3095F 口唇口蓋裂・耳介変形
644F ELBW
782F ELBW
2648F 酸素7d、アミカシン6d
2980M
1220M
両親、母の祖母
2774・F
Treacher CoIlins
2980M
Dandy Walker両側外耳道閉鎖
2710F
2925F
HIE
Treacher Co”ins、両外耳道閉鎖
3458M
Treacher Co”ins、両外耳道閉鎖
3310F
1878F
HIE、MAS
2656M
2566M
多発奇形
17q一、多発奇形、小頭症、口蓋裂
de Lange synd
補聴器
>100 90−100(3y)
修6m
修6m
修6m
70−75 50。70(3y)
105 60−75(3y)
2y6m
50
90
70 50−65
修1y7m
修1y7m
60 60−70
l y
90 50−65
60
80 50−60
50
90
90
80
60
50
80 60−70
60 60。80
18 一、 E stein
45 80
1y
l y
1つー
1
Pierre−Robin
右ABR(dBnHL) 左ABR BOA,COR
05 5 0
9
93
99
73
89
0 9
04
07
0 0
29
29
28
31
45
25
25
38
338
30
40
4
3
3
3
3
46
3
3
3
4
4
4
1
234567890121
32
43
54
65
76
87
989
つ1111111
在胎 出生体重
溺謹6。8。9。8。6。8。9。8。畑9。6。葡6。6。弱
ハイリスク群
l l m
ローリスク群
在胎 出生体重
診断
2776F
2622M
院外出生
2290M
2795M
Down synd,CHD
>100
>100
70
90
70
50
105
60
90
90
右60/左55→70/70dBnHL
F
左ABR BOA,COR
75
先天性喘鳴
2814F
3518M
3370M
右ABR
Down synd
3144F
一265一
>100
85
90−100
70
70
105
70
70
90
60−80
55−65
105−110
補聴器
5m
4m
5m
6m
6m
(一)
60
フオロー中