Pipemidic acidの 毒性学的研 究 第1報 マウス,ラ ット,イ ヌおよびサル

2734
CHEMOTHERAPY
Pipemidic
第1報
マ ウス,ラ
acidの
SEPT.1975
毒性学的研 究
ッ ト,イ ヌお よび サ ル に お け る急 性 毒 性 試 験
仙 田博 美 ・藤 本 勝 造 ・大 西 久 美 雄 ・辰 巳
煕
大 日本製薬株式会社総合研究所
Pipemidic
Fig.1に
acidは
新 し い 合 成 抗 菌 性 物 質 で あ っ て,
示 す よ う にPiromidic
造 を 有 し,化
acidと
達 して か ら,雌 雄そ れ ぞ れ1群 を8匹
類似 の 化学構
学 療 法 的 に は グ ラム 陰 性 桿 菌 に対 して有 効
で,Piromidic
acidお
よ びNalidixic
対 し て 完 全 な 交 叉 耐 性 を 示 さ ず,か
Pseudomonas感
acid耐
性菌に
つ 経 口投 与 で実 験 的
染 症 に対 して 有効 な こ とが 報 告 され て
い る1)。
自家繁 殖 の12∼36ヵ
10∼15kgのBeagle犬
acidの
毒 性 を 検 討 す るに あ た
種 の 動 物 を 用 い て 本 剤 の 急 性 毒 性 試 験 を行 な っ た
の で 報 告 す る。
月 齢,体
重 が 雄14∼16kg,雌
を 用 い,水 で 混 合 した オ リエ ン
タ ル酵 母(株)製イ ヌ用 固 型 飼 料DS
209/dayな
ぞ れ1群
著 者 ら はPipemidic
り,数
と して使 用 した。
(3) イ ヌ
400g/dayと
脱脂 粉乳
らび に 水 を 与 え て 個 別 に 飼 育 し,雌 雄 そ れ
を3頭
と して使 用 した 。
(4) サ ル
東 南 ア ジ ア産 の 推 定3∼5才,体
カ ニ ク イザ ルMacaca
重2.6∼4.5kgの
irusを 用 い,温
度24±2℃
の
空 調室 で,=オ リエ ン タル酵 母(株)製
サ ル 用 固 型 飼 料ABと
Fig. 1
Chemical
acid and
structures
piromidic
of pipemidic
acid
水 を 自由 に摂 らせ て1年 以 上 飼 育 した もの を 用 い た 。1
群 の 動 物 数 は 雌 雄 そ れ ぞれ2頭
(5)
と した 。
ラ ッ ト新 生仔
哺 育 能 の 正 常 なJCL-SD系
仔 を授 乳 下 に,出
ラ ッ トか ら得 られ た新 生
生 の お よそ20時
1母 獣 に対 す る新 生 仔 数 は10匹
間 後 か ら 使 用 した。
と し,同 腹 仔 は 無処 置,
溶 媒 投 与 と検 体3用 量 の5群 に2匹 ず つ,で
1例,雌1例
き る限 り雄
に な る よ うに振 り分 け た 。1用 量 に対 して
使 用 した新 生仔 数 は雌 雄 そ れ ぞ れ6匹 以 上 と した 。
2. 投 与 方 法 な らび に 観 察項 目
検 体Pipemidic
acid trihydrateは
経 口投 与 時 に は0.5%ト
水 に 難 溶 の た め,
ラガ ン ト水溶 液 に 懸 濁 させ,非
経 口投 与 時 に は カセ イ ソー ダ 溶 液 に 検 体 を 溶 解 させ た
後,結 晶 析 出 の 限 界 ま で 過 剰 の アル カ リを 塩 酸 で 中和
実
験
方
法
し,最 終pH
と経 口の3投 与 経 路,イ
(1) マ ウ ス
日本 ク レ ア(株)産
のJCL-ICR系
入 し,温 度24±2℃,湿
マ ウス を4週
度55±5%の
齢で購
空 調 室 で4匹 を1
ケ ー ジ に収 容 して,飼 料CE-2(日
本 ク レア製)お
水 を 自由 に 摂 らせ て 飼 育 し,7週
齢,体 重 が雄29∼33g,
雌23∼28gに
よび
達 して か ら,雌 雄 そ れ ぞ れ1群 を8匹
し,1ケ
は 体 重10gあ
min.),皮
ml,経
14ml,ラ
下(背 部)
ヌ,サ ル お よび ラ ッ ト新 生 仔 に
た り 静 脈 内0.1ml(静
下 お よび経 口0.2ml,ラッ
口2ml,イ
注 速 度0.3ml/
トで は 体 重100g
注速 度0.5ml/min.),皮
ヌ お よび サ ル で は 体重1kgあ
ッ ト新 生仔 で は 体重1gあ
た り0.02mlと
下1
たり
な
る よ うに 濃 度 を 調 整 した 。 な お,投 与 量 はす べ てPipe-
(2) ラ ッ ト
日本 ク レ ア(株)産
のJCL-SD系
した もの を使 用 した。
お い て は 経 口投 与 だ け を実 施 した 。投 与 液 量 は マ ウス で
あ た り静 脈 内0.5ml(静
と
して 使 用 した 。
育 し,6週
11.5∼12.0と
マ ウス お よび ラ ッ トに お い て は 静 脈 内,皮
1. 実 験 動 物 お よび 飼 育条 件
ラ ッ トを4週 齢 で 購 入
ー ジ に1匹 ず つ 収 容 して マ ウス と同 じ よ うに 飼
齢,体 重 が 雄190∼220g,雌140∼160gに
midic
acidの
無 水 物 換 算 量 で 示 した 。
検 体 投 与 後,一 般 症 状 を 観 察す る とと もに,死 亡 獣 は
そ の 都 度,生 存 獣 は7日 後 に剖 検 し,肉 眼 的 に 異 常 の あ
VOL,
23
NO.
CHEMOTHERAPY
9
っ た 臓 器 は 病 理 組 織 学 的 に 検 索 し た 。LD50値
は7日
の 死 亡 数 か らLITcHFIELD-WILcoxoN法2)に
出 した 。 な お,イ
察 に と ど め,剖
ヌ お よび サ ル に つ い て は 一 般 症 状 の 観
検 は行 なわ なか った 。
実
1.
間
よ り算
験
成
2735
kg)で
は,致
死 例 は投 与 直 後 か ら強 直 性 痙 攣 を起 こ し,
呼 吸麻 痺 を経 て投 与2分
以 内 に死 亡 し,致 死 を まぬ が れ
た 例 は投 与 直 後 か ら腹 臥姿 勢 を と り,自 発 運 動 の抑 制,
呼 吸 数 の減 少 を き た した が,30分
績
な い し1時 間 後 には 正
常 に復 し,以 後 に著 変 は認 め られ な か っ た 。
LD50
皮 下 投 与(雄1,000∼1,600mg/kg,雌1,200∼2,074
マ ウ ス,ラ
ッ ト,イ
ヌ,サ
ル お よ び ラ ッ ト新 生 仔 に お
mg/kg)で
は,各
投 与 群 と も30分 な い し1時 間 後 に鎮
け る 各 実 験 の 投 与 量 お よ び 致 死 経 過 をTable1,2,3,4
静,自 発 運 動 の抑 制,眼 瞼 下 垂,呼 吸 抑 制 を きた し,一
に 示 し,LD50値
部 には 立 毛,外 部 か らの刺 激 に対 す る反 応 性 の低 下 が み
LD50値
をTable5に
は,マ
ま とめた 。
ウ ス で は 静 脈 内 投 与;雄610mg/kg,
雌649mg/kg,皮
られ,致 死 例 は投 与 後4∼24時
mg/kg,経
口投 与;雌
雄 と も に5,000mg/kg以
上,ラ
ヅ トで は 静 脈 内 投 与;雄575mg/kg,雌5841ng/kg,
雄 と も に5,000mg/kg以
口投
上,イ
は 雌 雄 と も に 死 亡 例 は な く2,000mg/kg以
ヌお よび サ ル で
上,ラ
新 生 仔 で は 雄1,597mg/kg,雌2,156mg/kgで
た 。 な お,ラ
(100%)は
ッ ト
あ っ
ヅ ト新 生 仔 雌2,000mg/kg群
の他 の症
状 は24時 間 以 内 に消 失 した 。
経 口投 与(雌
皮 下 投 与;雄1,635mg/kg,雌1,799mg/kg,経
与;雌
間 に認 め られ た 。 生 存 例
の 自発 運 動 の抑 制 は お よそ3日 間 続 いた が,そ
下 投 与;雄1,274mg/kg,雌1,516
雄 と もに5,000mg/kg)で
は,異
常は
認 め られ な か っ た 。
(2)
ラッ ト
静 脈 内投 与(雄500∼666mg/kg,雌480∼829mg/
kg)で
は,死 亡 例 は 投 与 直 後 に瞳 孔 散 大,歩 行 失 調,強
の死亡率
直 性 痙 攣,呼 吸 麻 痺 を経 て2分 以 内 に死 亡 し,生 存 例 に
異 常 と考 え られ た の で 計 算 に 用 い な か っ た 。
お い ては 投 与 直 後 に瞳 孔 散 大,筋 弛 緩,自 発 運 動 の抑 制
2. 中 毒 症 状
お よび 体 温 下 降 が み られ,次 い で 呼 吸 数 の減 少 また は チ
(1)
ェ イ ン ・ス トー ク型 呼 吸 を 示 した が,こ れ ら の症 状 は投
マ ウス
静 脈 内 投 与(雄400∼691mg/kg,雌550∼733mg/
Table 1
与 量 に 応 じ て30分
Acute
toxicity
of pipemidic
acid
ない し3時 間 後 に消 失 した 。
in mice
CHEMOTHERAPY
2736
Table 3
Table 2
Acute
Acute
toxicity
toxicity
間 の歩 行 失 調,眼
acid
acid
in dogs
瞼下
in rats
and
monkeys
2,000mg/kgを
(4) サ ル
的 に く り返 す と と もに 浅 い 呼 吸 とな った 。 また,軽 度 の
2,000mg/kgを
散 瞳 が 少 数 例 に 認 め られ た 。 致 死 作 用 は 投 与 後2∼24時
経P投 与 した が,雌
雄 と もに 全 く異
常 は認 め られ なか った 。
垂 を きた し,前 脇 部 を 下 げ 背 を 丸 め た 姿 勢 の 歩 行 を 間 漱
経 口投 与 した が,行
動 などに 異常は
認 め られ なか った 。
間 にみ られ た 。 生 存 例 で は 鎮 静 症 状,体 温 下 降,貧 血 様
(5)
症 状 な どが 投 与1日 後 に 最 も強 く現 わ れ た が,3∼4日
経 口投 与(雌 雄 と もに500∼4,000mg/kg)後,致
後 には 消 失 した 。
経 口投 与(雌
雄 と もに5,000mg/kg)で
認 め られ なか った 。
1975
(3) イ ヌ
は,投 薬 時 に 悲 鳴,投 薬 忌 避 な どの 著 しい 疹
痛 反 応 を 示 し,次 い で10∼30分
of pipemidic
of pipemidic
皮 下 投 与(雄1,000∼2,488mg/kg,雌1,000∼2,488
zng/kg)で
SEPT.
ラ ッ ト新 生 仔
死
例 で は経 日的 に動 きが 緩 慢 と な り,体 重 下 降,体 温 低 下
は,異
常は
を き た して投 与 当 日か ら6日 目に 死 亡 した 。生 存 例 で は
一 過 性 の 体重 下 降 を認 め た だ け で,そ の 他 の 異常 は 明 ら
VOIL.23
CHEMOTHERAPY
NO.9
Table 4
Table 5
The
LD50 values
Acute
toxicity
of pipemidic
LITCHFIELD-WILCOXON's method.
Numbers in parenthesis
represent
of pipemidic
acid
in mice,
95% confidence
か でな か った 。
3.
2737
in neonatal
rats,
dogs,
rats
monkeys
and
neonatal
rats
limits.
浮腫
剖検所見
acid
皮 慮 の赤 黒 色 化,脱 毛 が 多 数 例 に 認 め られ,ま た,
静 脈 内投 与 時 と同様 の 腎 に お け る 変 化 が,雄
(1) マ ウ ス
静 脈 内投 与 で は 死 亡 例 に肺 の うっ血 ・水 腫 が 認 め られ
た が,そ の他 の 臓 器 に 異常 は なか った 。7日
目まで の生
存例 で は 腎の 混 濁 あ るい は の う胞 の形 成 例 が,雌
の550
mg/kg群
で は8例 中1例(以
下1/8のよ うに 略 す),605
mg/kg群
で は2/7に 認 め られ た 。組 織 学 的 に は 尿 細 管 の
mg/kg群
で1/7,雌
の1,200mg/kg群
mg/kg群
で1/4に み られ た 。
経 口投 与 で は異 常 は み られ な か っ た。
(2)
ラッ ト
静 脈 内投 与 で は死 亡 例 に肺 の うっ血 ・水 腫 が 認 め られ
た が,そ
の他 の臓 器 に異 常 は なか った 。 生 存 例 で は マ ウ
拡 張,尿 細 管 上 皮 の 空 胞変 性,菲 薄 な再 生 上 皮 の出 現,
ス と同様 に 腎 の 変化 が,雄
間 質 の浮腫 な どの 変 化 であ った 。
mg/kg群
皮 下投 与 で は 死 亡例 に注 射 局 所 の 出血,浮 腫,胃 粘 膜
の 点状 出血 が 認 め られ た。 生 存 例 で は 局 所 皮 下 の 出 血,
の1,200
で1/8,1,728
で1/5,605mg/kg群
1/1に 認 め られ た
の500mg/kg群
で1/7,550
で3/3,666mg/kg群
で
。
皮 下 投 与 で は 死 亡 例 に マ ウ ス と同 様 に 注 射 局 所 の障 害
2738
CHEMOTHERAPY
が み られ,ま
mg/kg群
た,生
存 例 で は 腎 の変 化 が,雄
で1/8,1,440mg/kg群
の1,000
で1/6に 認 め られ た 。
SEPT.1975
合,呼 吸 抑 制 と持 続 的 な 鎮 静 状態 がみ られ た 。 病 理 組織
学 的 変 化 と して,非 経 口投 与 群 の 生存 例 の一 部 に 腎 尿 細
経 口投 与 で は異 常 は認 め られ なか っ た 。
管 の障 害 が 認 め られ た 。 本 変 化 は経 口投 与 時 に は 全 く認
(3) ラ ッ ト新 生仔
め られ ず,し た が って 非 経 口的 な 投与 で一 時 的 に大 量 の
致 死 例 は 速 や か な 自己融 解 また は 母 獣 に 喰 われ る た
薬 物 が 排 泄 され た 結 果 に よ る と思 わ れ る 。
め,観 察 で きな い 例 もあ った が,肉 眼 的 に ほ とん ど異 常
非 経 口投 与 時 の急 性 毒 性 も低 く,か つ 性 差,種 族 差 は ほ
を 認 め ず,ま た,生 存 例 に も異 常 は な か った 。
とん どな い と考 え られ た 。
総 括 な らび に 考 察
Pipemidic
acidに
関 す る毒 性 試 験 の 一 環 と して,そ
の 急 性 毒 性 を マ ウス,ラ
ッ ト,イ ヌ,サ ル お よび ラ ッ ト
経 口投 与 で は,本 剤 の 毒 性 は 弱 く,マ ウス,ラ
ッ トと
LD50は
交
1)
Pipemidic
あ った 。
マ ウス お よび ラ ッ トで の静 脈 内投 与 のLD50は575∼
649mg/kg,皮
下 投 与 の そ れ は1,274∼1,799mg/kgで
献
清 水 当 尚,高 瀬 善行,中 村 信 一,片 江 宏 巳,南
明,中 田 勝 久,井 上
異 常 は なか った 。また,ラ ッ ト新 生 仔 で の経 口
雄1,597mg/kg,雌2,156mg/kgで
か ら10月 お よび50年3
月 か ら4月 で あ る。)
与 え て も異 常 は
認 め られ なか った 。 イ ヌ お よび サ ル に お い て も2,000
mg/kgで
稿 を 終 わ るに あ た り,本 実 験 に協 力 され た 椋 本 健次,
西 村 耕 一,竹 本 勇 一 の諸 氏 に深 謝 し ます 。
(本 研 究 期 間 は 昭 和47年8月
新 生 仔 を 用 い て検 討 した 。
も に投 与 可 能 な最 大 量5,000mg/kgを
以 上 か ら,本 剤 の経 口投 与 時 の 急 性毒 性 は低 く,ま た,
23(9)
2)
acidの
了,石 山正 光,久 保 雄 嗣:
抗 菌 作 用 。Chemotherapy
: 2659•`2667,
LITCHFIELD,
性 差,種 族 差 は ほ とん ど認 め られ な か っ た 。静 脈 内投 与
simplified
の 致 死 例 に は 静 注直 後 の強 直 性 痙 攣,呼 吸抑 制 がみ られ,
experiments.
肺 の うっ血 ・水 腫 を きた して 死 亡 した 。 皮 下 投 与 の場
113,
1949
1975
J.
method
J.
T.
&
of
Pharm.
F.
WILCOXON
evaluating
Exp.
:
dose-effect
Ther.
96
: 99•`
A
VOL. 23
NO.9
CHEMOTHERAPY
TOXICOLOGICAL
I. ACUTE
TOXICITY
STUDIES
STUDIES
2739
ON PIPEMIDIC
IN MICE,
RATS,
ACID
DOGS AND
MONKEYS
HIROMI SENDA, SHOZO FUJIMOTO,
KUMIO OHNISHI and HIROSHI TATSUMI
Research and Development Division, Dainippon Pharmaceutical
The acute toxicity
of pipemidic
natal rats with following
Intravenous
ataxia,
ptosis,
etc.
in all the
of PPA.
that
of
in spontaneous
other
animals
It seems
city
a decrease
administration
a decrease
On the
of PPA
relaxation,
Subcutaneous
hand,
oral
examined
there
was examined
in mice, rats, dogs, monkeys
and neo-
results.
administration
muscle
acid (PPA)
Co., Ltd.
is no
near
the mean
lethal
in spontaneous
PPA
near
the
locomotion,
administration
except
significant
mean
a drop
of PPA
for a slight
difference
doses
locomotion
in
lethal
body
did not
decrease
between
caused
and
doses
tonic
also
in the
animal
body
weight
species
sedation,
paralysis
any toxic
mydriasis,
respiration.
induced
temperature,
cause
convulsion,
interrupted
signs
gain
or sexes
of
even
ataxia,
respiration,
at high
of neonatal
in the
acute
doses
rats.
toxi-