(論文要旨)医博乙237馬 偉英

学 位 論 文 の 要 旨
り
が
名
整理番 号
学位 論 文題 目
な
ま馬
ふ氏
※
うぇいん
偉英
TrkA機 能を拮抗す る合成細胞膜透過ペ プチ ドによるマ ウス におけ
る神 経障害痛 の抑制作用
研 究 の 目的】
【
神経障害痛 は末梢や 中枢神経 にお ける感覚伝導路 の 障害または疾患 によつて通
常発症す る痛み で 、そ の治療 は現在 にお いて も困難 である。 一 方 、神経成長 囚子
(nerve grOwth factor;NGF)と そ の高親和性受容体 の TrkAは 末梢性神経障害痛発
症 の病態 生理 に深 く関与 してお り、神経 障害痛 の新規治療薬 の ター グ ッ トとして
考 え られ て い る。申請者 らは これま で 、この TrkAの チ ロシンキナ ーゼ活性 を直接
抑制す る新 しい細胞膜透過性 ペ プチ ドの IPTRK3を 開発 し、ラッ トにお ける侵害受
容痛 を十分 抑制す る作用 をもつ ことを明 らかに してきた。本研究 ではマ ウスの坐
骨神経 を部分結繁 (PSNL)し て生 じる神経障害痛 に対す る IPTRK3の 鎮痛効果 と、軽
微 な刺激 で誘発 され る脊髄 の Fos発 現 に及 ぼす影響 を検討 した。
方法 】
【
実験動物 は ddYマ ウス雄 (実 験時 の体重 が 30-40g)を 用 い た。 セ ボフル ラ ン麻
酔 にて 、左坐骨神経 を注意深 く剥離 し、神経 の厚 さの 1/3か ら 1/2を 80絹 糸で
強 く結繁 した (PSNL)。 シ ャム手術 のマ ウス では坐骨神経 を剥 離 したが結繁 は しな
かった。
マ ウス 下肢 にお ける熱刺激過敏反応 はプ ラ ン ター テ ス ト(Mode1 7370 Plantar
Test,Ugo Basile,Milan,Italy)を 用 い て測定 した。 左 下肢足底部 中央 に熱刺激
を加 え、熱刺激 に対す る逃避行動 を起 こす まで の時間を測定 した (熱 刺激 PWT)。
機 械 刺 激 過 敏 反 応 は エ ス テ シ オ メ ー タ (Mode1 37400 Dynamic Plantar
Aesthesiometer,Ugo Basile,Milan,Italy)を 用 いて測定 した。機械刺激 は細 い
鈍針 を用 いて左 下肢足底都 中央 に加 え、刺激 に対す る逃避反応 を起 こすま で の時
間を測定 した (機 械刺激 PWT)。 それぞれ の測定は、イ ン ターバル を 10分 とした 5
回 の計測 を行 い 、平均値 を測定値 とした。
脊髄 にお ける Fos発 現 は免疫組織 化学法 を用 い た。 セボフル ラ ンによる深麻酔
下 にマ ウスの心臓 よ リホル マ リンを還流 し、脊髄 を注意深 く摘 出 して L4-L5レ ベ
ルで 40 μmの 厚 さの切片 を作成 した。切片 は抗 ∝ fos抗 体 と共にイ ンキ ュベ ー ト
し、脊髄第 I一 H層 (浅 層 )と 脊髄第 HI VI層 (深 層 )に おける Fos陽 性神経細
胞 の 平均数 を計沢Jし た。
熱刺激 PWTイ まPBNLの 1日 前 と 2日 前、お よび 2日 後 と 6日 に測定 した。7日 後
に リン酸緩衝液 (PBS)の み (O mg/kg群 )ま たは IPTRK3を 溶解 した リン酸緩衝液 (2
mg/kg群 と 10 mg/kg群 )を マ ウスの腹腔 内に投与 し、投与 1時 間後 、4時 間後 、8
時間後 に熱刺激 PWTを 測 定 した。 さらに PBNLの 8日 後、9日 後 、 10日 後お よび
14日 後 にも測定 した。機械刺激 PWTに つい て も他 のマ ウス で 同様 に測定 した。
また別 のマ ウス を用 い て PSNL7日 後 に脊髄 にお ける Fos発 現 を誘導す るため、
10mg/kgの IPTRK3を 腹腔 内投与す る 1時 間前 に左 下肢足底部 に無麻酔で接触刺激
を行 つた。 マ ウス は以下 の 6群 に分 けた (shamtt PBSの み腹腔 内投与 十接触刺激
あ り 又 は な し 、 PSNLttPBSの み 腹 腔 内 投 与 十 接 触 刺 激 な し 又 は あ り 、 PSNL tt IPTRK3
腹腔 内投 与 十接触刺激 あ り又 はな し)。
結果 】
【
PSNL 6日 後、す べ てのマ ウス で熱刺激 PWLは 低 下 した。7日 後 に投与 した IPTRK3
によ り、
熱刺激 PWLは 2日 間増加 した。
機械刺激 PWLも PSNL6日 後 に低下 し、IPTRK3
投与 1時 間後 に増加 して 1-2日 間増加 は継続 した。
Fos I易―
性細胞 の数 は接触刺激 がな い状態 では非常に少 な く ((13個 /切 片 )、 3群
間 (sham+PBS,PSNL+PBS,PSNL+IPTRK3)で 有意差 はなか った。接触刺激後 は Fos
陽性細胞 の数 は sham+PBSで 少数認 め られたが 、PSNLttPBSで は脊髄浅層 と深 層 と
もに有意 に増加 した。しか し IPTRK3投 与によ り Fos陽 性細胞数 は脊髄浅層 と深層
ともに有意 に減少 した。
考察】
【
PSNL7日 後に腹腔内投与 した IPTRK3は 、投与 1時 間後 に熱過敏反応 とア ロデ ィ
ニア を共に抑制 し、そ の効果 は 2日 間継続 した。また神経障害痛 モデル 動物 では、
非侵害刺激 である接触 の反復刺激 な どが脊髄 における Fosレ ベル を増加 させ 、ア
ロデ ィニ ア反応 に呼応す る。本研究 では PSNL7日 後における接触刺激 による Fos
発現 を IPTRK3は 脊髄浅層 と深層 ともに抑制 した。脊髄浅層 の侵害刺激に反応す る
無髄求心繊維 (C and Aδ )の 神経終末 があ り、深層 には非侵害刺激 に反応す る有髄
求心繊維 (Aβ )の 神経終末 が存在す る。 IPTRK3に よる Fos発 現 の抑制 とア ロディ
ニアの抑制 は、侵害刺激 と非侵害刺激 に関わる求心繊維間の TrkAを 介 した活動抑
制 が 関与 しているか も しれない。
結論】
【
TrkA活 性抑制作用 をもつ合成細胞膜透過性 ペ プチ ドの腹腔 内投与は、末梢神経
損傷後 の過敏反応 とア ロデ ィニアを抑制す る。TrkAを ター グ ッ トにす る合成ペ プ
チ ドは神 経障害痛 に対す る新規治療薬 となる可能性 がある。
備考
1
2
※ 印 の欄 は、記入 しない こ と。
学位 論文 の要 旨は、和文 に よ り研 究 の 目的、方法、結果、考察、結論等 の順 に記 載 し、
2,000宇 程度 でタイプ等 で 印字す る こ と。
3
図表 は、挿入 しない こ と。