肥料の役割/土を育てる肥料という発想

絵本で分かるゴルフ場のコース管理
肥料のお話
~ 肥料と土のお話 ~
なぜ私たちは肥料をまくのでしょうか?
芝生を育てるために・・・ たしかにそれもあります。
でも、肥料には、もうひとつ大切なものをそだてる役割があるのです。
今回は、いつもと違った見方で肥料を考えてみましょう。
肥料が育てるもうひとつの大切なもの、それは「土」です。
健康な芝生を育てることと健康な土を育てることと・・・
この二つは同じくらい大切です。
芝生≠植物
唐突ですが、芝生は植物ではありません。
芝
生
芝 草
芝生とは、芝草という植物が地面をおおった状態を意味する言葉です。
ベント芝が芝草です。 ベントグリーンが芝生です。
少し分かりにくいですか? では、これでどうでしょう。
桜の木やもみじの木は植物です。いろいろな木があつまったものが森です。
「森」という名前の植物はありませんよね。 桜やもみじという植物があつまって、森という「状態」をつくるんですね。
芝 草
芝 生
芝 地
お分かりいただけたと思いますので、お話をすすめますね。
もうすこしだけ、言葉の意味にお付き合い下さい。
ゴルフ場には芝草、芝生、そしてもっと大きな目で見ると「芝地」があります。
「芝地」とは芝生と、芝生が生活する場所を含めた環境を意味します。
よく見てください。土壌中には微生物や小さな虫や、ミミズもいます。
芝生だけでなく、これらの生き物も芝地の大切な住人です。
芝生も含め、この住人たちは、勝手に生きているのではありません。
仲良くしたり、喧嘩をしたり、つながって生きています。
ながながと話が横道にそれましたが、申し上げたかったのは、
「私たちが管理しているのは芝生ではなく、芝地なんです!」
ということです。
健康な芝地に、健康な芝草が育ち、
良好な芝生、お客様に喜んでいただけるグリーンやティーやフェアウエイやラフができるのです。
芝地を管理するという考え方をすると、肥料はどう変わるでしょう・・・
芝生を育てるだけでなく、芝生と土を育てる肥料、という発想に変わらなくてはいけませんね。
でも 「土を育てる」 ってどういうことなんでしょうか。
簡単にいえば、土を育てるということは
微生物を育てる ということです。
地力 という言葉を耳にしたことがありませんか・・・
土が植物を育てる「ちから」が地力です。
そして、地力が弱いとか強いとかを決めるのは、その土で暮らす微生物なのです。
もう一度、土の中を見てみましょう。
元気な土の中には微生物がたくさん暮らしています。
特に根のまわりには、たくさんの微生物が住んでいます。
今度は、微生物の体の中をのぞいてみましょう。
つぶつぶが見えますね。これは芝生の栄養になる肥料分です。
でも、芝生の栄養分を微生物が横取りしている・・・ という考えは間違いです。
微生物は芝生が吸収することのできない有機物を餌にします。
それが体内で分解されると、芝生が利用できる肥料成分に変わります。
微生物が寿命を迎えたとき、体の中に蓄えられた肥料成分が外に出て、芝生の肥料になります。
「芝生の栄養を溜め込むカプセル」・・・ それが微生物です。
微生物がたくさんいる土は、芝生の肥料をたくさんかかえている土なんですね。
だから、地力が弱いとか強いとかを決めるのは、その土で暮らす微生物なのです。
微生物の働きは、これだけではありません。
まだまだたくさんの働きがあって、それが芝生の生育を助けます。
芝生にとってもっとも大切な光合成を助けるのも微生物です。
芝生が光合成をするために欠かすことのできないものが二酸化炭素です。
ところが空気中には0.03%の二酸化炭素しかありません。
これはけっして十分な量ではなく、すこしでも薄くなると光合成ができなくなってしまいます。
でも、大丈夫。 ・・・ここでも微生物が活躍します。
空気中の二酸化炭素濃度が0.03%しかないのに、土の中には20%も二酸化炭素があります。
どうしてこんなに違いがあるのでしょうか。
実はこの二酸化炭素、微生物が作り出しているのです。
・・・残念!! こらからがいいところなのですが、時間になってしまいました。
土を育てる肥料のお話 ・・・次回に続きます。
どんどんおもしろくなりますので、期待してください。