慈恵ICU勉強会 研修医 酒巻大輔 2015.11.24

LancetNeurol.2015Sep;14(9):914-25.
慈恵ICU勉強会
研修医 酒巻大輔
2015.11.24
検索方法と選別基準
今回の論文は,1996/1/1~2015/5/28の期間で,
Posteriorreversibleencephalopathy syndrome(PRES)
あるいは
Reversibleposteriorleukoencephalopathy(RPLS)
について発表された論文を纏め・分析したReviewである.
IntroducNon
Posteriorreversibleencephalopathysyndrome(PRES)とは,
後頭葉白質を中心とした
可逆性の皮質下血管性脳浮腫を来す疾患群.
IntroducNon
Posteriorreversibleencephalopathysyndrome(PRES)は,
ここ20年間で様々な症例報告が出てきている.
急激な高血圧の悪化により引き起こされる,
と考えられていた.
IntroducNon
Posteriorreversibleencephalopathysyndrome(PRES)は,
臨床症状や画像所見を元に診断が行われ,
明らかな診断基準や治療のアルゴリズムなどは
未だ完成していない.
IntroducNon
Posteriorreversibleencephalopathysyndrome(PRES)
は,
成人だけでなく小児でも発症する.
•  症状や画像所見は成人と同様であるが,
小児PRESの報告は少ない.
•  (成人同様)血液疾患・腎疾患・移植後免疫
抑制剤が関与しやすいが,糸球体腎炎・急性
白血病・Henoch-Schönlein紫斑病・溶血性尿
毒症症候群(HUS)での発症報告がある.
•  いずれにせよ・・・,稀である.
Contents
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病態生理
症状
原因
診断/画像所見
鑑別
治療
予後
Contents
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病態生理
症状
原因
診断/画像所見
鑑別
治療
予後
PhysiologicalcondiNonsoftheblood-brain-barrier
•  通常,TightjuncNonと呼ばれる接着結合により,内皮
構造は保たれている.
•  血管の収縮・拡張は様々な物質により保たれている.
Posteriorreversibleencephalopathysyndrome
•  PRESの状態では,TightjuncNonの破壊により間質
に高分子物質が流出し,脳浮腫を引き起こすと考
えられている.
TNF-α,IL-1の分泌が亢進
接着分子である
ICAM-1やVCAM-1の発現を誘導 VEGFの発現を誘導 内皮障害や体液漏出
接着分子の脆弱化細胞自体も破壊
Posteriorreversibleencephalopathysyndrome:
TheendothelialhypothesesMedhypotheses2014;82:619-22
Contents
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病態生理
症状
原因
診断/画像所見
鑑別
治療
予後
Theneurologicalsymptoms
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脳症(50~80%)
痙攣発作(60~75%)
頭痛(50%)
視覚障害(33%)
局所神経障害(10~15%)
てんかん重積発作(5~15%)
Theneurologicalsymptoms
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しばしば見られその程度は
脳症(50~80%)
軽症から重症まで様々.
痙攣発作(60~75%)
頭痛(50%)
視覚障害(33%)
局所神経障害(10~15%)
てんかん重積発作(5~15%)
Theneurologicalsymptoms
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脳症(50~80%)
痙攣発作(60~75%)
強直性間代性痙攣発作が,
頭痛(50%)
一番多いと言われている.
視覚障害(33%)
局所神経障害(10~15%)
てんかん重積発作(5~15%)
Theneurologicalsymptoms
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脳症(50~80%)
痙攣発作(60~75%)
通常,鈍くびまん性に穏やか
頭痛(50%)
に拡散する.
視覚障害(33%) ごく稀に激しい頭痛がおきる.
局所神経障害(10~15%)
てんかん重積発作(5~15%)
Theneurologicalsymptoms
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脳症(50~80%)
痙攣発作(60~75%)
頭痛(50%)
視覚障害(33%) 視力低下や視野欠損,幻覚
などを引き起こす.
局所神経障害(10~15%)
多くは視力低下である.
てんかん重積発作(5~15%)
PresentaNonofreversibleposteriorleukoencephalopathy
syndromeinpaNentsoncalcineurininhibitors
ClinicalNeurologyandNeurosurgery:112(2010)886-891
Theneurologicalsymptoms
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脳症(50~80%)
痙攣発作(60~75%)
頭痛(50%)
視覚障害(33%)
局所神経障害(10~15%)
片麻痺や失語といった症状が
てんかん重積発作(5~15%)
出現することがある.
ミエロパチーの出現は稀.
PresentaNonofreversibleposteriorleukoencephalopathy
syndromeinpaNentsoncalcineurininhibitors,ClinNeurol
Neurosurg 2010; Vol.112: 886-891
Theneurologicalsymptoms
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脳症(50~80%)
痙攣発作(60~75%)
頭痛(50%)
視覚障害(33%)
局所神経障害(10~15%)
てんかん重積発作(5~15%)
脳波上,後頭部を中心に
鋭波がみられる.
StatusepilepNcusasiniNalmanifestaNonofposterior
reversibleencephalopathysyndrome Neurology:Volume69(9),August2007,pp894-897
Contents
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病態生理
症状
原因
診断/画像所見
鑑別
治療
予後
CondiNonsatriskforPRES
•  元々、PRESは高血圧の急激な悪化が原因で
引き起される、と考えられてきた.
•  ただ、実際は15-20%のPRES患者では発症前
の血圧は普段通りであったり、
むしろ通常時より低いものであった.
BloodPressureFluctuaNonsinPosteriorReversible
EncephalopathySyndrome JStrokeCerebrovascDis.2012May;21(4):254-8.
CondiNonsatriskforPRES
•  妊娠中毒症
•  移植後
•  免疫抑制剤
•  感染症/敗血症
•  自己免疫疾患
•  化学療法
•  その他
PosteriorReversibleEncephalopathySyndrome,Part1:
FundamentalImagingandClinicalFeatures
AJNRAmJNeuroradiol2008;29:1036-42
CondiNonsatriskforPRES
・PRESの患者の約半分は自己免疫疾患の既往がある.
Posteriorreversibleencephalopathysyndrome:associatedclinicaland
radiologicfindings. MayoClinProc.2010May;85(5):427-32.
・PRESの患者の約半分で腎機能障害がみられた.
Imagingpacernofintracranialhemorrhagein thesedngofposteriorreversibleencephalopathysyndrome. Neuroradiology2010Oct;52(10):855-63.
・抗VEGF薬やタクロリムスもPRESを引き起こしうる.
Clinicalfeaturesandoutcomesofposteriorreversible
encephalopathysyndromefollowingbevacizumabtreatment.
QJM 2012Jan;105(1):69-75.
Contents
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病態生理
症状
原因
診断/画像所見
鑑別
治療
予後
Diagnosis
•  急性あるいは亜急性に発症した神経所見を
元に診断する.
•  診断するためのガイドラインなどは無く,
臨床所見および画像所見から診断する.
PRESの診断のための提案されたアルゴリズム
急性神経障害を1つ以上有す
る.
様々なリスク因子を1つ以上有
する・
左右対称の血管性浮腫や,
PRESに特徴的な浮腫像.
他に考え得る疾患が無い.
PRESと診断される.
TypicalMRIfindingsinPRES
A・B・C
前頂後頭パターン
D・E・F
血管枝辺域分布
パターン
G・H・I
上前頭回パターン
・PRES患者の10-25%では
頭蓋内出血を合併している.
・皮質内出血が最も多く,
クモ膜下出血が続く.
18-30%では共に出現する.
HemorrhageinPosteriorReversibleEncephalopathy
Syndrome:ImagingandClinicalFeatures
AJNRAmJNeuroradiol30:1371–79Aug2009
AtypicalMRIregionsinPRES
76人のPRES患者の画像所見をretrospecNveに検討
・前頭後頭型(98%),前頭葉(78.9%),側頭葉(68.4%)
視床(30.3%),小脳(34.2%),脳幹(18.4%)
PosteriorReversibleEncephalopathySyndrome:Incidenceof
AtypicalRegionsofInvolvementandImagingFindings
Americanjournalofroentgenology2007;189:904-912
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病態生理
症状
原因
診断/画像所見
鑑別
治療
予後
ThedifferenNaldiagnosis
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流行性脳炎
自己免疫性または腫瘍性脳炎
悪性腫瘍
CNS血管炎
脱髄症候群
中毒性白質脳症
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病態生理
症状
原因
診断/画像所見
鑑別
治療
予後
Treatment
•  現在,特異的な治療法はない.
•  治療介入の方法に関して,
RCTは未だ行われていない。
•  意識障害は改善することが多く,
症状に対応した治療が選択される.
•  重度な高血圧を有する患者では,
約25%の降圧を目標としている.
2013ESH/ESCguidelinesforthemanagementofarterialhypertension:
theTaskForcefortheManagementofArterialHypertensionof
theEuropeanSocietyofHypertension(ESH)andof
theEuropeanSocietyofCardiology(ESC).
EurHeartJ. 2013Jul;34(28):2159-219.doi:10.1093/eurheartj/eht151.
Epub2013Jun14.
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病態生理
症状
原因
診断/画像所見
鑑別
治療
予後
Prognosis
•  約75-90%の患者は完全に回復すると言わ
れている.
Posteriorreversibleencephalopathysyndrome:long-termfollow-up.
JNeurolNeurosurgPsychiatry2010;81:773–77
•  その回復までの期間は,ほとんどの患者で
一週間以内であるが,数週間かかる患者も
いる. PosteriorreversibleencephalopathysyndromeinducedbyanNVEGFagents. TargetOncol. 2011Dec;6(4):253-8.
•  約10-20%では神経学的後遺症が残る.
ClinicalspectrumandcriNcalcaremanagementofPosteriorReversible
EncephalopathySyndrome(PRES).MedSciMonit2005;11:CR549–53
Prognosis
•  約3-6%が発症してから1-3ヶ月の間に死亡する.
•  死亡原因としては出血の合併や広範囲での浮
腫による水頭症や脳幹の圧迫が見られる.
Determinantsofrecoveryfromsevereposteriorreversibleencephalopathy
syndrome. PLoSOne2012;7(9):e44534.Epub2012Sep14.
•  約5-10%で再発することがあり,コントロール不良
の高血圧患者で再発率は高いと言われている.
IshypertensionpredicNveofclinicalrecurrenceinposteriorreversible
encephalopathysyndrome?JClinNeurosci2013;20:248–52
Message
•  PRES患者の多くは高血圧や様々な誘因を持っ
ており,まずは疑ってかかるべきである.
•  約25%には頭蓋内出血を合併していることを
忘れない.
•  確かに多くの症例では症状は可逆的であるが,
一部不可逆的なものもあることを忘れない.
私見 •  PRESという病態は高血圧だけでなく膠原病や様々
な薬剤でも発症する可能性があり,症状が出た際
には否定することを検討すべきである.
•  可逆性であることがほとんどではあるが,
一部後遺症の残るものまた死亡する例もあることを
頭に置いておくべきである.
•  敗血症の患者や免疫抑制剤を使用している患者が
急に意識障害やけいれんなどの神経症状を起こし
た際には、本症を鑑別に列挙すべきである.