小水力発電に挑戦 奥越明成高等学校 機械科 片倉優介、千藤晴也、橋本優也 小池祥太、上出湧斗、日谷翔一 1 はじめに 大野は美しい山に囲まれ、名水百選に選ばれた御清水や九頭竜川、真名川 など豊富な水があります。 私たちは機械科で学んだ技術と大野の特徴を生かして、 近年注目されている「小水力発電」に挑戦し ました。企業と連携して水力発電装置を製作し 山道脇の小川に設置して1kwの発電を目指しました。 2 小水力発電の仕組み 山道脇の小川に水車を設置し、上流の取水口から水をとり、 取水槽に溜めた水を長い管路で水車に向けて放水、水車軸の回 転を発電機に伝達して発電します。 図1 小水力発電 3 現地作業 (1)測量 レベルで高低差を測定した結果、取水槽から 水車設置場所までの高低差約20m、水管のルー トは約100mありました。 図2 測量 (2)取水口の工事 図3 現地作業 小川に土のうを積んで流れをせき止め、直 径150mmのパイプを差し込み、水が漏れないよ うに砂利と土で隙間を埋めました。水量を安 定させたり制限するために、取水口から約5 mのところに取水槽を設置しました。 図4 取水口 (3)放水パイプの設置 図5 放水パイプ 取水槽に長さ4m、直径100mmのパイプを取り付け、これを25本つないで約100mの水路をつくりま した。山中での大掛かりな工事でしたが、 ㈱SP電機の方々に教えてもらいながら作業をしました。 4 発電装置の製作 (1)水車架台 水車は外形300mm、幅150mm、羽根24 枚のクロスフロー水車とし、これを固 定するための架台を40mmのアングルを 図6 水車製作図 溶接して作りました。 (2)変速機構 水車軸にVプーリを 取り付けVベルトで伝 達して発電機を回転さ せました。 図7 溶接作業 図8 V プーリ 図9 発電機 (3)発電機取り付け 4本掛プーリーと4台の発電機をVベルトでつなぐため、発電機の 位置を 少しずつずらして2台ずつ向い合せて取り付けました。 5 改良 図 10 取水パイプ増設 (1)水量を増やす 水車の回転を上げるため、取水パイプを増設 して流量を15ℓ/sから25ℓ/sに増やしました。 (2)水車の回転数を上げる工夫 水車の回転数を上げるため、実験により水の 図 11 水車テスト 当てる位置を決めました。また、パイプ断面の 面積を小さくし、羽根に効率よくあたるような 形状に加工しました。 (3)変速装置を改良し回転数を上げる 発電機は2750rpmでDC24V、19A出力します。最 初(a)のように水車軸と発電機軸を直接Vベル トでつなぐ予定でしたが、水車回転数が 図 12 放水ノズル 図 13 水車入口 図 14 変速比の改良 図 15 変速装置 150rpm、増速比4倍で発電機が600rpmしか回 転しないので、中間軸を設けて(b)のように増 速比を大きくしました。しかし発電機の台数 を増やしたところ水車回転数が下がったので、 水車軸プーリを大きくし(c)のように変更し 増速比をさらに大きくしました。 6 まとめ 装置の改良と現地での実験を繰り返し、試運 転で発電機2台が約3000rpmで回転し、LED街 灯と100W白熱灯、300W作業灯を点灯すること ができ、新聞にも掲載されました。その後も改 良を重ね、川の流量が多いときには発電機4台 図 16 小水力発電装置 図 17 完成点灯 が回転できるようになり、約1kWの発電が可能になりました。しかし、振動により発電機プーリが 外れたり、ベルトがスリップするなど1日中連続運転できないという課題も出てきました。 7 感想 高校で3年間学習した機械設計、ベルト駆動、溶接技術や旋盤 技術などを生かして製作することができました。完成したとき水 車が人の力で回転しないほど重かったのに 、水量を増やすと高速 で回転し始めたのには驚きました。現地へは8回行き、実験や設 置作業をしましたが、 外灯が点灯したとき苦労が報われた感じが しました。㈱SP電機の前田会長様はじめ社員の方々にもお世話 になり、感謝しています。課題も残りましたが、後輩に引き継い でほしいと思います。 図 18 日刊県民福井 12/16
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