集中討論 1 アクロメガリーと薬物療法 S1-2 サンドスタチン投与によりGH正常化とともにFDG-PET陰性化した GH産生腫瘍の一例 北井 隆平、橋本 智哉、竹内 浩明、久保田 紀彦、菊田 健一郎 福井大学医学部 脳脊髄神経外科 PET検査で偶然下垂体腺腫が発見される機会が増加している。今回われわれは乳癌経過観察中に発 見されたGH産生腫瘍の一例においてサンドスタチン投与中に興味深いPET所見を得られた症例を経 験したので報告する。症例は68歳女性、2008年4月乳癌摘出後に血中p53値が上昇したため、FDGPET検査がなされた。下垂体に高集積を認めたため紹介された。先端巨大症様顔貌、舌腫大、咬合不 全、無呼吸症候群、発汗を認めた。血液検査ではGH 3.1ng/dl、IGF-1 493ng/ml(SD=6.38)であった。 75gOGTTではGHは抑制されなかった。MRIにて微小腺腫を認め、GH産生下垂体腺腫による先端巨大 症と診断した。既往歴として48歳時、子宮肉腫、55歳時、甲状腺癌、65歳、左股関節人工骨頭置換術、 67歳、乳癌と頻回の腫瘍性病変の治療歴がある。摘出術を提案したが同意は得られず、サンドスタ チンによる治療を選択した。2008年7月よりサンドスタチンLAR 20mgを1回/28日周期で開始したと ころ、10月にはGH 0.53ng/dl、IGF-1 105ng/ml(SD=-0.07)、2009年6月にはGH 0.26ng/dl、IGF-1 132ng/ml(SD=0.78)と正常化した。いびき、発汗などの自覚症状も改善した。2009年6月に再び血 中p53値が増加したためFDG-PETを行った。下垂体部の集積は見られず、他の臓器にも集積は見られ ていない。FDG-PETで機能性腺腫において集積が見られる報告がある。サンドスタチン投与により内 分泌学的に正常化した際にFDG-PETの集積が見られなくなることは、腫瘍細胞の代謝や治療戦略を考 える上で興味深い所見と考え報告する。 68
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