20150928講義資料 - 名古屋大学 大学院国際開発研究科

地球環境問題,何がどう問題か
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もくじ
地球環境の教科書
1節 地球環境問題の見取り図
2節 地球システムの概観
1章 地球環境問題,何がどう問題?
3節 宇宙船地球号の未来
名古屋大学国際開発研究科 藤川清史
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2. どんな地球環境問題があるか
1. 地球環境問題への関心の高まり
地球温暖化
日本の1960年代:公害問題
化石燃料消費の増加➔温室効果ガスの増加
大気汚染,水質汚染
4大公害裁判
オゾン層の減少
冷蔵庫・空調の増加➔フロンの放出
1970年代:地球環境問題への警鐘
➔1972年国連地球環境会議
(かけがえのない地球,Only one earth)
1980年代:地球温暖化問題への注目
酸性雨
化石燃料消費の増加➔硫黄酸化物,窒素酸化物
生態系の破壊 (生物多様性の減少)
農業,林業,養殖業
南極の棚氷の崩壊速度の速まり
海面上昇➔太平洋に沈む国
海洋汚染
工場排水,船舶排水
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図1 地球環境問題の相互関係
1. 地球と生命の歴史 1
地球の誕生
46億年前 原始太陽
マグマオーシャンの地球
原始海洋と原始大気
惑星の衝突がおさまる
気温が下がり,水蒸気が雨に➔海を形成
当初,大気のほとんどが二酸化炭素
二酸化炭素は海に溶け込む➔大気は窒素
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地球と生命の歴史 2
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地球と生命の歴史 3
生命の誕生
人類の誕生
40から35億年まえ
海底の熱水噴出孔付近での微生物
酸素なしで有機物からエネルギーを抽出する生物
240万年前 ホモ・バビリス
170万年前 ホモ・エレクトス(原人) 火を使用
20万年前 ホモ・サピエンス
1万2000年前 農耕と牧畜=ある意味環境破壊の始まり
酸素の形成と生物の発展
産業革命
光合成を行う生物➔二酸化炭素から酸素を生成
酸素呼吸する生物の誕生
(酸素ありのほうがエネルギー効率がよい)
空気中の酸素が増加➔オゾン層の形成
➔紫外線減少➔地上での生物が誕生
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石炭を動力とする蒸気機関
18世紀:イギリスで綿製品の機械を使っての大量生産
蒸気機関の交通への応用
大気汚染や水質汚染の始まり
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2. 地球システム概観 1
2. 地球システム概観 2
固体地球圏
大気圏
地球の半径は6400km
地殻は陸地で20-60km,海洋で5-10km
地殻は玄武岩と花崗岩.
酸素,珪素,アルミニウム,鉄
地表から3万km
空気は地表から5万m:窒素と酸素でほとんど
酸素:生物の呼吸,ものの燃焼
二酸化炭素:光合成,温室効果
水圏
生物圏
表面の70%が海
太陽系の惑星の中で,唯一海を持つ
海があることで気候が穏やか➔生物に好都合
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生態系:生産者,消費者,分解者
無機物と有機物の循環
食物連鎖と生態ピラミッド
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図2 生態ピラミッド
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1. 地球という生命体
ボールディングのたとえ(1966)
宇宙船地球号
カウボーイ型と宇宙飛行士型
資源の有限性と廃棄物の処理上の有限性
フラー(1969)「地球船宇宙号の操縦法」
地球を精緻な機械と理解する
人類がそれを操縦する
ローマクラブ(1972)「成長の限界」
システムダイナミクス
現在文明はやがて行き詰ることを予測
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4. 人間生存の基盤
(1) 人間生活に必要なもの
3. 宇宙船地球号のかかえる問題点
加藤英俊(1991)「宇宙船地球号の行方」
環境問題は,地球規模になっている
地球環境が悪化している総論では認識は一致し
ているが,各論になると,手がつけられない.
科学技術は環境問題にとって両刃の刀:自動車
を増やすのも排ガスを浄化するのも科学技術
先進国と途上国の格差が,環境問題の解決を複
雑にしている.
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「バイオスフェア2」の実験
アリゾナ州の砂漠に模擬地球
1991年9月から1993年9月の2年の予定
面積12,700平方キロを外界から遮断
人間8人,3000種類の生物
1992年6月に酸素が急激に減少して実験中止
地球環境を制御することが難しいことがわかった
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図3 メドウズらによる標準的な流れ
(2)脅かされる人間の生存
メドウズ(1992)「限界をこえて」
1972から20年後,モデルを修正
標準ケース(図3)と資源生産性向上ケース(図4)
ちなみに,資源生産性=ファクターとよぶ
資源の消費を半分して性能2倍にすれば,ファクター4
メドウズ(1992)の研究の意味は,
図3と図4のどちらがよいかではなく,
人類の将来はある程度選択できるということ.
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図4 生産性向上を仮定した予測
5. 地球上に何人生存できるか
増加し続ける人口
250年前までは緩やかに増加
産業革命後,機械化による農業生産の増加
➔人口が急激に増加
デーヴィの階段 (図6)
軸の単位を変えるとグラフの形も変わる
農耕の始まりでも人口のジャンプがあった
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図6 人口の推移
図5 紀元前・紀元後の世界の人口変化
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図7 収容可能人口の地域分布と現状人口
地球の収容人口の推計
金沢大学の後藤研究室
ケース1:潜在農地面積に対して,1980年の各国の一人
当たり食糧消費原単位➔77億人
ケース2:1980年の世界平均の一人当たりの食糧消費原
単位➔100億人
ケース3:1980年のアメリカの一人当たりの食糧消費原単
位➔39億人
農業生産の効率化により収容可能人口は増えるか
緑の革命で人口が増えたのは事実
しかし,環境制限を考えると上限があるだろう.
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図8 エコシステムと社会システムの
持続不可能な関係
ヒューマンエコロジー
環境問題とは,人間と生態系との持続不可能な相
互作用のこと
人間の移住
(自然を搾取する)新技術
コモンズの悲劇
都市化
持続可能性を維持するためのデイリーの3原則
再生可能資源は,再生ペース以上に消費しない
再生可能資源は,代替資源の開発以上に消費しない
環境負荷は,環境の吸収能力を上回らない
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図9 1800年から2000年までの先進国と
発展途上国の人口増加
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