χ 2 検定解説

■χ2 検定
一つの母分散に関する検定と推定
解説
●χ2 分布(カイ2乗分布)
n 個のデータ x1,x2,・・・,xn が互いに独立に正規分布 N(μ,σ)に従うとき、
χ2=S/σ2
は、自由度φ=n-1 のχ2 分布に従う。
χ2分布
0.18
0.16
0.14
0.12
確率密度 0.1
f(χ2) 0.08
累積確率
P
0.06
0.04
0.02
χ2
0
0
5
10
15
χ2(φ,P)
-1-
20
25
●一つの母分散に関する検定手順
一つの母分散σ2 に関する検定では,帰無仮説を H0:σ2=σ02(σきは指定された値)と設定する.
02 
帰無仮説の下で構成される検定統計量は
S
 02
である.
χ02 は H0 が正しい下で、自由度φ=n-1 のχ2 分布に従うから,次の手順に従って検定を行う。
手順 1
手順 2
帰無仮説 H0 と対立仮説 H1 を明確にする.すなわち,
(1)H0:σ2=σ02(σ02 は指定された値)
H1:σ2≠σ02(両側検定)
(2)H0:σ2=σ02(σ02 は指定された値)
H1:σ2>σ02(右片側検定)
(3)H0:σ2=σ02(σ02 は指定された値)
H1:σ2<σ02(左片側検定)
のいずれかを実験の目的に応じて選択する.
有意水準αを定める.α=0.05 とするのが一般的である.
手順 3 手順 1,2 に応じて H0 の棄却域を定める.
(1)R:χ02≦χ2(φ, 1-α/2) または χ02≧χ2(φ, 1-α/2)
(両側検定)
2
2
(2)R:χ0 ≧χ (φ, α)(右片側検定)
(3)R:χ02≦χ2(φ, 1-α)(左片側検定)
手順 4
データ x1,x2,・・・,xn を取り,検定統計量χ02 の値を計算する.
0 
2
S
 02
 x   x  / n

2
i
i
 02
φ=n-1
手順 5 χ02 の値が手順 3 で定めた H0 の棄却域に入れば有意水準αで有意であると判定し,帰無仮説
H0 を棄却して,対立仮説 H1 を積極的に支持する.
一方,χ02 の値が手順 3 で定めた H0 の棄却域に入らなければ,有意水準αで有意でないと判
定し,帰無仮説、H0 は棄却できない.
上の手順 3 で述べたそれぞれの場合の H0 の棄却域を次の図に示す.
●一つの母分散の推定手順
母分散σ2 の点推定については分散 V 
S
を用いられ、母分散σ2 の信頼区間は、χ2=S /σ2 が自
n 1
由度φ=n-1 のχ2 分布に従うので,以下の手順で求められる。
手順 1
母平分散σ2 の点推定を計算する
点推定:
手順 2
ˆ 2  V 
S
n 1
信頼率 100(1-α)%における母分散σ2 の区間推定を行う
S
 ( ,1   / 2)
S
 2
 ( , / 2)
信頼上限
ˆU 2 
信頼下限
ˆ L 2
2
-2-
(a)H0:σ2=σ02,H1:σ2≠σ02(両側検定)における H0 の棄却域
(b)H0:σ2=σ02,H1:σ2>σ02(右片側検定)における H0 の棄却域
(b)H0:σ2=σ02,H1:σ2<σ02(左片側検定)における H0 の棄却域
図 一つの母分散の検定の棄却域
-3-
●例題
A 部品の寸法の母分散はこれまで(0.50mm)2 であった.この度,製造機を最新式のものに変更したの
で,母分散が小さくなったかどうかを調べるためにサンプルサイズ n=10 のデータを取ったところ次の
ような値が得られた.
10.1,10.4,10.2,9.6,10.3,10.2,9.8,10.3,10.1,9.9
【検定の手順】
手順 l H0:σ2=σ02(σ02=0.502),
H1:σ2<σ02
母分散が小さくなることしか考えられないので左片側検定を採用する.
手順 2 α=0.05
手順 3 R:χ02≦χ2(9, 0.95)=3.33(左片側検定)
(φ=n-1=10-1=9)
手順 4 データより
 x 
S  x 
2
i
i
02
 1018.65 
n
S
0.5690
 2 
 2.276
0.50 2
0
100.9 2
 0.5690
10
が求まる.
手順 5
χ02=2.276≦χ2(9,0.95)=3.33 となるので有意である.
帰無仮説 Ho を棄却して,
「最新式の製造機を用いることによって A 部品の寸法の母分散σ2 は
従来の値 0.502 より小さくなった」と判断する.
【推定の手順】
手順 1
母平分散σ2 の点推定を計算する
点推定:
手順 2
ˆ 2  V 
S
0.5690

 0.06322  0.2512
n  1 10  1
信頼率 100(1-α)%=95%における母分散σ2 の区間推定を行う
φ=n-1=10-1=9 である.
S
S
0.5690
 2

 0.2107  0.459 2
 ( ,1   / 2)  (9, 0.975)
2.70
S
S
0.5690
 2
 2

 0.02992  0.1732
 ( , / 2)  (9, 0.025) 19.02
信頼上限
ˆU 2 
信頼下限
ˆ L 2
2
-4-