熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System Title セラミックスヒータを利用したフリーピストン形スター リングエンジンの高効率化に関する研究 Author(s) 赤澤, 輝行 Citation Issue date 2015-03-25 Type Thesis or Dissertation URL http://hdl.handle.net/2298/32324 Right 別紙様式8 研 究 主 論 文 抄 録 論文題目 セラミックスヒータを利用したフリーピストン形スターリングエンジンの高効率化に関す る研究 熊本大学大学院自然科学研究科 産業創造工学専攻 先端機械システム講座 ( 主任指導 論文提出者 藤原 和人 教授 ) 赤澤 輝行 主論文要旨 1章 序論 東日本大震災以降、日本の原発重視のエネルギー政策から大きな転換が求 められている。家庭部門の小世帯をターゲットにした省エネルギー並びに創 エネルギーにつながるコージェネの必要性ならびに、スターリングエンジン について述べる。これまでのスターリングエンジンの歴史に触れ、スターリ ングエンジンの用途先として本研究に関連する家庭用コージェネや太陽熱に よって発電を行う太陽熱発電や木質バイオマスの直接燃焼によって発電を行 う木質燃焼発電などについてレビューしている。 次にスターリングエンジンの基本構造と作動原理について紹介し、本研究 に適したエンジンの基本形式並びに求められる要求性能、従来型スターリン グエンジンの特徴についてまとめている。また簡単なモデルに対する解析結 果に基づいて、スターリングエンジンの研究に必要な作動ガス往復流の挙動 について解説する。 2章 家庭用コージェネ向けスターリングエンジンの開発 家庭用コージェネで商品化されているものは、都市ガス及びLPガス等を エ ネ ル ギ ー 源 と す る 。そ の 中 で 、燃 料 電 池 タ イ プ は 固 体 高 分 子 形( PEFC)、固 体 溶 融 形 (SOFC) の 製 品 を 商 標 エ ネ フ ァ ー ム と し て 、 ま た ガ ス エ ン ジ ン タ イ プ を商標エコウィルとして、都市ガス及びLPガス等を供給するガス会社や製 造メーカ(電機・自動車メーカ及び給湯器メーカ)が中心となって販売して い る 。こ れ ら の 家 庭 用 コ - ジ ェ ネ は ほ と ん ど 戸 建 住 宅 及 び 4 ~ 5 人 家 族 を 標 準 モデルとしている。そこで、課題となっている小世帯向けのコージェネシス テムの仕様を小世帯家族の電力及び温水負荷から見積もる。本コージェネシ ステムとしては、例えば、集合住宅のような世帯であっても、狭所スペース のベランダ等に設置ができる程の省設置スペース性に優れた構成にする。 小世帯向けのコージェネシステムに対応する小型フリーピストン形スター リングエンジンの検討を行った。コージェネシステムに収納できるエンジン サイズ、エンジンの基本設計、開発プロセス、全体性能予測、エネルギーフ ロー、簡易性能予測プログラムの概要について説明する。 基本設計については、メタンガスの燃焼発熱量を基準とした熱エネルギー 解析、簡易性能予測により検討している。 さらに、エンジン性能解析として、等温モデルを基礎としたエンジンの全 体性能予測、エネルギーフロー等の分析を行っている。 また、小世帯向けコージェネとして提案したスターリングエンジン給湯シ ステムの構成及び作動原理について述べた。次にエンジンの駆動制御方式の 検証を行うと共にコージェネシステム全体構成の検討を行い、省設置スペー ス性並びに短時間の発電起動性について実証し、小世帯向けのコージェネと しての有効性を確認した。 次章以降では、フリーピストン形エンジンを高性能化するための要素技術 ついて考察し、構成上最も重要なセラミックスヒータ及びリニア発電機につ いて説明している。 3章 セラミックスヒータの開発 まず、セラミックスヒータに使用するセラミックス材料の素材調査を行っ た。フリーピストン形エンジンの設計に必要となる強度特性の試験について 説明し、候補となるセラミックス素材の試験片について調べている。具体的 には、セラミックス素材の基本特性を把握するために本試験片の表面温度を 1200℃ 及 び 1400℃ の 条 件 下 に 加 熱 す る 過 酷 試 験 を 行 っ た 。こ の 結 果 に よ り 破 壊確率を考慮したセラミックスヒータの設計強度を策定した。 次に熱応力試験並びに加工性の検証のため、予備検討用セラミックスヒー タを製作した。ここでは、設計強度及び性能を満たすセラミックスヒータ形 状を構造解析及び熱流体解析によって求めた。 最終的に開発したセラミックスヒータを性能評価用エンジンに搭載し、ヒ ータの基本性能を把握するための単体試験を実施した。試作した複数の形状 のセラミックスヒータに対して行った単体試験の結果に基づき、ヒータを決 定したが、その経緯を中心に述べている。 4章 新方式のリニア発電機の開発 高効率リニア発電機としては可動磁石型を採用した。従来のリニア発電機 は可動磁石の磁路経路に 2 箇所の空隙が必要で、目標発電出力を達成するた めには、多くの高価なネオジウム磁石を必要とする。そこで、ネオジウム磁 石の使用量を半減できる改良型リニア発電機の開発を行った。リニア発電機 開発にあたっては、磁界解析データを基に、磁路経路の空隙を1箇所に減ら し た One-Air-Gap の リ ニ ア 発 電 機 を 考 案 し た 。 本リニア発電機は小型化に寄与すると共に、従来と異なる特長を有するこ とについて説明している。また、リニア発電機の単体性能評価装置を設計・ 製作し試験を行っているが、その結果についても述べている。この中で、両 持ち板ばねを用いることで摺動レスとなる支持構成を考案している。 最後に、求められた低出力時から定格発電機出力時までの発電機効率特性 について述べている。 5章 フリーピストン形スターリングエンジンの性能評価 フリーピストン形スターリングエンジンの性能評価にあたり計測システム を構築した。さらにフリーピストン形スターリングエンジンの各部の損失を 把 握 す る た め に 、 エ ン ジ ン 評 価 用 電 気 ヒ ー タ (FP1) や 燃 焼 器 ( バ ー ナ ) 検 討 用 金 属 ヒ ー タ( FP2)を 設 け た 試 験 用 エ ン ジ ン も 製 作 し た 。こ れ を 用 い て FP1 と FP2 の 性 能 向 上 を 計 る こ と が で き る よ う な 、セ ラ ミ ッ ク ス ヒ ー タ エ ン ジ ン および再生器について検討を行った。 プロトタイプエンジンの詳細な解析モデルを作成し、数値シミュレーショ ンで分析することによってプロトタイプエンジンの仕様を決定するとともに 試 験 デ ー タ を 用 い て 各 部 の 損 失 分 析 を 実 施 し 、エ ン ジ ン 運 転 性 能 を 評 価 し た 。 最後に本エンジンにマッチした燃焼器(スリットバーナとベンチュリーバ ーナ)の開発についても触れている。 6章 総括 セラミックスヒータを利用したフリーピストン形スターリングエンジンの 高効率化の研究について総括した。要素技術開発の部分は、セラミックスヒ ータ及び新方式のリニア発電機についてまとめ、また、システムとしてのフ リーピストン形スターリングエンジンの高性能化については、実測結果より 得られた効率や出力を明示してまとめている。最後に本発電システムの家庭 用小型コージェネシステムとしての実用化可能性について及言している。
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