病理科における遺伝子解析検査への取り組み 鹿児島県 松崎 奈津子

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病理科における遺伝子解析検査への取り組み
~i-densy IS-5320 の導入前後の変化について~
◎松崎 奈津子 1)、三宅 奏子 1)、市野 真央 1)、千竃 留奈 1)、内村 清孝 1)、田中 貞夫 1)
公益社団法人鹿児島共済会 南風病院 病理科 1)
【はじめに】近年、薬剤の投与効果を遺伝子検査によって
【方法と結果】従来の外注検査では、検査依頼から結果報
予測する投薬前診断が注目されている。すでにがん治療領
告まで 6 日必要であったが、院内で精製核酸の抽出に DNA
域においては、分子標的薬の選択・治療方針決定のための
FFPE Tissue Kit を用い、PCR から解析までを i-densy
投薬前診断がかかせないものとなってきている。今回、当
IS-5320 で行った場合、依頼から報告まで 2 日となった。
科においても固形腫瘍における遺伝子検査を院内導入した
UGT1A1 遺伝子変異解析検査に関しては、依頼当日に結果
ので、検査依頼から結果報告までの所要時間短縮による分
報告が可能となった。変異陽性率は、外注検査とほぼ変わ
子標的薬治療への貢献および実際の遺伝子検査の方法や運
らない結果であった。また、従来の外注検査とのデータ比
用について報告する。
較においても、EGFR および KRAS 遺伝子変異検査、
【概要】当科は合計 8 名(病理医 2 名、臨床検査技師 5 名、
UGT1A1 遺伝子解析検査ともに 100%一致した。遺伝子検
事務員 1 名)体制で病理組織検査を行っており、従来遺伝
査導入により心配された業務量の増加については、新しく
子検査は外注検査で行ってきた。しかし、臨床側からの問
職員を雇う必要もなく、他業務に支障をきたすこともなか
い合わせに対する返答に時間がかかること、 検体が適切で
った。
あるか否かの検討が不可能であったことから、部内検討を
【まとめ】遺伝子検査を院内導入したことにより、迅速な
行い、今回 EGFR および KRAS 遺伝子変異検査、UGT1A1
結果報告が可能となった。今回導入した i-densy IS-5320
遺伝子解析検査を院内導入することとなった。導入にあた
は、病理検体からの EGFR、KRAS 遺伝子変異検査のみだ
り様々な装置を検討し、操作性、拡張性、性能を考慮した
けでなく、血液検体からの UGT1A1 遺伝子解析検査も可
結果、遺伝子解析装置「i-densy IS-5320」(アークレイ社)
能であるため病理部門として個別化医療の実現に大きく貢
の採用にいたった。
献できるものと考えられる。 連絡先:099-226-9111