修 士 論 文 の 和 文 要 旨

修 士 論 文 の 和 文 要 旨
大学院
電気通信学研究科
氏
論
名 樋口
文
題
敬士
博士前期課程
情報通信工学専攻
学籍番号 0430037
目 Pairing計算に適した楕円曲線の構成法
要
旨
ID-based暗号系やshort signatureなどで,有限体F q 上で定義された楕円曲線上
のpairingを用いた暗号プロトコルが提案されている.Pairingを用いた暗号の安
全性は,楕円曲線E(F q )の位数 r の部分群G上での楕円離散対数問題(ECDLP)と
有限体乗法群内で,1の r 乗根からなる部分群μ上での離散対数問題(DLP)に帰着
できる.現在のところECDLP,DLPは,それぞれlog r ≧ 160, log q k ≧1024を満
たしているならば計算量的に困難である.
楕円曲線をランダムに生成した場合,埋め込み次数 k は高い確率で非常に大き
な値をとることが知られている.k が非常に大きい値のとき,pairingを用いた暗
号プロトコルを実装する上で,有限体乗法群上の演算が困難となる.そのため,
一般的に埋め込み次数が小さいほうが実装上はよい.
Pairingを用いたプロトコルでは,小さい埋め込み次数をもつsupersingular曲
線が用いられることが多い.しかし,supersingular曲線は,埋め込み次数によっ
て,標数などに制限が存在し,それが問題となる.そのためsupersingular曲線で
はない,小さな埋め込み次数を持つ楕円曲線が必要である.
Supersingular曲線ではない,小さい埋め込み次数をもつ楕円曲線の生成法が研
究されている.既存の生成法として,MNT法とBLS法が知られている.MNT法,BLS
法は,楕円曲線の生成法のひとつCM法に基づいて楕円曲線を生成する.楕円曲線
の有理点群E(F q )の位数 r をもつ部分群をGとおき,ρ = log q/log rとおく.
MNT法は,埋め込み次数が3, 4, 6のみに適用でき,ρ∼1の楕円曲線を生成する.
BLS法は,任意の埋め込み次数に対して適用でき,一般ρ>2の楕円曲線を生成する.
Pairingを用いたshort signatureにおいては,ρ∼1であることが重要である.
本研究では,Blömer-May法を用いて,埋め込み次数5, 7をもちρ∼1となる楕円曲
線の構成について考察した.その結果,Blömer-May法を用いた方法では,目的の
楕円曲線を生成するのは難しいことがわかった.