KAPシステムの紹介(25)

KAPシステムの紹介(25)
[紹介]
-VPSを使ったKAPシステムのクラウド化-
鉄構事業部
鉄構システム部
2.VPSとは
1.はじめに
KAPシステムは,OSをUNIXを基本として,S
1台のコンピュータに,Xen・KVMなどの技術を
unOS・Solaris・Linuxで開発・販売・
用いて,仮想コンピュータを何台も起動させるサービス
運用してきた.世間の風潮からも,Windowsでの
である.KAPシステムのように,動作に必要とするサ
活用・販売が希望されてきた.その要望に対し,以前か
ーバプログラムを自由にインストールし,環境を実装で
らの試みで,vmware・VirtulBOXなどを
きるサービスである.一般に専用サーバは,その機能に
使って,Linux上にWindowsをインストール
限定した上で,コストを下げて設計されている.従来の
して活用してきた.インターネットの高速化,モバイル
データサーバや,Webサーバがこれに当たる.かつて
化に伴い,ネット上での運用(クラウド化)を考えた.
のWebKAP は,基本データ(柱製品1本)をアッ
今回試した方法は,VirtualPrivateSe
プロードして,KAPシステム上で処理を行い,作成さ
rverで
れた図面をダウンロードするシステムであった.こちら
略称は:VPSである.
図- 1
VPSKAP画面
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片山技報
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が提示するデータを入力することで,決まった図面を提
3.VPSでのメリット・デメリット
供することを試みたWeb上のシステムであった.その
VPSでのKAPシステム活用には,ユーザ側とって,
ため,KAPシステムの自由度の高い図面を提供できな
ネット環境が整っていれば,いつでもどこでもデータ入
かった.
力,および処理・図面確認・見積もり重量の確認を行え
現在,KAPシステムには,Webサーバの機能を使
る.専用のKAPシステムがセットされたコンピュータ
って,KAP内で作成した図面,3次元モデル,製品管
ではなく,手元のWindowsマシンやタブレットか
理資料などの出力物が充実している.クラウド化に対し
らブラウザを通して運用が行える.
て,最もネックになっていたものが,KAPのXサーバ
必要な情報は,URLアドレスとログイン名・パスワ
を使ったスタートプログラムにあった.マウス操作で部
ードである.手元にKAPシステムのコンピュータ本体
材を配置したり,会話型データ入力を行うエントリーウ
がないので,ユーザ側で起こるハードトラブルも少なく,
ィジェットをWindows上で行なう方法がなかった.
入力した内容や作成した図面・データベースもサーバー
今回選んだVPSサーバ内には,KVMが提供されて
自体で定期的にバックアップされているので,故障によ
いる(図-1).Webブラウザでアクセスしたページ
るデータ損失の問題がほぼ無くなる.我々も導入の時期
には,デスクトップで販売している画面がIE・Fir
のOSとハードとの相性トラブルも回避できる.
efox・Chromeのウィンドウ内で表示されてい
今後の課題にはなるが,個々にシステムのインストー
る.ブラウザ上での操作は,アクセスするマシンとイン
ルも無くなる予定である(サーバ側で 行う 内容はファイ
ターネットの通信速度によって異なるが,社内で使った
ルのコピーだけとなる).その結果,短時間でシステム
場合では,マウス操作にストレスが感じなかった.処理
を導入できる.
ただし,その反面,サーバ内に構築されるので,デー
速度もサービス会社からの公開内容では,1世代前に販
タ量が制限される.このサーバから割り当てられる容量
売していたコンピュータと同等の性能と同じであった.
今回選んだKVMでは,予め提供されているOSの他
は200Gである.またサービス会社により,ハード構
に,こちらの望んだOSをネット回線を通してインスト
成が決まっている.金額によっても異なるが,CPUの
ールできるため,現在販売しているVineLinux
性能・メモリの大きさ・提供されるハードディスクの量
で試すことができた(図-2).
にこちらから指定はできない.そのため,年々進歩する
CPUの性能も導入した時期に固定されてしまうので,
最新のCPUで処理できない.
4.おわりに
VPSにより,KAPシステムの入力に対する課題は
解消できた.また,Windowsでの操作も対応でき
た.今回紹介した内容は,KAPの操作・処理について
図-2
KVMへのインストール
の技術的内容である.実際のところ,クラウド化した後
のメンテナンスの方法は決まっていない.
また,ユーザが作成した出力物をどうのように手元
(図面紙)にする方法が決まっていない.DXF,TD
X,SVGに変換してダウンロードさせるのが一番いい
方法であるが,ユーザ側にとって容易であるかは疑問視
されることである.この問題を解決した後,このシステ
ムをどのように販売していくのか検討する必要がある.
(文責:永田多賀夫)
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