論 文 要 旨 所属ゼミ 小林喜一郎研究会 学籍番号 81330472 氏名 久保 徹 (論文題名) 新興国企業の海外市場進出の成功要因に関する一考察 (内容の要旨) 【研究の目的】 本研究の目的は2つある。1つ目は、新興国を出自とする企業が海外市場進出を成功することが できた要因を、明らかにすること。2 つ目は、その成功要因を理解したうえで日本をはじめ先進国企 業が、先進国企業との競争をどのように進めるべきかの示唆を得ることである。 【研究方法】 先行理論研究を基に、新興国企業のリバース・イノベーション戦略、外部環境要因、内部要因の 視点から分析を行う。外部環境要因については、 「自国から得られる競争優位」、「自国と進出国との 差異について分析」を行う。内部要因については、 「海外市場への参入形態」 、「海外市場での各バリ ューチェーンの活動内容」 、 「経営管理能力」の分析を行う。 【結論】 定性分析から得られた新興国企業の成功要因は以下の5点である。 ①自国で成功し、安定したキャッシュフローを得ていることである。 参入国で成功するまでには、多大な時間と投資が必要である。自国で競合他社との競争に勝ち、 巨大な需要から獲得した潤沢なキャッシュを、先進国市場へ投資しなくてはならない。 ②価格競争力のある既存の自社製品で参入し、独自のターゲットを明確にすることである。 参入国市場の既存競合他社との真っ向勝負は避け、先進国企業の製品よりも低価格での市場投入 することが必要となる。自社が所属する業界によってターゲットの特性を変えることが必要。 BtoB 企業は、『主流市場』(規制や要求水準を満たす低価格製品で、既存の主流市場を標的)を、 BtoC 企業は、 『取り残された市場』(新興国市場と似た需要を持った顧客が先進国にも存在)をター ゲットにするべきである。 ③完全所有子会社型で参入することである。 高いオーナーシップにより、状況変化へ対応するための迅速かつ柔軟な意思決定が可能となる。 また、子会社設立による現地雇用創出により、自社ブランドの認知向上と、現地政府や地方政府 との関係を良好なものとし、ダンピングを受けるリスクを減らすことができる。所属する業界に よって設立方法が異なる傾向にある。BtoB 企業は、買収/提携で子会社設立(法律や規制に対応し たバリューチェーンの自前構築が困難)、BtoC 企業は、自前にて子会社設立(自前でのバリューチ ェーン構築が容易)で設立する。 ④製品の付加価値を高めるために先進国での研究開発で最新の技術を獲得することである。 継続して成功をするためには最新技術を自社製品に取り込み付加価値を高めることが必要であ る。先進国での研究開発は質の高い研究開発人材や情報が集めやすいため、技術獲得が容易。競 合他社との同質化を防ぎ持続的なイノベーションのために、最新技術の獲得しなければならない。 ⑤企業戦略策定が可能な経営人材と参入国での事業戦略実行ができる現地トップの登用。 海外での継続した成功のためには、戦略立案や経営判断など、高度な経営管理能力が必要となる。 経営層には MBA や先進国企業経験により、系統だった経営管理能力を持った人材が在籍してい る。自国と状況が異なる先進国では、自社の戦略を柔軟に実行しなければならない。現地のビジ ネスに精通しており、柔軟な事業運営ができる人材を現地トップとして登用する必要がある。
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