2014 年の取引額は最高を 更新

DTZ Research
INVESTMENT MARKET UPDATE
2014 年の取引額は最高を
更新
Japan Q4 2014
16 January 2015
Contents
Investment volume
2
Property type
2
Investor type
2
Source of capital
3
Significant deals
3
Outlook
4

2014 年第 4 四半期の商業不動産取引額(住宅、ホテルを除く)は、大きく跳ね上がり、
前期の 6,509 億円からほぼ倍、104%増の 1 兆 3,275 億円となった(図 1)。

この第 4 四半期の高い取引額は 2014 年の総取引額を引き上げ、2013 年を 14%上回
る、4 兆 433 億円に押し上げた。その結果、年間取引額は、前回ピークの 2007 年を
12%上回り、金融危機後の最高額を記録した。

予想どおり、今期最大の取引は「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」のオフィス部
分の売却であった。シンガポールの政府公社である GIC が、セキュアード・キャピタル・
インベストメント・マネジメントから取得し、取得額は約 1,700 億円と報道されている。東
京都心の最優良エリアに立地する物件は、そのほとんどが国内大手のデベロッパーの
所有となっており、投資市場に登場することは稀である。そのため、本取引は東京の優
良オフィスビルの希少な投資案件として、多くの投資家の注目を浴びた。

J-REIT は、今期は全体に占めるその取引の割合を減少させたものの、依然、投資市場
の主力であった。第 4 四半期の新規上場 3 件と合わせると、2014 年の上場は計 6 件と
なり、2013 年と同数となった。2015 年も数件の上場が予定されており、今後も J-REIT
が投資市場を支えていくものと予想される。

2014 年の投資市場は大型取引により押し上げられたが、2015 年については、そうした
大型取引は幾分少ないと考えられ、取引額の減少が予想される。しかしながら、オフィス
市場の更なる改善も予想され、2015 年の不動産投資市場は引き続き活況に推移するも
のと思われる。
Author
Kayoko Hirao
Head of Japan Research
+81 (0)3 5512 8213
[email protected]
図1
不動産取引額 (単位:10 億円)
Contacts
4,000
Andrew Ness
Head of North Asia Research
+852 2507 0507
[email protected]
3,500
3,000
2,500
2,000
Hans Vrensen
Global Head of Research
+44 (0)20 3296 2159
[email protected]
1,500
1,000
500
0
2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
Q1
Q2
Q3
Q4
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1
Japan Q4 2014
取引額
図2
第 4 四半期の投資は拡大、年間取引額は過去最高へ
不動産取引額 (単位:10 億円)および前年比
2014 年第 4 四半期の商業不動産取引額(住宅、ホテルを除く)は、
大きく跳ね上がり、前期の 6,509 億円からほぼ倍、104%増の 1 兆
3,275 億円となった(図 2)。取引額は 2 四半期連続で減少してい
たが、今期は反転した。この第 4 四半期の高い取引額は、2014 年
の総取引額を、2013 年を 14%上回る、4 兆 433 億円に押し上げ
た。その結果、年間取引額は、前回ピークの 2007 年を 12%上回
り、金融危機後の最高額を記録した。
4,000
120%
3,500
100%
3,000
80%
第 4 四半期には 1,000 億円を超える大型取引が 2 件あり、総取引
額を押し上げた。また、J-REIT も再び勢いを増し、物件取得を活発
化させた。今期は 3 つの J-REIT による新規上場があり、既存
REIT も公募増資を通じ、保有資産を拡大させた。しかし、利回りは
引き続き低下傾向にあり、上向く気配を見せてはいない。REIT は
通常リスクを避け、投機的な投資を行わないため、利回りの低下は
優良資産の取得競争を激化させている。しかし、J-REIT はスポン
サーとのネットワークサポートを通じ、資産取得を遂行した。
1,000
-20%
500
-40%
60%
2,500
40%
2,000
20%
1,500
0%
0
-60%
2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
Q1
Q2
Source: DTZ Research
Q3
Q4
y-o-y change (RHS)
図3
セクター種別
セクター別取引額 (単位:10 億円)
オフィスが全体の 75%を独占
1,400
今期は幾つもの大型のオフィス取引があったため、セクター別では
オフィスがトップとなった。また、前期に比べるとセクターの分散は
少なかった。第 4 四半期のオフィス取引が全体に占める割合は
75%であった(図 3)。2014 年全体では、オフィスが 57%、続いて
リテールが 17%、複合施設が 12%であった。
1,200
1,000
800
600
400
200
投資家種別
Retail
Industrial
Q4 2014
REIT を中心とした上場不動産ヴィークルは、取引額全体に占める
割合を前期の 34%から今期は 30%に減少させたものの、第 4 四
半期も依然最大の買い手であった(図 4)。第 4 四半期に新たに上
場を果たした J-REIT は、日本ヘルスケア投資法人、トーセイ・リー
ト投資法人、積水ハウス・リート投資法人の 3 件である。日本ヘル
スケアは、日本初のヘルスケア・セクター特化の REIT である。長
寿国家である日本において、ヘルスケア資産はポテンシャルがある
ため、投資家、金融機関、デベロッパー、住宅メーカーといった市場
プレーヤーの注目を集めている。非上場の不動産ヴィークルが今
期は全体の 20%を占め、2 番目の買い手となったが、同時に、非
上場の不動産ヴィークルは、最大の売り手でもあった(図 5)。
Q3 2014
Q1 2014
Office
Mixed Use
Source: DTZ Research
REIT が依然トップ
Q2 2014
Q4 2013
Q3 2013
0
Other/Unknown
図4
投資家別取引割合
100%
80%
60%
40%
Quoted Property Vehicle
Quoted Property Company
Institution
Private Property Vehicle
Public Sector/Government
Other/Unknown
Q4 2014
Q3 2014
Q2 2014
Q1 2014
Q4 2013
0%
Q3 2013
20%
Corporate
Private Property Company
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Investment Market Update
2
Japan Q4 2014
資金の出所
図5
第 4 四半期の海外投資家のシェアは拡大
投資家別取引(取得・売却)2014 年第 4 四半期 (単位:10 億円)
引き続き市場は国内投資家が多くを占めているが、第 4 四半期は
海外投資家もその割合を増加させた(図 6)。海外投資家の取引額
に占める割合は、第 3 四半期の 14%に対し、今期は 20%であっ
た。シンガポールの投資家による大型のオフィス取引が起因してお
り、第 4 四半期、海外投資家は買い越しとなった(図 7)。この結果、
2014 年を通じた海外投資家の割合は 15%、一方 2013 年は 9%
であった。
海外投資家による日本投資への意欲の表れは、異なる海外投資
家による 3 件の取引を生んだ、東品川の物件の入札から読み取る
ことができる。この入札対象は、2000 年台初旬に完成した再開発
プロジェクト、「品川シーサイドフォレスト」のうちの一部である。日本
たばこが所有する 3 棟のオフィスビルの売却が、今回進められた。
買主は、現在中国の復星集団傘下のイデラキャピタルマネジメント、
ローンスターのファンド、そしてエリオットのファンドであり、それぞれ
別々のオフィスを取得した。本入札は当初 2010 年に発表されたが、
不調に終わっており、2014 年末、ようやく買い手が確定した。
400
200
0
-200
-400
-600
-800
Purchase
Source: DTZ Research
Sales
Netposition
図6
資金別取引内訳(国内・海外投資家)
40%
20%
Domestic purchase
Source: DTZ Research
Q4 2014
Q3 2014
Q2 2014
Q1 2014
0%
Foreign purchase
図7
資金別取引(取得・売却・国内・海外投資家) (単位:10 億円)
1,600
1,200
800
400
0
-400
-800
-1,200
Domestic purchase
Foreign purchase
Domestic sales
Q4 2014
Q3 2014
Q2 2014
-1,600
Q3 2013
商業不動産以外であるが、今期は大型の住宅ポートフォリオ取引
が行われたニュースが目を引く。ブラックストーンは日本 GE の住
宅関連ビジネスを約 2,000 億で取得した。本ビジネスは主に東京、
大阪、名古屋、福岡に立地する、約 200 物件、10,000 戸を超える
住宅ポートフォリオを取り扱っている。
60%
Q1 2014
もう一つの大型取引は、みずほフィナンシャルグループによる、「み
ずほ銀行前本店ビル」の買い戻し、1,590 億円である。本物件は、
2003 年にみずほが財務改善のため、三菱地所に 864 億円で売却
し、その後リースバックを続けていたものである。今般、街区の再開
発をみずほ、三菱地所等で実施することとなり、買い戻した。その
他、積水ハウス・リート投資法人の上場時の資産取得も目を引くも
のがあった。保有資産 3 物件のうちの最大資産は、「御殿山 SH ビ
ル」であり、スポンサーである積水ハウスから 515 億円で取得した。
80%
Q4 2013
予想されたとおり、今期最大の取引は「パシフィックセンチュリープ
レイス丸の内」のオフィス部分の売却であった(表 1)。シンガポール
の政府公社である GIC が、セキュアード・キャピタル・インベストメ
ント・マネジメント(現 PAG)から取得し、取引額は約 1,700 億円と
報道されている。東京都心の最優良エリアに立地する物件は、そ
のほとんどが国内大手のデベロッパーの所有となっており、投資市
場に登場することは稀である。そのため、この取引は、東京の優良
オフィスビルの希少な投資案件として、多くの投資家の注目を浴び
た。本ビルは、過去数回売買されており、不動産価格が直近のピー
クであった 2006 年にダヴィンチが PCCW から 2,000 億円で取得、
その後ローンのデフォルトにより、2009 年に債権者から前所有者
のセキュアードが 1,400 億円で取得していた。
Q4 2013
東京の優良大型資産取引が完了
100%
Q3 2013
主要取引
Foreign sales
Source: DTZ Research
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3
Japan Q4 2014
していた投資家は、現在が投資の好機と捉えたはずである。金融
市場は健全であり、投資家も潤沢な資金を準備していることから、
2014 年に多くの大型取引が実施されたことは当然と言える。
見通し
市場は 2015 年も引き続き活発
予想どおり、第 4 四半期の投資動向は 2014 年の取引額を力強く
押し上げた。J-REIT は、今期はその取引が全体に占める割合を減
少させたものの、依然、投資市場の主力であった。第 4 四半期の
新規上場 3 件と合わせると、2014 年の上場は計 6 件となり、2013
年と同数となった。2015 年も数件の上場が予定されており、今後も
J-REIT が投資市場を支えていくものと予想される。
J-REIT 以外のプレーヤーによる幾つもの大型取引も 2014 年の投
資市場を賑わせた。GE 日本の住宅ポートフォリオ(2,000 億円)、
「大手町タワー」(オフィス部分、1,782 億円)、「パシフィックセンチュ
リープレイス丸の内」(オフィス部分、約 1,700 億円)、「目黒雅叙園」
(約 1,300 億円)、「国際赤坂ビル」(約 740 億円)等が挙げられる。
これらの物件のうちの幾つかは以前にも取引がされており、数年の
保有期間を経て、所有者は現在の市場サイクルの位置づけが売却
には好機と考えたものと見られる。同時に、優良な投資機会を模索
世界的に金利は低い水準にあるが、米国では 2015 年中に利上げ
が行われるものと予想される。しかし、日銀は少なくとも短期的には
現在の金融政策を維持するものと見られ、従って、国内の金利は
当面は低位で推移すると思われる。このことは、不動産市場におい
ては、短期的には利回りへの継続した下押し圧力となり、価格を押
し上げるであろう。
前述のとおり、2014 年の投資市場は大型取引により押し上げられ
た。2015 年については、そうした大型取引は幾分少ないと考えら
れ、取引額の減少が予想される。しかしながら、オフィス市場の更
なる改善が予想されることから、2015 年の不動産投資市場は引き
続き活況に推移するものと思われる。ここまで続いた円安により、
海外投資家にとって日本投資は魅力的となり、今後インバウンド投
資が更に増えることが予想される。
表1
主要取引
物件名
所在
買主
売主
セクター
価格(億円)
パシフィックセンチュリープレイス
丸の内(オフィス部分)
千代田区
GIC
セキュアードキャピタル
インベストメントマネジメント
オフィス
1,700
(推定)
旧みずほ銀行本店ビル
千代田区
みずほフィナンシャル
グループ
三菱地所
オフィス
1,590
御殿山 SH ビル
品川区
積水ハウス・リート
積水ハウス
オフィス
515
新宿アイランド (30%)
新宿区
東急不動産
都市再生機構
オフィス
475
ガーデンシティ品川御殿山(部分)
品川区
積水ハウス・リート
積水ハウス
オフィス
397
紀尾井町ビル (75%)
千代田区
森トラスト総合リート
アンジェロゴードン
オフィス
住宅
343
銀座 MTR ビル(オフィス部分)
中央区
野村不動産
森トラスト総合リート
オフィス
240
新宿イーストサイドスクエア (14%)
新宿区
ジャパンリアルエステイト
三菱地所と大和ハウス工業の
SPC
オフィス
231
本町南ガーデンシティ(部分)
大阪市
積水ハウスリート
積水ハウス
オフィス
231
お茶の水ソラシティ (13%)
千代田区
ヒューリックリート
ヒューリック
オフィス
リテール
228
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Global Head of Research
+44 (0)20 3296 2159
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Head of Capital Markets
Research
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Andrew Ness
Head of North Asia Research
+852 2507 0507
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CEO, Japan
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