DTZ Research INVESTMENT MARKET UPDATE 投資対象物件不足により 取引額減少 Japan Q2 2015 24 July 2015 2015 年第 2 四半期の商業不動産取引額(住宅、ホテルを除く)は、前期の 1 兆 1,473 億円から 46%減の 6,172 億円となった。前年同期と比較しても 12%減であった(図 1)。 多くの取引が行われる年度末の直後となる第 2 四半期は、市場が静かになることが多 く、今期の取引額の減少は驚くにはあたらない。今期の取引額は 1 年前との比較では下 落しているが、過去 10 年間の第 2 四半期の平均額を依然上回っている。また、上半期 についても同様に、過去 10 年の上半期の平均を本年は上回っており、市場は依然活発 であることを示している。 過去数四半期とは異なり、今期は 1,000 億円を超える超大型取引がなく、また J-REIT による取引も減少し、その結果、今期の取引額は前期比、前年同期比共に減少した。こ れは、投資対象物件の不足が主に起因している。その一方で、世界的な低金利もあり、 大量の資金が投資先を探し求めている。 今期は 2 四半期続けての取引額減少となったが、投資市場が停滞したとの認識はな い。それどころか、日本の不動産市場への注目度はますます高まっている。しかしなが ら、投資対象物件の不足が取引額の伸びを抑えている。投資対象物件の不足により、 投資家の投資意欲が限られた物件に集中し、その結果、イールドを押し下げている。こう した状況は今後も当面続くものと思われる。 Contents 取引額 2 投資家種別 2 セクター種別 3 資金の出所 3 主要取引 3 見通し 3 Author Kayoko Hirao Head of Japan Research +81 (0)3 5512 8213 [email protected] 図1 不動産取引額 (単位:10 億円) 4,500 Contacts Dominic Brown Head of Asia Pacific Research +61 (0)2 8243 9999 [email protected] 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 2006 2007 2008 2009 Q1 2010 Q2 2011 Q3 2012 2013 2014 2015 Q4 Source: DTZ Research www.dtz.com Investment Market Update 1 Japan Q2 2015 取引額 図2 取引額は減少、しかし市場は堅調 不動産取引額(単位:10 億円)および上半期過去 10 年平均 2015 年第 2 四半期の不動産投資市場は、取引額が減少したもの の、堅調であった。今期の商業不動産取引額(住宅、ホテルを除く) は、前期の 1 兆 1,473 億円から 46%減の 6,172 億円となった。多 くの取引が行われる年度末の直後となる第 2 四半期は、市場が静 かになることが多く、今期の取引額の減少は驚くにはあたらない。 今期の取引額は、前年同期と比較すると 12%減であった。 4,000 1 年前との比較では下落しているが、今期の取引額は過去 10 年 間の第 2 四半期の平均額を依然上回っている。また上半期の取引 額も同様に、本年は過去 10 年間の上半期の平均額を大きく上回 っており、市場は依然活発であることを示している(図 2)。 1,000 過去数四半期とは異なり、今期は 1,000 億円を超える超大型取引 がなく、また J-REIT による取引も減少した。その結果、今期の取引 額は前期比、前年同期比共に減少した。これは、投資対象物件の 不足が主に起因している。その一方で、世界的な低金利もあり、大 量の資金が投資先を探し求めている。低い金利環境は、コストの低 いファイナンスの調達が可能にし、また、高いリスク調整後リターン が求められることから、不動産投資を魅力的にしている。従って、投 資家の投資意欲は引き続き高く、一部の優良エリアでは資産取得 競争が激化している。 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 500 0 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 Q1 Q2 Q3 Q4 H1 average Source: DTZ Research 図3 投資家別取引(単位:10 億円) 1,500 100% 75% 1,000 50% REIT が依然過半を占める 売却側は、非上場のファンドやヴィークルからなる非上場不動産ヴ ィークルが、引き続き最大の売り手(ネットベース)であった(図 4)。 本レポートのデータには含まれていないが、住宅やホテル資産も引 き続き活発に取引されている。サムティは、住宅特化型の REIT、 サムティ・レジデンシャル投資法人を今期上場させた。上場時の資 産額は 305 億円であった。 0% Quoted Property Vehicle Quoted Property Company Institution Other/Unknown Q2 2015 Q1 2015 Q4 2014 Q3 2014 Q1 2014 0 主に REIT がその内訳である上場不動産ヴィークルは、今期の取 得額が減少したものの、依然最大の買い手(ネットベース)であった。 しかし、他の買い手も取得額を減らしたため、上場不動産ヴィーク ルが全体に占める割合は前期の 35%から、今期は 56%に増加し た(図 3)。 上場不動産ヴィークルによる売却は非常に少なく、今期も最大の買 い手(ネットベース)であり、上場不動産会社がそれに続いた。 25% Q2 2014 投資家種別 500 Private Property Vehicle Corporate Public Sector/Government Quoted Property Vehicle share Source: DTZ Research 図4 投資家別取引額(取得・売却)2015 年第 2 四半期 (単位:10 億円) 400 300 200 100 0 -100 -200 -300 -400 Quoted Property Quoted Property Private Property Vehicle Company Vehicle Purchase Sales Corporate Institution Other/Unknown Net position Source: DTZ Research www.dtz.com Investment Market Update 2 Japan Q2 2015 セクター種別 図5 オフィスが過半を占める セクター別取引額 (単位:10 億円) 資金の出所 海外投資家による汎アジアファンドの資金調達が拡大 海外投資家による日本への投資はここのところ緩やかに増加して いたが、今期は大型のクロスボーダー取引は見られなかった。円安 やオフィス賃貸市場の更なる改善期待から、多くの海外投資家が 日本の不動産市場に興味を示している。その結果、旧来からのプ レーヤーに加え、新規参入の海外投資家の数も増加している。しか しながら、投資対象物件の不足により、投資スタイルに適合する資 産を手に入れることは、依然難しい状況にある。 潤沢な投資資金が引き続きアジアに向けられており、日本は域内 の 主 要 な 投 資 対 象 国 の 一 つ で あ る 。 Pramerica Real Estate Investors は汎アジアを投資対象とするファンドについて 4 億 8,000 万ユーロを調達し、また、CLSA キャピタルパートナーズはア ジアを対象としたバリューアッド型ファンドを組成し、資金調達上限 額 10 億 US ドルに到達したことを発表した。 主要取引 100% 80% 1,000 60% 40% 500 20% 0% Office Retail Source: DTZ Research Q2 2015 Q1 2015 Q4 2014 Q3 2014 0 Q2 2014 過去のトレンドを見てみると、オフィスが毎期最も取引されたセクタ ーであることに間違いはなく、リテールとインダストリアルはオフィス に比べると少ない。ヘルスケア資産への投資は始まったばかりであ り、ヘルスケア資産特化型の J-REIT が初めて東証に上場した 2014 年から、投資対象として登場している(図 6)。 1,500 Q1 2014 オフィス・セクターは取引額こそ減少したものの、全体に占める割合 を伸ばし、前期の 49%から今期は 53%となった。リテールやイン ダストリアルの大型取引がなかったためである。 Mixed Use Other/Unknown Industrial Office share 図6 セクター別取引割合 100% 80% 60% 40% 20% 0% 2010 2011 Office Mixed Use Other/Unknown Source: DTZ Research 2012 Retail Leisure 2013 2014 H1 2015 Industrial Healthcare 1,000 億円級の大型取引は見られず 今期は 1,000 億円級の大型取引はなかったが、100 億円を超える 取引は引き続き多く見られた。大型取引として挙げられるのは積水 ハウス・リート投資法人による「本町ガーデンシティ」の取得である。 積水ハウス・リートは当該物件のオフィスと商業施設部分を、親会 社であり、当該物件を開発した積水ハウスから、386 億円で取得し た。NOI キャップレートは 4.2%であった。「本町ガーデンシティ」は 大阪の優良エリアである御堂筋沿いに立地しており、上層階にはセ ントレジスホテルが入居している。今回の取得は積水ハウス・リート にとって、2014 年 12 月の上場以来、初の資産取得であった。 大和証券オフィス投資法人はリバーゲート、グラスシティ渋谷、目黒 プレイスタワーの 3 物件を総額 496 億円で取得した。売り主はとも に PAG インベストメント・メネジメントと JP モルガン・アセット・マネ ジメント(旧 Aviva Investors )が組成した SPC と思われる。このう ち、最も高額な資産は中央区箱崎町に立地するオフィスと住宅から なる複合ビル「リバーゲート」であり、280 億円であった。 見通し 市場は引き続き堅調 今期は 2 四半期続けての取引額減少となったが、投資市場が停滞 したとの認識はない。それどころか、日本の不動産市場への注目 はますます高まっている。しかしながら、投資対象物件の不足が取 引額の伸びを抑えている。投資対象物件の不足は、投資家の投資 意欲を限られた物件に集中させ、イールドを押し下げている。 現在の東京 CBD の優良オフィスの価格は、2012 年の市場サイク ルの底値から約 40%上昇した。しかしながら、2008 年のピーク時 に比べ依然約 30%程度低い。つまり、現在の価格は投資家にとっ て未だ魅力的に映るということである。 円は 2011 年に比べ、対 US ドルベースでは 60%下げており、継 続する円安は、海外投資家にとって日本市場参入におけるカンフ ル剤となっている。こうしたことから、今後も海外投資家は日本への 投資を増加させるものと思われる。 日本の投資市場は引き続き活発に推移し、当面、利回りは下押し 圧力にさらされるであろう。 www.dtz.com Investment Market Update 3 Japan Q2 2015 表1 主要取引 物件名 所在 買主 売主 セクター 価格(億円) 本町ガーデンシティ (オフィス・商業施設) 大阪市 積水ハウス・リート (REIT) 積水ハウス オフィス 386 ソリッドスクエア (50%) 川崎市 国内の SPC 明治ホールディングス オフィス 329 リバーゲート 中央区 大和証券オフィス (REIT) JP モルガン・アセット・マネジメ ントと PAG インベストメント・マ ネジメントの SPC オフィス 住宅 280 日石横浜ビル 横浜市 ジャパンエクセレント (REIT) 国内の SPC オフィス 245 グラスシティ渋谷 渋谷区 大和証券オフィス (REIT) JP モルガン・アセット・マネジメ ントと PAG インベストメント・マ ネジメントの SPC オフィス 160 梅田スクエアビルディング 大阪市 ジャパンリアルエステイト (REIT) はやぶさ合同会社 オフィス 155 Source: DTZ Research www.dtz.com Investment Market Update 4 Research Research Nigel Almond Head of Strategy Research +44 (0)20 3296 2328 [email protected] Dominic Brown Head of Asia Pacific Research +61 (0)2 8243 9999 [email protected] Japan Yoshiki Kaneko CEO, Japan +81 (0)3 5512 8200 [email protected] Disclaimer This report should not be relied upon as a basis for entering into transactions without seeking specific, qualified, professional advice. 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