茨城県における臓器移植や慢性腎臓病に関する意識調査結果の概要① 調査の目的と方法 0 公益財団法人いばらき腎臓財団は,茨城県民の「臓器提供意思 10代 表示率」と「慢性腎臓病予防意識」を高める啓発活動を推進している 。効果的な普及啓発のためには,啓発のターゲットやニーズを明確 にすることが必要となる。本調査の目的は,県民の「臓器移植や慢 性腎臓病」に関する意識やニーズを明らかにすることである。 調査は,2014年10月~2015年11月にかけて,水戸市やつくば市 での各種イベント来場者,つくば市等の民間企業等での健康講演会 参加者に無記名自記式アンケートを実施し,1355名(男性464人 34.2%、女性887人65.5%、不明4人0.3%)から回答を得た。得られ た回答は,質問項目毎に単純集計(回答に欠損があった場合も集計 に含む)し,クロス集計結果にはχ2検定を行った。回答者の性別は図 1,年代は図2の通りである。 20代 無回答, 4, 0.3% 結果1 ~臓器移植に関する意識~ 意思表示について 525人(38.7%)が何らかの意思表示ツールを所持していた。また, 17.7%が意思を記入しており(図3),全国調査の結果13.4%(H26 日本臓器移植ネットワークn=1000)より表示率が高かった。 年代別のクロス集計結果から,20~40歳代が意思表示に対して 他の年代より有意に積極的(ツールを所持,表示している・してみた い)であり,60歳代以上は有意に消極的であった。 臓器移植への関心 805人(59.4%)が臓器移植に関心があると回答し(図4),全国調 査の結果57.8%(H25内閣府n=1855)とほぼ同等であった。クロス 集計の結果,年代によって関心に有意差は見られなかった。 関心別のクロス集計結果から,関心がある人は,ない人よりも「ツ ールを所持,既に意思表示している・してみたい,家族と話合をした ことがある」と回答した人が有意に多かった。 表示の可能性が高いと考えられる人 関心があって,意思表示ツールを所持している人は367人,そのう ち159人(41.3%)が既に意思表示しており,208人(56.7%)は意思 表示していなかった。 関心があって,表示ツールを所持し,意思 表示をしていない人のうち91人(43.8%)は表示してみたいと回答し, 80人(38.5%)はわからないと回答していた。わからないと回答した 理由は,自分の意思がわからない51.2%,臓器提供に抵抗がある 21.3%,家族が反対しそう23.8%であった(図5)。 女性, 887, 65.5% 50 100 150 200 300 350 (人) ( ⼈人) 1.8%, 25 10.8%, 147 30代 21.8%, 295 40代 24.5%, 332 50代 男性, 464, 34.2% 250 15.9%, 216 60代 16.9%, 229 70代 6.8%, 92 80代以上 無回答 1.0%, 13 0.4%, 6 図1 回答者の性別 図2 回答者の年代 無回答, 83, 6.1% わからない, 571, 42.1% 既に意思表示 をしている, 240, 17.7% 無回答, 21, 1.5% 関心がない, 529, 39.0% 意思表示をしてみたい, 260, 19.2% 臓器移植に 関心がある, 805, 59.4% 意思表示をしたいとは 思わない, 201, 14.8% 表示の可能性が高いと考えられる人 図3 意思表示への考え 図4 臓器移植への関心 関心があって, 意思表示ツールを所持している人 367人 表示 159人 表示してみたい 91/208人 43.8% 自分の意思が わからない 41人 51.2% わからない 80/208人 38.5% 臓器提供に 抵抗がある 17人 21.3% 意思表示 していない人 208人 表示したくない 22/208人 10.6% 家族が 反対しそう 19人 23.8% 臓器移植について考える機会の提供, 正しい情報提供,家族と話し合うきっかけ 図5 表示の可能性が高いと考えられる人 の提供が,表示率の向上につながる可能性があるのではないか Copyright 2015 Ibaraki Kidney Foundation Copyright 2015 Ibaraki Kidney Founda9on 茨城県における臓器移植や慢性腎臓病に関する意識調査結果の概要② 結果2 ~慢性腎臓病に関連する意識~ 慢性腎臓病の認知や正しい理解 800人(59.0%)が慢性腎臓病を知っており,849人 (62.7%)尿タンパクは腎機能の低下や再検査や治 療が必要なことを知っていると回答していた(図6,7) 。さらに,836人(61.7%)が慢性腎臓病が悪化すると 腎不全や透析の可能性があることを知っていると回 答していた(図8)。 年代別のクロス集計結果から,50歳代以上は慢性 腎臓病の理解が有意に高く,40歳代以下は理解が 有意に低かった。 生活習慣への心がけ 日頃減塩に気をつけているを選択した人は677人 (50.5%)であり,脂質を取り過ぎないようにしている 399人(29.4%),身体を動かすようにしている533人 (39.3%)であった(図9)。 年代別のクロス集計結果から,減塩,脂質を摂り過 ぎないようにしている,身体を動かすようにしている,の 3項目について,年代に差が見られた。60歳代以上は 3項目全てへの心がけが有意に高く,逆に30歳代は 有意に低かった。減塩については,40歳代以下で心 がけが有意に低かった。 無回答, 62, 4.6% 無回答, 57, 4.2% 知らない, 498, 36.8% 知らない, 444, 32.8% 慢性腎臓 病を知って いる, 800, 59.0% 無回答, 66, 4.9% 知らない, 453, 33.4% 知っている, 849, 62.7% 知っている, 836, 61.7% 図6 慢性腎臓病の認知 図7 尿タンパクの理解 図8 腎不全の理解 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 ( 人) 677 減塩に気を付けている 399 脂質を取り過ぎないようにしている 29.4% 786 58.0% 野菜を摂るようにしている 473 朝食を摂るようにしている 239 お酒を飲み過ぎないようにしている 34.9% 17.6% 533 身体を動かすようにしている 無回答 50.0% 105 39.3% 7.7% 図9 生活習慣への心がけ まとめ 茨城県民の「臓器提供意思の表示率」と「慢性腎臓病予防意識」 を高めるためには,意思表示に積極的(ツールを所持,表示している・し てみたい)で,慢性腎臓病の理解や生活習慣への心がけが低い,若い世代や就労層(20~50歳代)をターゲットとすることが適切であると 考えられた。 臓器提供意思の表示率を高めるためには,意思表示に対する「自分の意思がわからない」「臓器提供に抵抗がある」「家族が反対しそう」 といった意識を変えることが必要と考えられるため,臓器移植について家族と話し合うきっかけとなるような正しい情報を提供する必要が あると思われる。また,慢性腎臓病予防意識を高めるためには,まだ病気や予防への関心が低い就労層に対して,慢性腎臓病の知識を 提供するとともに,就労等で忙しい中でも減塩や身体活動の実践につながる方法を提供していくことが必要と考えられる。 Copyright 2015 Ibaraki Kidney Founda9on
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