2016年3月17日 投資情報室 REITレポート 豪REIT市場・豪ドル相場の動向と今後の見通し 上昇傾向を強めつつある豪REIT市場 【図表1】 豪REIT市場の推移(配当除き) 図表1は、豪REIT市場(S&P ASX300 A-REIT指数) (注1)の週次ベースの動き(3月11日時点)です。 足元の同指数は、昨年8月の中国元切り下げ等で 急落する前の高値水準を上回ってきています。 (注1)2016年2月末時点での指数組入れ銘柄数は27銘柄、時価 総額は約1,203億豪ドル、1豪ドル85円換算で約10.2兆円で す。 (2014年1月3日~2016年3月11日 週次) 1,400 (ポイント) 1,300 1,200 チャイナ・ショック 1,100 豪REIT指数 1,000 900 14/1 図表2は、同指数の配当を含む月次ベースでの動き (3月11日時点)です。 足元の同指数は、リーマン・ショック前の史上最高値 にあと1割弱の水準まで回復しています。 14/7 15/1 15/7 16/1 【図表2】 豪REIT市場の推移(配当込み) 50,000 (年/月) (2005年1月~2016年3月 3月は11日時点 月次) (ポイント) 豪REIT指数(配当込み) 40,000 30,000 20,000 10,000 図表3は、2月末時点での主要国REIT市場の配当を 含む指数(注2)の過去3年と過去1年の現地通貨 ベースでのパフォーマンス(騰落率)です。 豪REITは過去1年では最も高い、過去3年では2番 目に高いパフォーマンスとなっています。 05/1 07/1 60 57.2 49.4 豪REIT市場は世界で3 番目に大きな市場です (注3)。 20 (注3)S&P グローバル REIT指数ベース(米ド ルベース)、2016年2月 末時点 6.6 豪, 7% 日本, 8% 米国, 60% 4.0 1.7 0 -4.0 米国 -4.9 -7.9 日本 仏 シンガポール 【図表5】 豪REIT市場 業種構成 豪REIT市場では小売 り施設に投資するREI Tが約半分を占めます (注4)。 フランス, 5% 過去1年間 42.7 ~参考:業種構成~ 英国, 5% (年/月) 24.0 【図表4】 グローバルREIT市場構成 その他, 11% 15/1 過去3年間 (%) 豪 シンガポール, 4% 13/1 (2016年2月末時点) -20 ~参考:市場規模~ 11/1 80 40 (注2)すべて配当込み、現地通貨ベース。使用指数は、豪:S&P ASX 300 A-REIT指数 米国:NAREIT All Equity Reit指数 日本:東証REIT指数 仏:S&PフランスREIT指数 シンガ ポール:S&PシンガポールREIT指数。 09/1 【図表3】 主要REIT市場のパフォーマンス比較 (注4)S&P ASX300 AREIT指数ベース(豪ド ルベース)、2016年2月 末時点 オフィス, 10% その他, 2% 産業, 12% 小売り, 50% 多角, 26% (出所)図表1~5はブルームバーグデータ、S&Pデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価 証券等の勧誘を目的とするものではありません。 ●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しております が、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将 来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投 資成果を示すものではありません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 1/3 (審査確認番号H27-TB217) 豪REIT市場上昇の背景 豪REIT市場が上昇傾向を強めている背景には、以下の様な要因があるものと思われます。 【図表6】 豪REIT市場の金利差推移 ①米国追加利上げ観測の後退 これまでは、米国の利上げに連動して豪金利も上昇 し、その結果、1)借入費用の増加によりREITの収益 が悪化する、2)REITの予想配当利回りと金利との差 (金利差)【図表6】が縮小する等の懸念があったものと 思われます。 新興国経済の混乱等を受け、米国の追加利上げ観測 が後退しています。豪金利は引き続き低位で推移し、 借入費用の増加や金利差の急激な縮小は避けられる と見方が豪REIT市場の支援材料となっている可能性 があります。 ②好調さを持続する豪経済 2015年10~12月期の実質GDP(国内総生産)は前年 同期比3.0%増と、市場予想(2%台半ば)を上回りまし た。主力輸出品である鉄鉱石の価格が急落する中で、 豪経済の内需の底力を示す結果となったようです【図 表7】。 (2014年1月3日~2016年3月11日 週次) 8 (%) 金利差(①-②) 豪REIT予想配当利回り① 豪10年国債金利② 6 4 2 0 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 (年/月) 【図表7】 豪実質GDP(前年同期比)の推移 (2015年1-3月期~10-12月期 四半期) 4 実質GDP(前年同期比) (%) 3 2 1 0 小売り売上高(前年同月比)も相対的に堅調に推移し 15/3 15/6 15/9 15/12 (年/月) ています【図表8】。豪REITの約半分は小売り施設に 【図表8】 小売り売上高(前年同月比)の推移 投資する(小売り施設を購入し、賃貸して賃料収入を 6.0 (2015年10月~2016年1月 月次) 得る)REITが占めています(時価総額ベース)【前ペー (%) 豪 米国 日本 ジの図表5】。好調な経済や小売り動向がREIT収益の 4.0 拡大をもたらすとの見方も背景にあるものと思われま す。 2.0 0.0 ③資源価格の反発 -2.0 15/10 15/11 15/12 16/1 (年/月) 原油や鉄鉱石価格が2月に入り急反発しています。原 【図表9】 原油や鉄鉱石価格の推移 油は、国際エネルギー機関(IEA)が3月11日発表した (2015年6月1日~2016年3月11日 日次) 石油月報で、原油価格が底打ちした可能性があると指 70 (米ドル/ (米ドル/ WTI原油先物(左軸) 摘したこと、鉄鉱石は3月5日開幕の中国全国人民代 バレル) トン) 鉄鉱石(右軸) 表大会で交通網整備等に年2兆元(1元17円換算で約 60 34兆円)超を投じる方針が示され、中国の需要が増え 50 るとの観測が高まったこと等が要因となっているようで す【図表9】。 40 豪の2015年輸出額(年間)の約半分は資源です(鉄鉱 石25%、石炭・鉱業15%、石油・ガス9%)。資源価格 の反発で豪経済の成長率が高まるとの期待も背景に あるようです。 30 80 70 60 50 40 20 30 15/6 15/8 15/10 15/12 16/2 (年/月) (出所)図表6~9はブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価 証券等の勧誘を目的とするものではありません。 ●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しております が、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将 来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投 資成果を示すものではありません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 2/3 豪REIT市場の今後の見通し 多くの投資資産選択の観点を満たす資産として、豪REITが見直されることも考えられます【図表10】。 豪REITの主な収益源は他国のREITと同様に賃料収入です。テナントの売上高等に応じて増減する変 動賃料部分もありますが、多くは一定期間は変わらない固定賃料がベースとなっています。豪REIT市場 の時価総額は、2月末時点で約10兆円とJ-REIT市場とほぼ同程度です。 足元の上昇を支える要因が継続すれば、豪REIT市場への資金流入が増加し、配当を含む豪REIT指数 は、リーマン・ショック前の高値を更新することも考えられます。 尚、2016~2018年度の豪REITの予想利益(税前)(前年度比)は、現時点では5~7%増程度となってい ます【図表11】。仮に、鉄鉱石価格の更なる上昇等で経済の先行きに対して強気の見方が増えれば、業 績の上方修正期待等から、豪REITの上昇に弾みがつく可能性もあります。 【図表11】 豪REIT業績予想(前年度比) 【図表10】 投資資産選択の観点 人口増等で潜在成長力が高い国の資産 (豪の人口は最近2,400万人を突破) (2016年度~2018年度 年度) 10 利益(税前)伸び率(前年度比) (%) 資源価格反発の恩恵を受けられる国の資産 (豪の輸出の約半分は資源) 8 高格付け等信用力の高い国の資産 6 (S&P社の豪の格付けは最上位のAAA 2016年2月末時点) 4 利回りが相対的に高い資産 2 流動性がある程度高い資産 0 2016 安定的な業績や配当が期待できる資産 2018 (年度) 2017 (※)S&P ASX300 A-REIT指数構成銘柄の内、継続してデータが 取れる24銘柄(時価総額ベースでは約70%)が対象 (※)2016年3月11日時点でのブルームバーグ予想 豪ドル相場の見通し 【図表12】 豪ドル(対米ドル、対円)の推移 資源価格の反発等を材料に豪ドルが対米ドルや 対円で上昇しています。足元の豪ドルは、対米ド ルで2015年7月頃の水準まで買われています。 一方、対円では今年2月頃の水準に留まってい ます【図表12】。 今後、豪ドルは対米ドルとの乖離を縮小する動 きとなり、対円で90円近辺まで上昇(円安・豪ド ル高)することも考えられます。 (2015年6月1日~2016年3月11日 日次) 100 0.84 (米ドル) (円) 95 0.80 90 0.76 85 0.72 80 0.68 円/豪ドル(左軸) 米ドル/豪ドル(右軸) 75 0.64 15/6 15/8 15/10 15/12 16/2 (年/月) (出所)図表11~12はブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価 証券等の勧誘を目的とするものではありません。 ●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しております が、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将 来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投 資成果を示すものではありません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 3/3
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