優 秀 賞 低環境負荷の緑茶飲料充填システム 株式会社伊藤園生産本部 田熊元彦 東洋製罐株式会社テクニカル本部 末 俊雄 伊藤園は東洋製罐と協働し、容器軽量 化・環境負荷低減および香り保持・品質向 上を目的として、緑茶飲料に最適な充填シ ステム「新・飲料充填方式(NSシステム) 」 を開発した。 緑茶飲料は自然、健康、安全に加え、風 味の繊細さなどに高い水準が要求される。 NSシステムは、持続可能な生産・消費と いう社会課題解決に貢献する革新的な技術 である。その特長は品質向上を図りつつ、 省資源、二酸化炭素(CO2)削減、水資 源リサイクルの “一石四鳥” を実現した点 にある。 一般的な茶飲料の充填方式には、高温の 飲料を充填する「ホットパック充填方式」 と、PETボトル内を薬剤で殺菌して水で 洗浄後に飲料を常温で充填する「無菌充填 方式」の2種類がある。 ホットパック充填方法は飲料を高温にす るエネルギーが必要であるとともに、PE Tボトルの耐熱性が必要となり、軽量化に も限界がある。 一方、無菌充填方法は薬剤の使用とその 洗浄のために水を使用するため、水環境へ の負荷が課題であった。また両方式はPE Tボトルを充填工場に輸送し、飲料を充填 していた。 これに対し、NSシステムはPETボト ル成形前の試験管状プリフォームを輸送 し、衛生管理されたクリーンな製造ライン 内でPETボトル成形する。これにより、 衛生性の高いPETボトルを製造し、薬剤 −8− を使用せずに常温充填する。言い換えれば、 両方式のいいとこどりで、省エネルギーと PETボトルの軽量化を同時に実現した。 NSシステムにより、容量500mlの PETボトルの場合、1本当たり重量を従 来比30%減の19gに軽量化できた。年 間に換算すると約2991tの樹脂量削減 を図れるため、高い省資源効果がある。こ のほか、キャップを同13%減の 2 . 6gに 軽量化し、ラベルの厚さも同40-50% 減の20μmに薄膜化した。 また薬剤を使わないため、洗浄水も不要 となり、水資源の省資源化に貢献できた。 さらにプリフォームによる輸送容積の縮小 化と素材配送の合理化を実現。常温充填は 緑茶が高温にさらされないため、品質劣化 防止と香りの向上につながる。CO2 削減 効果も上がった。 NSシステムで企業と消費者のウィン・ ウィンの関係を構築できる。伊藤園と東洋 製罐は高品質と省資源を両立し、コスト削 減を図れる。消費者は高品質で環境に配慮 した製品を購入できる。そして省資源・省 エネルギー・CO2 削減を推進することに より、社会・環境のための持続可能な生産 と消費を実現できる。 NSシステムは緑茶飲料のメガブランド である「お~いお茶」への採用とともに、 計画的に全国展開してきている。将来性、 波及性が高く、社会的なインパクトが大き い。またブランドに直結する技術として、 今後の進化が期待される。 −9−
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