含水率計による水分管理技術に関する検討

含水率計による水分管理技術に関する検討(H26~28)
成瀬達哉・寺西康浩・柳川靖夫
1.はじめに
乾燥材の生産における含水率の測定は、全乾法で行うのが正確であるが、製造現場では含水率計に
よる測定が行われる。しかし、木材密度のばらつき、あるいは水分分布のばらつきが原因で、全乾法
と含水率計との間で測定値が異なることが指摘されており、含水率計での測定値が全乾法の測定値と
大きく乖離しないような測定手法の確立が求められている。
そこで、平成 26 年度は、県産スギ・ヒノキの正角および平角(角材)について、全乾密度の母平均
の推定区間を調べ、含水率計の機種毎に設定されている樹種別の平均密度(以下、平均密度値とする。)
と比較した。
2.材料と方法
奈良県地域認証材を生産している4工場より、県産スギ・ヒノキの製材端材を収集した。それらか
ら繊維方向 30 ㎜の試験片を切り出し、全乾付近まで乾燥した時点で直方体に調製し、さらに全乾まで
乾燥し、全乾密度を測定した。これに、近年当センターで実施した乾燥試験における全乾密度の測定
値を加え、全データとした。(スギn=392、ヒノキn=101)。全乾密度は正規分布と仮定し、母平
均の区間を推定した。この推定区間と平均密度値とを比較した。使用した含水率計は、(公財)日本
住宅・木材技術センター認定である、株式会社ケツト科学研究所製 HM-520(以下、含水率計Aとする。)
およびキクカワエンタープライズ株式会社製 HM8-WS25(以下、含水率計Bとする。)とした。
3.結果と考察
図1に県産スギ角材の全乾密度の分布を、図2に県産ヒノキ角材のそれを示す。
スギ材の全乾密度の母平均(ρ s)の 95%信頼区間は 0.3713≦ρ s≦0.3784 であり、ヒノキ材の全乾
密度の母平均(ρ H)の同区間は 0.4691≦ρ H≦0.4798 であった。一方、含水率計Aの平均密度値は、
スギは 0.34、ヒノキは 0.37 であり、含水率計Bの同値は、スギは 0.38 以下、ヒノキは 0.38 を超え
0.44 以下である。よって、含水率計Aのスギ、ヒノキの平均密度値、および含水率計Bのヒノキの同
値に比べ、今回推定したスギ・ヒノキ材の全乾密度の母平均の推定区間の方が高かった。また、含水
率計Bのスギの平均密度値は、スギ材の全乾密度の母平均の推定区間内であった。
今後、今回推定した母平均を設定密度値に使用して含水率計で測定した含水率、平均密度値を設定
密度値に使用して含水率計で測定した含水率、および全乾法による含水率をそれぞれ調べ、含水率計
での測定値が全乾法の測定値と大きく乖離しないような測定手法を検討する予定である。
20
60
18
14
12
出現頻度
40
平均0.4745
区間0.4691≦ρH≦0.4798
n=101
16
平均0.3749
区間0.3713≦ρs≦0.3784
n=392
30
20
10
10
8
6
4
2
図1
県産スギ角材の全乾密度の分布
図2
- 13 -
-13-
0.56
0.55
0.54
次の級
全乾密度(g/cm3)
0.53
0.52
0.51
0.50
0.49
0.48
0.47
0.46
0.45
0.44
0.42
全乾密度(g/cm3)
0.43
0
0
0.29
0.30
0.31
0.32
0.33
0.34
0.35
0.36
0.37
0.38
0.39
0.40
0.41
0.42
0.43
0.44
0.45
0.46
0.47
0.48
0.49
0.50
0.51
0.52
次の級
出現頻度
50
県産ヒノキ角材の全乾密度の分布