ホルスタインのロマン3

改良は牛飼う人の道しるべ
埼玉県坂戸市 シンボライズファーム 亀田康好
大変ご無沙汰をいたしました。
94号以来となり、わたしが連載していたことすら忘
れていた方も多いと思われる。多忙をいいことに、甘
えてしまっていた。いまさら、新鮮味に欠ける話題だ
が、ホルスタインのロマン、その頂点とも言える全日
本ホルスタイン共進会(全共)の出品について書かな
けばならない。2回にわたるが、ご勘弁いただきたい。
6度目の全共出品
全共への出品は、私が無我夢中で出品した淡路全共
から通算6度目となるもので、すべて自家産牛である
●笑顔の亀田ファミリー
ことを前回書いた。今回の出品牛、シンボライズ ロメ
オ パトラは4才クラス第10部の出品で、これで登場の5
運営スタッフとしての役割、出品者としての立場
系統すべてが全共に出品できた事になり、この系統は
11月1日、会場入りした。いよいよである。
実に30年、7代目で初出品となる。
今回の全共は、出品者の立場もあるが「わくわく牧
初代は、北海道産のマドキャップエービーシ、次は
R・ラングラー、エナジー、エレベーション・ナイト、
場」の運営スタッフとしても、その役割を担わなけれ
ばならなかった。
マーストニー、サベージ、そしてオービー コスモで
過去の全共にも乳しぼり体験などのふれあいコーナ
ある。サベージもコスモも、当時主体的に使っていた
ーはあったが、せっかくの『乳牛の祭典』『酪農の祭
種雄牛ではなく、娘牛は2∼3頭である。案外、期待薄
典』であるから、もっと酪農をPRする場として、ま
のところから思わぬ娘牛がでるもので、初産後のパト
た、酪農家の思いを伝えられる場として体験型の牧場
ラの乳房は、「この高さがあれば、栃木で勝負ができ
を、と大会事務局に中央酪農会議を通じて提案したの
る」と思うと同時に、「やっとできたか」と感動する
である。
くらい良い乳房であった。だから全共予選申し込みも
折しも、ふれあい牧場の設置は実行計画に含まれて
この牛1頭のみであった。ほかに全共レベルは見当た
いるものの、そのノウハウの持ち合わせの無い事務局
らなかったのもあるのだが。
側と、地元で開催される全共で何か協力、参加したい
5月の分娩からコーンサイレージ抜きのチモシー乾
草一本、という別メニュー管理にしてきた。体調維持
と考えていた栃木県酪農青年女性会議とも思惑が一致
し、2月から打ち合わせを重ねてきたのである。
と、開期中の給与変動ストレスをなくすためである。
さらに「牛乳に相談だ。」キャンペーンも急きょ実
ただ、共進会への出品経験は無く、調教も4才時か
施することになり、どんなことができるかと話し合い
らなので苦労した。結局、本番までわたしと歩く時に
を持ったのが9月23日。ぎりぎり間に合ったことなど
は頭を下げさせず歩く訓練が必要であった。開期中の
皆さんは知る由も無いだろう。短い時間で、開期中あ
牛洗場までのの往復は、良い調教の時間であった。
れだけ「牛乳に相談だ。」マークがあふれようとは思
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わなかった。
「わくわく牧場」は、会場のメーンゲートの脇に設
置され、11月3日の初日から大盛況であった。地域交
流牧場全国連絡会のメンバーと、栃木県酪農青年女性
部の部員とで毎日20名がそれぞれのコーナーで、来場
者に対応した。初日・2日目までは青年部員の表情の
堅く言葉も少なめであったが、交流牧場メンバーの対
応をヒントに、次第にその表情が自然体に、言葉もは
っきり積極的になって、3日目・4日目は来場者への応
対を楽しんでいるかのように見えてきた。最終日の11
月6日には朝9時の開催時に並んでいた人のほとんどが
●ついに登場“乳”の中身はチモシー牧草
「わくわく牧場」へ来場したほど、終日大盛況であっ
た。4日間、のべ60人の酪農家が体験を通じて酪農を
さて、わたしは「わくわく牧場」掛け持ちではある
PRしたことは、ファームフェスタ2005の参加型イベン
が、4日の昼から「ふれあいMODE」から「共進会
トの目的に合致し、酪農家自身にも大きな収穫になっ
MODE」に切り替えた。
たと思う。
4日の第1部の前には、多回出品者の表彰が行われた。
千葉全共には出品できなかったため、連続ではないも
のの、改めてその重さを感じずにはいられなかった。
なんといっても全共は5年に1度であるから、出品でき
るだけでも幸運であるのに、6回も出品できたのだか
ら。秋田県の柴田輝男さんは私と同じ6回全共からの
出品で、7回連続である。しかも同一系統ローモント
一族。
“すっごい”のである。
5年に一度という想像以上のプレッシャー、緊張感
に満ちた仮設牛舎の空気。それらを味わえるのは出品
者の特権といえよう。詳細は次号、最終回で語りたい。
●わくわく牧場、大盛況
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