高森町 中長期財政シミュレーションについて 高森町 経営企画室 振興総合計画・行政評価と中長期財政シミュレーション 高森町では平成 20 年度からスタートした「第 5 次振興総合計画」において、計画-実施-評 価-改善というサイクル(PDCA サイクル)で回す「行政評価」の仕組みを導入しました。「行 政評価」の導入については、施策の単位とそれを構成する事務事業の単位で評価を行い、次 年度へ活かしていくという「経営感覚」を、職員や役場全体が身につける大きな原動力とな りました。 一方で「評価結果が予算になかなか反映できない」という課題も職員の中から出ているの も事実です。その課題を解決する一つの方法として「入ってくる財源の中長期の予想を行い (中長期財政シミュレーション)、それに応じて予算を創る(行政評価の結果を反映させる)」 予算編成の考え方を導入したいと思います。 この予算編成を導入するにあたっての基礎となるものが「中長期財政シミュレーション」 となります。 条件設定 中長期財政シミュレーションには、大きく「簡便法」と「難度法」がありますが1、今回 のシミュレーションでは、推計を伸び率などにより行う「簡便法」を基本としました。なお、 その他の条件は下記の通りです。 条件項目 条件設定 対象会計 一般会計(一般財源ベース) 推計期間 平成 27 年度~平成 33 年度の 7 年間 将来人口推計 国立社会保障・人口問題研究所の公開データより 歳入・歳出は可能な限り細分化するが、基本とした年 シミュレーションに用いる 度の直近の実績値を参考に「平均伸び率」や「実績値 数値の考え方 の横ばい」などで推計。 法制度の取扱い 現行制度が変わらないものとして推計。 普通交付税については別に作成した実質公債費比率の シミュレーションデータをもとに交付税算入分を含め 地方交付税の推計方法 た数値を使用。特別交付税については直近データを参 考に推計。 出所:経営企画室 1 作成 稲沢克祐,『自治体の財政診断と財政計画』-決算重視による財政マネジメント,学陽書房,2013 年, p.230-231 歳入の推計概要 町税等 平成 26 年 9 月補正後の数値を基本に「町税等」の項目では、町たばこ税は平成 33 年度に平成 25 年度決算の 90%で推計、入湯税は毎年 99%を乗じて算出していま す。 またゴルフ場利用税については「2015 年ゴルフ場問題」2を基に毎年 99%を乗じ て算出しています。 地方交付税 普通交付税については実質公債費比率シミュレーションから起債償還にかかる交 付税算入分を含み総額を試算していています。特別交付税は、県からの情報などを 基に平成 26 年 9 月補正後の 1.6 億円をベースに毎年 99%を乗じた金額で推移する と推計しています。 その他 「その他」の項目については、町有地売払収入、一般寄付金、町税延滞金につい ては、現状では情報がないため皆減とし、財政調整基金からの繰入も H27 年度以降 は行わないものとして試算しています。繰越金については、前年度収支がプラスで あった場合はその 1/2 を計上しています。また平成 28 年度については特定目的基金 から給食センター改修分として 1.3 億円を繰り入れて算出しています。 臨時財政対策債についてはこれまでの推移を勘案し、毎年 99%を乗じた金額で推 移すると推計しています。 歳出の推計概要 義務的経費 人件費については平成 27 年度以降 5.2 億円で推移、扶助費については平成 26 年 9 月補正後の数値をベースに老年人口増加率を乗じて算出しています。また公債費に ついては実質公債費比率シミュレーションをもとに現状予想される将来の起債発行 額まで含め算出しています。 これは 2015 年あたりにゴルフ需要の長期減少が顕在化するというもの。少子高齢化によってゴルフ対象人 口が減少しライト・ゴルファー(たまにゴルフを行う者)の減少も重なる。ある試算によると、2016 年には 11 年に比して、ゴルフ人口は 17%減、ゴルフ施設入場者数 10%減という数字が出ている。 2 投資的経費 平成 27 年度については八日市場線の町負担分 1,200 万円を含め平成 26 年 9 月補 正後と同値の 3 億 7,745 万 1 千円、平成 28 年度以降は平成 25 年度決算を基準に 3 億円で推計しています。 また、この投資的経費には既に作成済みの「主要公共施設更新計画」「橋梁長寿 命化計画」における費用を計上していません。 実施計画経費 「実施計画経費」とは、本来「まちづくりプラン(総合計画)」の達成にむけて 実施される「新規・拡充事業」の経費を示すものです。このシミュレーションでは 平成 28 年度に予定している「給食センター改修」経費を計上し、それ以外の年度は 概算として各年 1,000 万円を推計しています。3 維持補修費 平成 25 年度決算を基本に、平成 27 年度以降 2,000 万で推移すると推計していま す。 その他経費 物件費、補助費、繰出金、貸付金については平成 26 年 9 月を基準に、それぞれの 数値で不変として推計しています。 積立金については基本的には前年度収支がプラスであった場合はその 1/2+5,000 万円を財政調整基金へ積むものとして算出しています4。ただし平成 27 年度~平成 28 年度については、平成 28 年度に実施する給食センター改修への特定目的基金へ の積立として 6,500 万ずつプラス(2 年間で 1.3 億円)しています。 総括 これらのシミュレーションを見てみると、 平成 27 年度においては歳入見込みが約 40 億円、 歳出見込みは(ほぼ平成 26 年度と同様の事業を行うと仮定すれば)約 45 億円程度となり、 約 5 億円の財源不足となることが予測できます。 6 次プランの目標達成のための新規事業経費な どが該当となる。今後、実施計画経費を別に計上する場合は「投資的経費」や「その他経費」などから該当する 費用を抜き出して計上する必要がある。 4 財政調整基金については明確な基準は無いが、一般的に「標準財政規模の 20%程度」が適正と言われてお り、最終年度の H33 年に約 20%である約 7 億円を積み立てる計算でこの金額を見込んでいる。 3この経費については町長公約達成のための新規事業経費や第 行財政改革プランについて この項目については、平成 24 年度~平成 26 年度までを期間とした「高森町行財政改革ア クションプラン」に基づき、歳入側の取組・歳出側の取組と分けて記載しています。 今の時点では平成 27 年度のみを記入し、歳出側の取組の「既存(臨時的)事務事業の廃止」 として平成 26 年度に臨時的に実施した高額な主要事業約 1.1 億円を、また「その他」では北 部事務組合への火葬場への負担金等の約 1.6 億円を効果額として、まずは計上しています。 これらの効果額 2.7 億円を差し引いても、本シミュレーションにおいて平成 27 年度予算編 成は約 2.7 億円の財源不足が生じていることがわかります。予算編成時においては、これ以 外の臨時的事業を控除し、さらに財源が不足する場合は経常的な経費にも切り込んで予算編 成を行う必要があります。 まちづくりプランと行財政改革アクションプラン 今後は早い時期に幹部層を中心とした「経営会議」を開催し、行革による効果額を設定し、 これに基づいた行動と情報共有を町全体として推進する必要があります。この効果額につい ては、今後、財務会計システムに事務事業レベルで計画値及び実績値を入力し、事業担当者 及び各課で進捗管理を行っていきます5。これが「第 6 次まちづくりプラン」と連動した次期 の「高森町行財政改革アクションプラン」となり、これによって初めて、「行政評価」と「総 合計画(予算編成)」が連動することになります。 5 H27 年度から財務会計システムで進捗管理を行うことができます。 中長期財政シミュレーションからわかること 平成 26 年度の予算執行の特徴は、ここ数年約 4 億円あった歳入側の「前年度繰越金」まで を充当して歳出を行っている点にあり、そのため実質収支が例年と比べ減少見込となる点で す。 そのため中長期財政シミュレーションを見ると、今後、一般財源ベースで約 2~3 億円の歳 入増もしくは歳出圧縮を行うことが出来れば、第 6 次まちづくりプラン期間中の財政状況は ある程度好転すると見ることができます。 歳入側の取組 歳入側の取組については、長期的に見れば各種使用料(上下水道料金のみならず、公共施 設等の使用料金まで含む)を見直していくことが考えられます。固定資産台帳を早急に整備 し今後更新等に必要な費用を見込みながら算出することが必要となります。 短期的な取組では企業誘致による増収や可処分資産の売却・貸付、ふるさと納税や広告料 の拡大等の取組を行う必要があると考えられます。 歳出側の取組 歳出側の抑制という視点から見ると、削減できる項目は「投資的経費」「維持補修費」「物 件費」「補助費」「繰出金」と考えることができます。 長期的には「補助金」においては補助制度の補助率等の見直し、「繰出金」については特 別会計への繰出の見直し等が必要となり、また指定管理者制度や民間への外部委託なども視 野に入れて検討する必要があると思われます。 短期的には、特に「投資的経費」「維持補修費」「物件費」を重点的に見直し、既存事務 事業等については事業ごとに予算上限枠の設定する、国・県などの制度については常にアン テナを高くし、特定財源を見込めるものは直ちに活用することも必要であると思われます。 ___ 上記の取組は、町民の皆さんにとっては痛みを伴うものもあり、役場からは誠実で丁寧な 説明が必要となります。また、役場内部では、今までなかなか検討されなかった「人件費」 のあり方などについても真剣に考える必要があります。 また扶助費等の増加は避けられないものですが、増加している原因を明らかにし、「対処 療法」ではなく「体質を変える」ための事業展開が必要と考えられます。 いずれにしても、限られた財源の中で高森町に本当に必要な事業を行うことが、今後一層 求められます。
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