ー 研究の目的と概要 道内産の野菜および果菜類を食品素材 と して

平成 13年 度事業報告 。平成 14年 度事業計画 試 験研究 2
農 産 カロエ 品 中 の 加 熱 臭 低 減 化 お よび 除 去 技 術 の 開 発 (H12∼ 13)
一
加 工食 品部農産食 品科 中 野敦博 山 木 史 岩 下敦子 槙 賢治
研究 の 目的 と概要
道 内産 の 野菜お よび果菜類 を食 品素材 として、菓子 、氷菓 お よび飲料 な どの加 工
品に利 用 した い とい う要望 がある。 しか しこれ らの農産物 には、加熱 に よ つて 生 じ
る好 ま しくない 臭気 が発 生す る現象や揮発性硫黄化合物 が存在す るこ とに よ り用
途 が 限定 され てい るのが現状 であ る。本研 究 の 目的は、食 品 中 の揮発性硫 黄化合物
に起 因す る臭気成分 を構造変換す る ことによつて 、 フ レー バ ー を改善す る こ とにあ
る。本年度 は 、糸状菌 に よる酵 素的 な硫 黄化合物 の酸化変換 を検討 した。
予 定 され る成果 】
【
。野菜類 お よび果菜類 を原料 とした新 しい食 品素材 の 開発
試験 研究の方法
市販 され て い る種麹 を MY培 地 (11中にモル トエ キ ス 3g、 酵母 エ キ ス 3g、 ポ リ
ペ プ トン 5g、 グル コー ス 10g)を 用 い て 、30℃ で 4日 間振 と う培養 した。菌体 に同
量 の 10mMト
リス ・塩酸緩衝液 (pH7.0)を 加 えて 、既知 の揮発性硫 黄化合物 とし
て ジブチル スル フ ィ ドを添加 し、 さらに 30℃ で振 と うした。 24時 間後 に 、酢酸 エ
チル で反応 生産物 を抽 出 し、酸化物 で あ るジブチ ル ス ホキ シ ドをガ ス ク ロマ トグラ
フ ィー で分析 した。酸化物 を多 く生産 した種麹 を用 い て 、麹 を試 作 した。米麹 の原
料 は 、蒸米 を 70℃ で通風 乾燥 させ て 作製 した α化米 を利用 した。製麹 は、 α化米
150gに 75mlの 水 を加 えるシ ャー レ法で行 い 、表 1の 製造条件 で 作製 した。麹 か ら
酵素 を抽 出す るために 、2.5倍 量 の 10mMト リス ・塩酸緩衝液 (pH7.0)を 加 えて
4℃ で 一 昼夜放置後 に濾過 した。活性測 定 の感度 を高 めるた めに限外濾過膜 (分子
分画量 1万 )を 用 い て 9倍 に濃縮 して調製 した もの を麹抽 出液 と した。酵 素反応 は、
液 体培養 と同様 に行 つた。
表 1製 麹条件
温湿度条件
種麹
黄麹菌
32℃
1 9 時間) 、3 5 ℃( 9 5 % 、
6 時 間) 、3 8 ℃( 9 0 →8 5 % 、
2 0 時間)
(95%、
黒麹菌
38℃
1 9 時間) 、3 5 ℃( 9 5 % 、
6 時間) 、3 2 ℃( 9 0 →8 5 % 、
2 0 時間)
(95%、
実験結 果
硫 黄化合物 を特異 的に酸化す る酵素活性 をもつ 糸状菌 を見 出す た めに 、3社 13種 類
の種麹 中 の ジブチル スル フ ィ ド酸化 (BSO)活 性 を調 査 した。 6種 の種麹 に BSO活
性 が 見 出 され 、特 に活性 が 高 かった焼酎用黄麹菌 ((株)秋 田今 野商店)お よび泡盛黒
麹菌 ((株)河 内源 一 郎商店)を 以 下 の試験 に供 した。
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平成 13年度事業報告 。平成 14年度事業計画 試 験研究 2
これ らの培養菌体 を遠 心 分離 (8,000rpm、10分 )し 得 られ た培養 上 清 には 、2つ
の菌体 ともに BSO活 性 が 見 られず 、菌体 中に のみ活性 が存在す るこ とが明 らか とな
った。 しか し菌体 内酵 素 を利 用す るために、食 品 に直 接糸状菌 を接種 させ るこ とは、
糸状菌 自体 が増殖す る こ とが考 え られ 、食 品中の他 の成分 も同時 に変質す る可能性 が
生 じる こ とか ら現実的 な利 用方法 でな い と考 え られ た。 い くつ かの糸 状菌 の酵 素 で 、
液体培養 の ときには菌体 内酵 素 がほ とん どであるが、固体培養 を行 うと遊離型酵 素 を
多 く生産す る とい う研 究例 が報告 され て い る。 この こ とか ら固体培養 (製麹)に よる
遊離型 の BSO活 性酵 素 の生 産 を検討 した。
液体培養
培養上清
く0.lμ g/ml
翻出
液
,
麹抽出液
0246810
_____│
│
02468101
ジブチルスルホキシド(μg/m)
ジブチルスルホキシド(μg/mD
図 1黄 麹 菌 によるジブチルスルホキシドの生 産
│ _ _
黒麹菌によぅィォフヒ
不ルホキシ三
p隻三__│
図 1お よび 2に 示 した とお り、黄麹菌お よび黒麹菌 か ら作製 した麹抽 出液 か ら遊離
型 の BSO活 性 を もつ 酵 素 が 見 出 され た。菌体 内 の硫黄化合 物 を酸化 す る酵素 は 、塩
類 な どで容易 に活性 が 失 われ 、菌体 か ら粗酵 素 を調製 した場合 には低 温で保 管 中、数
日で活性 が激減 した。 この麹抽 出液 の BSO活 性酵素 は、4℃ で 7日 間後 の活性 が減少
しなか っ た ことか ら、菌体 内 の酵素 よ りも安 定性 が 高 い と考 え られ た。揮発性硫黄化
合物 を低減化 させ る酵 素 は 、菌体 か ら精製 させ る と不安定 にな るこ とか ら、微 生物 を
利 用す る方法 に限定 され てきた。今 回 の研 究 で得 られ た BSO活 性 を もつ 酵 素 は、安
定 な遊離型 であ る こ とか ら、酵素 を利用 して揮発性硫黄化合物 を低減化 させ る方法 と
して 有効 で ある と考 え られ た。
4要
約
ー
食 品 中 の揮発性硫 黄化合物 を酸化す る酵素 をもつ 糸状菌 を種麹 か らス ク リ ニ ン グ
した。 この酵素 は液 体培 地では菌体 内にあるが 、固体培養 ( 製麹) で は遊 離型 が生産
され た。 この麹 お よび遊離型 の酸化酵素 を利 用すれ ば 、食 品 の硫 黄化合物 に由来す る
食 品 フ レー バ ー を改善す るこ とが可能 と考 え られ た。
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