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ザ
イ
台湾 ン
は
語
る
…………〈 3 〉
森 井 ユカ
松青超市 MATSUSEI
プライベートでも仕事でも、どこかに出かけると必ずその
土地のスーパーマーケットに寄ってみるのは、いわば私に
とって旅の基本ルールである。おかげで、海外に行く友人
からはどのスーパーに行くべきか、とよく尋ねられる。20
年前は名所を回ることだけに忙しかった旅行者達が、今、
スーパーマーケットを観光コースのひとつにしていることが
感慨深い。そしてそれは正しい。
さて、近年日本からの旅行者が爆発的に増えているの
が、台湾だ。初めてなのになんだか懐かしい街並、人も親
切で、食事も美味しい。とても親しみが湧くのに、ちゃん
とした異国。そんな台湾(台北)に行く人にすすめるスー
パーが「松青超市」。現在台湾に 69 店舗を展開している。
北京語では「そんちんちゃおしー」のはずが、併記の英
字では「まつせい」と読ませている。もともとは 1980 年
代に地元台湾企業と日本企業の合弁会社が創業している
からで、日本風の名前も、売り場の整然とした様子からも
「ちょっといいスーパー」路線を貫いているのがわかる。
輸入ものも少なくはないが、質の良い地元の食品が充実し
ているので、お土産になるものを探しやすい。
台湾では長年、レトロデザインブームが続いている。日
本もそうだが、古き良きデザインからプレミア感を醸し出
すという手法だ。台北ではお菓子類にそれが顕著に見ら
大きく入った年号にまず興味をそそられ、
ついつい手に取ってしまう
れる。最近目についたのは台湾人の大好きなおやつ、
「餅
乾」(クラッカー)のパッケージ。「1966 年」は上海から
伝わった黒糖風味の懐かしい味、
「1970 年」は台湾クラッ
カーの王道を極めたプレーンな味、「1977 年」はメーカー
の中祥食品工業の人気を不動のものにした代表作、ネギ
入。順番に辿ると台湾クラッカーの歴史と人々の味の嗜好
の移り変わりがわかって興味深い。そして何より安くて美味
しい。
何でもいいからばらまけばいいお土産より、ちょっとした
ストーリーを持っているものの方が、あげる方ももらう方も
楽しいに違いない。さあ、次の旅も、物語を探しにスーパー
マーケットへ行こう。
日本では高価な南国のフルーツも
台湾のスーパーで買えばお得。
キッチン付きのホテルで毎日試食
もりい ゆか デザイナー、立体造形家、雑貨コレクター。ユカデザイン代表。桑沢デザイン研究所非常勤講師。著書に
『スーパーマーケットマニア』シリーズなど。