米国環境産業動向 - 日本産業機械工業会

情 報 報 告
シカゴ
●米国環境産業動向
『クリーン電力計画』、2020 年までに 36 万人の純雇用増
非営利シンクタンクの経済政策協会(Economic Policy Institute)は 6 月 9 日、既存の発電所から排
出される二酸化炭素量を規制する環境保護庁(EPA)の『クリーン電力計画(Clean Power Plan)』
案は、2020 年までに 36 万人の純雇用増加を生み出すと予想されると発表した。EPA は、クリーン電
力計画によって約 12 万人の新規雇用を生み出す一方で約 2 万 4 千人の失業者を生むと試算しているが、
経済政策協会によると、この失業者は低学歴層や収入の少ない貧しい州に集中すると予想されるという。
同協会は、失業者が集中する州に対して支援策を講じるよう連邦政府に提案している。
また同日ワシントン D.C.連邦上告裁判所は、エネルギー会社や 14 の州が EPA のクリーン電力計画
に対して起こした訴訟について、最終決定前の規制を阻止することは前例がないとし却下した。クリー
ン電力計画は、2030 年までに CO2 排出量を米国全体で 30%削減することを州に義務付けるもので、目
標値は州によって異なる。現在政府の行政予算管理局で最終審査中であり、8 月に成立する予定である。
連邦最高裁、EPA の石炭火力発電所排出規制は費用効率を無視しているという業界の主張を支持
連邦最高裁は 6 月 29 日、環境保護庁(EPA)が石炭火力発電所に対して課した水銀等の排出規制は、
規制遵守のためにかかる費用とその効果を合理的に勘案していないという国内業界団体や約 20 の州の
主張を認める判断を5対4で下した。大気浄化法(Clean Air Act)の下で作られる同規制には、“適
切かつ必要”であることが義務付けられている。業界団体等は、金額に換算するとわずかである健康及
び環境に対する効果のために数十億ドルという水銀排出遵守コストを投じるのは合理的でないと主張し
ていた。これに対し EPA は、同規制の可否を判断する際にはコストを勘案する必要はなく、具体的な
基準の数値を設定する段階になって初めて検討されるもの。いかなる場合においても効果はコストより
も重要であると主張していた。この石炭火力発電所に対する水銀排出規制は、オバマ政権が大気浄化法
の下で成立を目指してきた一連の規制の 1 つ。今後、コストに関する分析を深めていく必要が出たもの
の、EPA の排出規制権限については制限はされないとしている。
クリーン電力計画から州の脱退を認める法案、下院議会を通過
6 月 24 日、下院議会は、既存の発電所からの二酸化炭素排出量を制限する『クリーン電力計画』に
州が遵守しない選択をすることを認める法案『公共料金納付者保護法案(Ratepayer Protection
Act)』を 247 対 180 で可決した。発案者らは、クリーン電力計画は環境保護庁(EPA)による規制の
行き過ぎであるとして違法性を訴えており、同計画を実施すると電気料金の値上げを消費者に強いるこ
とになると批判している。同法案は今後上院議会に進むことになるが、もし上院議会で可決されるとし
ても、オバマ大統領が拒否権を行使することが予想されている。
また、6 月 24 日、インディアナ州は EPA のクリーン電力計画が“現在の計画案から著しく改善され
ない限り”遵守しないことをオバマ大統領に書簡で伝えた。同州は、電力需要の 85%を石炭火力発電が
占めており、EPA の同州に対する削減目標値は 2030 年までに 2005 年レベルより 20%減となっている。
カナダのオイルサンドの原油、従来の原油よりも CO2 排出量が 20%増
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6 月 23 日、カナダのオイルサンドから水圧破砕によって抽出される原油は、従来の米国の原油に比
べて二酸化炭素(CO2)排出量が 18~21%多いという調査結果が発表された。エネルギー省アルゴンヌ
国立研究所のハオ・カイ氏が主導する研究グループは、カナダのアルバータ地域のオイルサンドプロジ
ェクト 27 件を調査し、抽出から加工、精製、輸送、最終消費に至る総合的な CO2 排出量を計算した。
オイルサンドからの原油の生産量は今後 15 年間で倍増することが予想されており、現在、カナダのア
ルバータからテキサスの製油所まで原油を運ぶキーストーン XL(Keystone XL)パイプラインの建設
計画の是非が議論されている中で、今回の調査結果は大きな反対要因になると予想される。
世界の再生可能エネルギー発電容量、2014 年に 8.5%増加
7 月 1 日、国際非営利団体 REN21 は、太陽、風力、その他の再生可能エネルギーを利用した世界の
再生可能エネルギー発電容量は、2014 年に新たに 135GW 加わったことから、前年比で 8.5%増加し、
総発電容量が 1,712GW となった報告した。2014 年に新設された世界の発電容量の 59%が再生可能エ
ネルギーであった。2015 年末までに世界の発電容量の 27.7%を再生可能エネルギー電力が占め、世界
の電力需要の 22.8%を賄うことができると予想される。部門別では、2004 年から 2014 年の 10 年間で
太陽光発電が 2.6GW から 177GW へ成長したほか、風力発電が 48GW から 370GW に増加した。また、
世界経済がプラス成長したにもかかわらず CO2 排出量が横ばいに留まったのは実に 40 年振りであると
される。世界の再生可能エネルギー発電および再生可能燃料に対する投資額は、5 年連続で化石燃料に
対する投資額を超え、2014 年には 2,700 億ドルに達し、化石燃料に対する投資額の 2 倍以上となった。
国別では、中国、米国、日本、イギリス、ドイツで再生可能エネルギーに対する投資額が多く、1 人当
たりの国内総生産と比較した場合は、ブルンジ、ケニヤ、ホンデュラス、ヨルダン、ウルグアイで投資
額が大きかった。
原子力産業大手のアレバ社、原子力発電所の廃炉ラッシュに向けて核廃棄物管理の提携事業
6 月 2 日、世界最大の原子力企業アレバ(AREVA)社は、核廃棄物を管理するクリオン(Kurion)
社と提携し、廃炉と廃棄物浄化において協力していくことを発表した。両社はまず、原子爆弾の製造地
で現在も米国最大級の核廃棄物問題を抱えるワシントン州のハンフォード・サイト(Hanford Site)で、
核廃棄物の浄化と閉鎖作業を行う合弁会社を設立する。原子力全般にわたる知識と経験を持つアレバ社
が、核廃棄物のアクセス・分離・安定化に関するクリオン社の特許技術を得ることで、革新的で経済的
な核廃棄物管理ソリューションを提供できると期待される。米国では近年、運転寿命が迫った原子力発
電所の廃炉が相次いでおり、今後、市場はますます拡大していくと予想されている。
蓄電システムの AMS 社、テスラ電池を調達して電力会社に蓄電システムを提供
6 月 5 日、蓄電システム新興企業のアドバンスト・マイクログリッド・ソリューションズ
(Advanced Microgrid Solutions:AMS)社は、電力会社の法人顧客が太陽パネル等で発電した余剰電
力を蓄えて送電網のバックアップに利用する蓄電プロジェクトの一環として、テスラ(Tesla)社のパ
ワーパック(Powerpack)電池を最高 500MWh まで調達する計画を発表した。また AMS 社は、6 月
22 日に、シェル社の天然ガス製品を北米に販売する子会社シェル・エナジー(Shell Energy)社と、
その法人顧客に最大 20MW までの蓄電システムを設置する契約を結んだ。同社は昨年 11 月には、電力
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会社のサザン・カリフォルニア・エジソン(Southern California Edison)社との間でも、大規模な
50MW 蓄電システムを提供する契約を結んでいる。AMS 社は、企業や政府ビルの太陽発電システム等
からの余剰電力を電力会社の送電網に取り込んで蓄電するシステムを提供している。
グーグル社、閉鎖予定の石炭火力発電所にクリーン電力 100%利用のデータセンターを建設
6 月 24 日、グーグル(Google)社は、7 月に閉鎖予定のアラバマ州ジャクソン郡のウィンドウズ・
クリーク(Widows Creek)石炭火力発電所の敷地に、米国では 8 年振り、同社にとっては 14 件目とな
るデータセンターを 6 億ドルを投じて建設する計画を発表した。テネシー川流域開発公社(Tennessee
Valley Authority)によって 1950 年代に開業された 350 エーカーの同発電所は、環境保護庁(EPA)
の新しい環境基準に従って 7 月に閉鎖される見込み。グーグル社の新データセンターは、石炭火力発電
ではなく 100%クリーンエネルギーを使用した電力を利用する予定であるが、エネルギー源の詳細は明
らかにされていない。グーグル社は、これまで太陽光発電や風力発電の開発に 20 億ドル近く投資して
いる。また、アラバマ州はデータセンターの誘致のための減税奨励制度を今年前半に成立させている。
ユナイテッド航空、米国で初めて定期便にバイオジェット燃料を利用
6 月 30 日、ユナイテッド航空はこの夏、ロサンジェルス国際空港からサンフランシスコへ向かう国
内便に農業廃棄物や動物油脂から生成したバイオジェット燃料を利用すると発表した。米国の航空会社
が代替ジェット燃料を利用して定期旅客便を運行する初のケースとなる。同社は、2013 年にカリフォ
ルニアのアルトエア・フューエルズ(AltAir Fuels)社から、3 年間で 1,500 万ガロンのバイオ燃料を
購入する契約を結んでおり、最初の 500 万ガロンが今夏ロサンジェルス空港に納入される予定。最初の
2 週間は 1 日 4~5 便に対してバイオ燃料 30%と一般ジェット燃料 70%を混合し、その後は供給量全体
に混合していくという。また同日、ユナイテッド航空はバイオジェット燃料の最大の生産者であるファ
ルクラム・バイオエナジー(Fulcrum BioEnergy)社へ 3 千万ドルを投資する計画を発表した。これは、
国内航空会社が代替燃料に行う投資としては史上最大の規模である。ファルクラム社は、家庭ゴミを原
料として一般ジェット燃料に直接混合できるバイオジェット燃料を生成する技術を開発した。近年、航
空会社に対して CO2 排出量削減への圧力が高まっており、国連の国際民間航空機関(International
Civil Aviation Organization)では 2016 年 2 月に向けて協議が続けられている。また、オバマ政権は、
6 月 10 日に飛行機からの CO2 排出量を規制していく方針を表明している。
エネルギー省の LEEP 運動、駐車場のエネルギー消費量を 60%削減
6 月 29 日、エネルギー省は同省のベター・ビルディングス・アライアンス( Better Buildings
Alliance)の『駐車場照明エネルギー効率(Lighting Energy Efficiency in Parking:LEEP)』運動に
参加し昨年 1 年間で屋外照明の効率性を平均 60%改善した 18 団体を表彰した。受賞した団体は、高効
率のメタルハライド照明、蛍光灯、LED 照明など、従来よりも 3 倍長持ちする照明に切り替えたり、
駐車場を利用しない時は省エネ制御を行うなどして、合算で年間およそ 3,000 万 kWh の電力消費を削
減し、約 300 万ドルを節約したとされる。現在は 140 以上の団体が LEEP 運動に参加している。全米
には駐車場が 2,150 億平方フィートあり、屋外照明に費やす金額は年間で 160 億ドル以上に及ぶ。仮に
それらの駐車場全てが屋外照明の効率性を 60%改善するならば、年間 90 億ドルを節約できるという。
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ベター・ビルディングスでは、オバマ大統領の気候活動計画(Climate Action Plan)の一環として、
今後 10 年間で官民のビルや住宅のエネルギー効率を 20%向上させることを目指している。
米国のリチウムイオン電池市場は大きく成長
6 月 23 日、エネルギー省のクリーンエネルギー製造分析センター(Clean Energy Manufacturing
Analysis Center)は、米国の自動車リチウムイオン電池は、EV やハイブリッド車の需要増加と自動車
メーカーに近いという立地優位性から大きく成長すると予想されると報告した。『自動車リチウムイオ
ン電池供給網と米国競争力の考察(Automotive Lithium-ion Battery Supply Chain and U.S. Competitiveness
Considerations)』によると、世界の自動車向けリチウムイオン電池の市場規模は、現在の約 90 億ドル
から 2020 年には約 143 億ドルに成長するという。現在、米国は世界のリチウムイオン電池の市場の
17%を占めるにすぎないが、エネルギー省と民間企業が更に技術開発を進め、電池の寿命を延ばし、性
能を向上させるとともにコストを下げることで、世界のリチウムイオン電池の市場を主導できると予想
している。
装着型通信機器の市場、2015 年第 1 四半期に同期比 3 倍の成長
6 月 3 日、世界の装着型(ウェアラブル)の通信機器の出荷台数は 8 四半期連続で成長を続け、2015
年第 1 四半期(1-3 月)には前年同期比で 3 倍増の 1,140 万台を記録したことが報告された。一般的に
年末商戦後の第 1 四半期には消費が落ち込むことが多いが、消費者の関心の高まりや新興市場の需要増
大がそれを上回った。メーカー別では、フィットビット(Fitbit)社が腕時計型のフィットネス商品
390 万台を出荷して全体の 34.2%を占め、2014 年第 2 四半期から出荷が始まった中国のシャオミ
(Xiaomi)が大健闘して 24.6%、GPS 搭載フィットネス商品のガーミン(Garmin)が 6.1%、韓国の
サムソンが 5.3%、ジョーボーン(Jawbone)が 4.4%と、上位 5 社のうち 3 社が米国企業となった。
また、日本のソニーは 6 位となった。製品価格は新製品に見られる劇的な値下がりが始まっており、現
在 100 ドル以下の製品が 40%以上を占めている。一方、4 月にアップル社から高価格帯のアップル・ウ
ォッチ(Apple Watch)が発売されたことによって、今後、市場は大きく変容していくと考えられる。
グーグル社、IT を活用して都市問題に取り組む新会社を設立
6 月 10 日、グーグル(Google)社は、輸送の効率化、生活費の削減、環境汚染の緩和、エネルギー
費用の抑制といった都市生活の問題に取り組むために、新会社『サイドウォーク・ラブズ(Sidewalk
Labs)』を設立することを発表した。新会社は、ニューヨークのブルームバーグ前市長時代に経済開発
担当補佐官を務めたダニエル・ドクトロフ氏が社長となり、同氏の行政経験や考察をもとに、グーグル
社の資金や技術的な専門知識を活用するという。IT を活用した都市効率の改善に関しては、既に IT 大
手の IBM やシスコ(Cisco)社が大規模に事業を展開している。IBM 社は、ストックホルムの交通管
理やリオデジャネイロの地滑りを予測する局地的な天気予報といったプロジェクトに取り組んでいる。
シリアル大手のゼネラル・ミルズ社、人工香味料/着色料を撤廃
6 月 22 日、シリアル大手のゼネラル・ミルズ(General Mills)社は、消費者の嗜好の変化にさらに
応えるために、同社のシリアル製品全品から人工香味料・着色料を完全撤廃する計画を発表した。派手
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な色に着色された製品が多い米国食品市場において、近年は自然志向が進んでおり、ゼネラル・ミルズ
社では既に 60%の製品で人工香味料・着色料の使用を廃止している。これを更に拡大し、2016 年末ま
でに 90%以上、2017 年末までには着色技術の難しいマシュマロ入り製品を含めて 100%のシリアル製
品から人工香味料・着色料を撤廃する計画である。赤、黄、緑、オレンジ、紫といった色は、今後は果
汁、野菜汁、ターメリックやアナトーなど香辛料抽出物を利用して着色されることになる。
同様の取り組みとして、ネスレ社は今年末までに同社のチョコレート菓子製品から人工香味料・着色
料を撤廃することを 2 月に発表しており、外食産業のタコベル(Taco Bell)、ピザハット(Pizza
Hut)、パネラ・ブレッド(Panera Bread)などでも同様の発表を行っている。
米国の電子機器リサイクル率、2013 年に 40%を達成
6 月 17 日、環境保護庁(EPA)は米国の携帯電話やコンピューターなど消費者電子機器のリサイク
ル率が、2012 年の 30.6%から 2013 年には 40.4%に改善されたと報告した。EPA は、2013 年から『持
続可能原料管理(Sustainable Materials Management)』プログラムの下で電子機器チャレンジ
(Electronics Challenge)を開始しており、チャレンジに参加するメーカーや小売業者は、3 年以内に
第 3 者の認定業者による使用済み電子機器リサイクル率を 100%とし、公式に報告することとされてい
る。ベストバイ(Best Buy)、ステープルズ(Staples)などの小売業者のほか、デル、パナソニック、
ソニー、LG、サムソン等の電子機器メーカーは、顧客の携帯電話やコンピューター、テレビ等を下取
りしたり、無料または手頃な引取り料での引取りを行っている。
GM 社、シボレーボルト EV の使用済リチウムイオン電池をデータセンターの蓄電に利用
6 月 16 日、GM 社は、電気自動車(EV)のシボレーボルト(Chevrolet Volt)の使用済リチウムイ
オン電池 5 基をミシガン州ミルフォードのデータセンターの蓄電に再利用していると発表した。2010
年末に発売された第 1 世代シボレーボルトの電池はそろそろ使用寿命を迎えるが、蓄電能力の 80%は維
持されているため固定利用としては十分である。同データセンターでは、74kW の太陽パネル 1 基と
2kW の風力タービン 2 基から、年間約 100Mwh(平均世帯 12 戸相当)の再生可能エネルギーによる電
力が発電、使用済電池に蓄電し、事務所のビルと隣接する駐車場の照明に利用されている。また、停電
時には 4 時間分のビルの電力需要を供給することが可能としている。GM 社にとっては、使用済電池の
2 次利用に際してエネルギーがどのように再分配されるか実地調査することができる上、既存の電池の
機能性を十分に引き出しつつ、蓄電設備の初期費用を削減できる。
なお、日産自動車では、電気自動車リーフの使用済リチウムイオン電池を新興企業グリーン・チャー
ジ・ネットワークス(Green Charge Networks)と協力して世界の商業蓄電市場に提供しているとされ
る。
スプリント社、麦藁の廃棄物 80%から作った紙を顧客への郵便物に利用
6 月 11 日、携帯電話大手のスプリント(Sprint)社は、麦藁の副産物から作った紙を米国で初めて
顧客への郵便物や社内文書向けに利用するパイロットプロジェクトを発表した。この『ステップ・フォ
ワード・ペーパー(Step Forward Paper)』は、プレーリー・ペーパー(Prairie Paper)社が 15 年間
かけて開発したもので、原料の 80%に麦藁の廃棄物を残りの 20%にパルプを利用している。スプリン
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ト社は数年にわたって紙の消費量の削減に取り組んでおり、郵便に代わって Email での連絡を顧客に推
奨するほか、郵便物を削減することで、印刷用紙の年間購入量を重量ベースで 2007 年から 83%も削減
している。同社では、顧客へ請求書を送付する際に従来は支払い用返信封筒を同封していたが、2012
年から小切手をそのまま同封して返信できる画期的な再利用可能封筒を利用しており、これによって年
間 50 万ドル以上のコストを節約したという。
EPA、シェール層の水圧破砕による飲料水への影響評価を発表
6 月 4 日、環境保護庁(EPA)はシェール層への水圧破砕活動は、現在のところ飲料水へ広範で組織
的な影響は与えていないものの、水の循環を通して飲料水へ影響を与える脆弱性を持つ可能性があるこ
とを報告した。この調査は、連邦議会の要請によって、取水、薬品混合、坑井への破砕水注入、廃水の
回収、廃水処理と処分の各段階をとおして実施されたもの。調査の結果、水圧破砕する坑井の健全性と
廃水管理が飲料水となる水資源に影響を与えた特定の事例が散見されたが、全体として数は少ないとい
う。潜在的な脆弱性としては、水の少ない地域での取水、飲料水の水源を含む地層へ直接行われる水圧
破砕、不適切にセメント等で処理された坑井によりガスや液体が地下で移動、不適切に処理された廃水
が飲料水の水源に排出されること等があげられた。産業団体側は、水圧破砕の安全性が確認されたと解
釈して調査結果を歓迎しているが、学究機関や環境団体は、報告書は依然として肝心な部分に踏み込ん
でいないと不満を表明している。なお、ワイオミングやテキサス、ペンシルバニアの各州で水圧破砕に
よる汚染の懸念があるため進められていた調査は、産業界からの介入により中断されているという。
EPA、幅広く利用されるプロポクスル殺虫剤の室内利用を廃止
7 月 1 日、環境保護庁(EPA)は、人体、特に子供の健康を守るために、住宅や工業・商業向けに幅
広く利用されている殺虫剤プロポクスル(propoxur)の利用を一部廃止する提案を発表した。EPA は、
1995 年からプロポクスルを含むカルバメイト(carbamate)系殺虫剤の利用を自主的に削減すること
で業界と合意しており、米国におけるカルバメイト系殺虫剤の利用は 2013 年までに 70%減少した。
2007 年には、住宅や託児施設、学校内でのプロポクスルスプレーの利用を廃止し、2014 年にはペット
の首輪への利用を廃止した。今回、病院や商業施設における室内スプレーや液剤の利用を廃止すること
によって、食品に触れる可能性のある施設内での利用は完全に廃止される。プロポクスルは、残効性の
ある神経毒であり、日本ではアリの巣コロリやゴキブリの待ち伏せスプレーなどに使われている。
カリフォルニア州、5 月の水使用量が 29%減
7 月 1 日、カリフォルニア州の 5 月の水消費量は、2 年前の 5 月に比べて 29%も減少したことが同州
水資源管理委員会から報告され、州民による節水協力の状況が明らかになった。カリフォルニア州では
4 年に渡る日照りによる水不足が深刻を極めており、2013 年に旱魃緊急事態令が発せられ、本年 4 月
にはブラウン州知事が都市部の水使用量を 25%削減することを義務付ける強制力を持った知事令を初め
て発効した。本年 4 月の水使用量は、2 年前の同月に比べて 13.5%減であった。
カリフォルニア州南部では、40 平方マイルに渡って燃え広がった山火事が発生。消化活動を行う飛
行機やヘリコプターは給水のために遙か遠くまで往復しなければならなかったが、1 週間後の 6 月 26
日に終に消火された。日照りによって火事の発生しやすい気象状況となっており、本年同州で起こった
火事は 2,500 件に及ぶ。
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