社 会 系 教 科 教 育 学 会 『社 会 系 教 科 教 育 学 研 究 』 第24 号 2012 (p.111-112) 【シ ンポ ジ ウム 報 告 】 社 会科授業実践開発の基盤の再点検、再構築 、社会科教育滅ぶにならないためにー 一社会科教育学栄えて (2012 年 2 月18 日 開 催) 1 は じめに 。本年度 社会科教 育学研究が 隆日 盛 を 極会 め科 てい る学会 , 本社 教育 ,社 の全国社会科教育学会 , 会 系教科教 育学会の 発 表 者 や 参 加 者 の 数 を 見 る と 。 しか し,大学や大学院におけ その ことに頷 ける ,教育現場の社会科授 業実 る社会科教 育学研究が , 践に大 きな影響を与 え て い る だ ろ う か O あえ てっ , 社 会 科 教 育 滅 ぶ 。 」 にな 匚 社会科教育 学 栄 え て ,問い返す 必要が ある。 ていないか,匚 社会科教育学が栄えて,社会科教 本稿では 」ために ,匚 科学の研究成果 を組み 育が滅ばない 」匚 授 業構成理論の歴史的位 込んだ授 業 実 践 開 発 一歴史研究に学ぶー 」汀探究』 を中核と し 置づけ 」 「教育現場と結ぶ」の 4つの視 た授業 構社 成会 理 論 , 科 授 業実践開発の基盤の再点検 ,再 点か ら 構築に ついて ,ゼ ミを修 了した院 生の研究成果と ともに示す 。 ,生徒指導をは じめ とする これ らの研究成果は 。このような研 日々の激務の上に成 り立っている,社会科授 業実 究実践と結ばれ ない社会科教 育学 践開発は考 えられない。 米 田 豊 (兵庫教育大学) ・ 匚 文化の 下剋 上一 室町時代の 生活 と文化 を民俗 学の 視角か らー」 「匚 社会科教 育論叢第 」42 集 米田豊 1995) ・ 厂 部落史研究の成果 を組み込んだ社会科内容論」 」第44 号 米田豊 1996) ( 「社 会 科研 究 ・ 「ト  ̄ レ ー ド ・オ フの概 念を組み込んだ中学校社会科 一 小単元 『派遣労働問題』 を事 公 民的分野の授 業開発 例 としてー 」 「匚 社会系教 科教 育学研究 」第23 号 大津 圭介 2011) ・ 『象 匚 徴事例』 を組み 込んだ中学校社会科歴史授 業 の開発 」 (兵教大教職大学院研究成果報告書 山内敏 男 2011) ・ 「歴 史事 象の因果関係 を 『説 明』する中学校社会科 歴史授 業の 開発 ( 」 「社会 系教科教 育学研究」第24 号 船田次郎 2012) ,山内,船田の研究は兵庫教育大学教育実 大津 ーダーコー 践高度化専攻 (教 職 大 学 院 ) 授 業 実 践 リ 示したものである o匚 理論構築→ スの研究→ 成理 果論 を修正→授業実践」の過程 (8週間 授業実践 ,授業記録とともにまとめたものであ の実 。習 大) 津を ,山内は,兵庫教育大学大学院認識形成 る コース (社会系分野)の難波安彦 (経済学) , 教育 一 (歴史学)に学び,授業内容を構成した。 河村昭 ,経済学の研究成果 (概念)である 大 津 論 文 は 匚 トレー ド・オフ」を組み込み,匚 探究 I・探究H (米田豊)で授業モデルを開発 」 ・ の授業構成理論 。山内論文は, 実践したものをまとめたものである ,授業開発 ・実 歴史学の研究成果の妥当性に学び。船田論文は, 践したものをまとめたものであ ,る 子どもに時代像を 社会学のモデル理論をもとに 記述させようとした研究である。 - 2 科学の研究成果 を組み 込んだ授 業実践開発 匚 社会科は社会諸科学の研究成 果 をの 組 み 込 んで 。 」 こ こ と を 社 社会認識形成を図る教科である ,再確認す 会科授 業実践開発の基盤と して再点検 る必要があ, る 。 科学の研究成果を,社会科の 内容 を ここでは 構成する社 会認 諸知 科心 学理 と学 授 業す 構 成 理論に影響を与え , と る 。 ,認知心理学 る分析哲学 ,歴史学 ,経済学, )分析哲学,知識習得 ・知識活用の理論を導 剛 民俗学 ,筆者の ものも含め ,次のよ (2 析哲 か ら 社会諸科学の うち き分 出 し た学 研究 ,認知心理学の研究成果を授業構成 うな論文が ある 。 113− 理論に組み込んだ研究に,次のものがある。 ・ 匚 知識創 造の 法則性 を組み 込んだ社会科授 業設計」 」第20 号 藤本将英 2008 ) 「 匚 社 会 系 育 学 研 究 ・ 匚 学 習教 経科 験教 の 連 続 性 を保 つ仮説の 設定に よる社会科 授 業設計 ( 」 「社 会系教科教 育学研究」第21 号 浅野光 俊 2009) ・ 山 内前掲 報告書 ,認知心理 山内論文は (1) で示したことに加え 学の研究成果である匚 象徴事例」を歴史学習に組 み込もうとしたものである。 3 授業構成理論の歴史的位置づけ一歴史研究に 学ぶ一 ,外国 社会科教育の分野で。 の学位取得の多 は研究で たく めの 研究と, 歴史 究 あ る そ研 の 研で 究 成 果は,匚 今日の教育現場の社 はなく 」として示されるべきである。 会科授業への提言 ,社会科教育滅 こ」 のこ が厂 社会 科教 にと なら ない ため に育 ,学 最栄 もえ 大て 切なことである。 ぶ ,社会科授業実践開発の分野では,歴史 とりわけ 。次の論文は,戦前 研究に学ぶ姿勢」 がを 大対 切で あ る 象にして,授業構成理論の の小学校厂 地理 ,清水甚吾の授業構成理 視点から研究したもので 論を今日の社 識 教 育 源 流 と し て 位置人 付け 。会 清認 水 の 授 業の 構 成 理 論 は , [地 相た 聞 ものである ・原因結果の の模 弍 的 學 習匸 な ぜ 疑 問 ] の 探 究 ・ 匚 比較」による探究)→地人相聞の理論の 探究=地理的理法の習得=地理的識見の習得→地 習得 。この ことから, 理的理法の適用 卜となっ て い る ,今日の概念探究型社会科 清水の授業構成理論は 。 の 源 流 と 歴 史 的 に 位 置 付 け る こ と が で き る ・ 匚 戦前の社会認識教科 目の授 業構成理論の展刺 C社会科研究 」第63 号米田豊2005) 」を中核 とした授 業構成理論 4 厂 探究 ,総合的な学習の時間が匚 探究 」 文部科学省は ,匚 習得 ・活用は教科で, の中核であると明記 し 。 」と整理 した。 探究は総合的な学習の時間で 行う 。 社会科の授業づく 本当に これ でよい」 のだ ろ か社会科授 で あう る 。 業実践開発 りの 中核は匚 探, 究再構築を匚 探究」を視点に行 う の基盤の再点検 ことが大切 である。 5 教育研究現場と結ぶ 剛 教職大学院と教育研究現場 ーダーコースおいて,筆者が 本し 学て のい 授業 実 践 リ る社会科教育学を専攻する院生の教育 指導 実践課題解決研究と実習における学びのプロセス は,次のようになる。 ・開発→②授 業分析 ① 研 究 課題 し 習 ー ム ワ ーに ク即 の 作た 成理 →論 ③の 授 業得 分析→④授 業モデルの フレ 開発→⑤実習 I (教 育実践 研究開発 プロジ ェク ト実習) →⑥ 実 習 の 成 果 と 課 題 の 抽 出 → ⑦ 新 た な 授 業 モ デル →⑧実 習H (教 育実践研究開発 プロジェク ト 実の 習 開発 または教 育実践研究開発 実習)→⑨ 実習の 成果 と課題 の 抽出→⑩ 研究成果報告書の作成 ,実習校を教育実践課 実習期間中の適切な日 に ,院生とともに指導案の事 題解決, 研究 の 場 と し て 授業観察,事後検討を行う。また,実習 前検討 ,2 年目の2 月には最終成果 Iの後には中。 間さ 発ら 表会 に,社会系教科教育学会での 報告会かおる 。教職大学院では,匚 学校 発表を義務付けている 」が大 教育現場で。 の具 体 的 な 教 育 実 践 課 題 の 解 決 そして,匚 教育専門職としての力量」 前提である 。そのために, の高い教員の育成を目 指 し て い る ,大学院での理論研究を実習 在院中に実習を課し 。社会科教育学 で検証することを大切にしてい, る教職大学院にお が教育研究現場と結ぶためには ける取組が重要となる。 ・ 匚 社会科教員の授 業 カー 教 育現場の 現状と教職大学 院の 実践か ら」 (「社会科教 育研究JNO ユ10 米田豊 2010 」 (2)社会科教育研究会と結ぶ 社会 科教 , 各地 の育 社学 会と 科教育研究現 会場 とと 共の 同を 研結 究ぶ がた 大め 切に で は 。社会科教育の研究者は,研究大会当日だけ ある ,指導案の作成や事前の模擬授業への参 ではなく 画を一層強化したい。 6 おわ りに 社 , 会社 科会 授業 科教 構 育 成学 理, 論社 の会 構科 築 と 教 育 授 業 がと 実も 践に栄 よえ るる 検 証が 。特に ,中学校 における社会科教育の研 道である 究,実践が,校内研究体制の構 築とともに重要な 課題である。 114−
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