世界の先進国で浮上する 「理科離れ」現象 財団法人 科学技術教育協会発行 教育と科学 No16.2002.11 p.15 より 子ども達の「理科離れ」は、日本に限ったことではなく、先進国全般に見られる現象だ。 アメリカでは、すでに 1983 年の政府報告書で「理科離れ」が国を危うくするとの警鐘が鳴 らされており、ドイツやデンマークでも理系学部を専攻する学生の著しい減少が問題視さ れている。各国の、危機感を強く持つ大学や研究機関では、歯止めをかけようと躍起にな っている。 アメリカでは、各地の大学や国立研究所が、高校生を対象にした夏季キャンプや、研究 室を開放する「オープンデー」を実施して、科学への興味を一層膨らませてもらおうと学 生の心を捉える試みが積極的に行なわれている。 また、ドイツでは、国主導ではないが、一部の大学で高校生向けの特別授業が行なわれ ており、中でも注目を集めているのが、国立研究所アルフレッド・ヘーゲナー国立極地・海 洋研究所が 22 人の高校生を対象に行なっている特別授業だ。週 2 日、研究室と階段教室を 使い、生物、化学、物理、数学、英語の授業を研究者と高校の教師が展開しているという。 時間割にしばられることなく、1 日中連続して理論授業と実験授業を関連づけながら行い、 研究員の仕事を手伝わせる中で科学実験の原理・原則や実験器具の扱い方などが学べるよ うになっているそうだ。国立研究所を統括するヘルツモルツ協会では、同様の授業を他の 研究所にも広げることを考えているという。 物質的に満たされてしまった先進国では、かつてのように科学技術に対する憧れや尊敬、 未来をよりよくしたいという志を持つことが難しくなってきているのは確かだ。しかしな がら、「理科離れ」が今後各国で進行していくとしたら、深刻な事態にもなりかねない。物 質的な豊かさと経済的な発展に貢献した 20 世紀の科学技術は、地球温暖化などの負の財産 を残し、これを解決することが 21 世紀の科学技術の大きな使命だからだ。 わが国で緒についた「科学技術・理科大好きプラン」は国際的にみても、予算や協力体 制が整った画期的な試みである。このプロジェクトが結果報告で終わってしまうのでなく、 導き出された方策を継続して実施できるように目指してもらいたいと思う。
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